余命×××日

地野千塩

7

 しばらくは平穏だった。

 ドラちゃんのおかげでいじめられなくなったし、父の仕事も順調だった。学校の勉強もあまりできなかったが、近所にいるスズメを捕まえてドラちゃんに捧げた。すると、テスト中にドラちゃんが答えを全部教えてくれた。お陰で、成績優秀だと教師からもよく褒められるようになってしまった。

 また、これは特に代償はなかったが、ドラちゃんに連れられてデパート洋服を一式買ってもらい、美容院も行かされ、だいぶ垢抜けた。

 どうやらドラちゃんは、人型も取れるらしく若々しいイケメンのフリも上手だった。美容院もデパートのスタッフも誰もドラちゃんの存在を疑わないどころか、顔がイケメンだと大騒ぎしている始末だった。

 人がというのは、表面的なものしか興味がないのだろうか?

 家がそこそこ裕福になり、成績が上がり、ルックスも垢抜けたら、いじめられる事はなく、むしろクラスメイト達からチヤホヤされるように鳴ってしまった。

 その点についても、ドラちゃんは大笑いで同意していた。

「人は愚かだ。表面的なものしか見ないし、ほとんど脳みそなんて使ってねーよ!」

 当たっているので、反論できなかった。

「俺がボロボロの浮浪者もたいな格好をしていたら、俺の言う事など信じなかっただろう?」

 ドラちゃんは笑いながらも、真理をついてきた。確かに綺麗な天使の翼を持ち、芸能人みたいに顔が整っていたから言う事を聞いた事は、否定できなかった。

「クソ神がかいた聖書にも『悪魔は光に天使に偽装する』とか真理を書きやがってよ」
「何?聖書?」

 何でドラちゃんの口から、キリスト教の聖典が出てくるか疑問文だった。頭に引っかかる。

「うるさい!」

 しかし、なぜかドラちゃんは怒り狂い私の目の前から消えていった。

 そんな事が何回かあった。クリスマスの日、近所の同級生から教会のイベントを誘われた時や、イースターエッグの意味を学校の宿題で調べる時など。どうドラちゃんは、あの宗教が嫌いのようだった。

 しかし、所詮ドラちゃんが言うこと。人では無い何かに質問しても、会話が噛み合わない事は目に見えていた。

 いつの間にか、ドラちゃんとろくに会話らしいものはなくなり、死骸を捧げ、願いを叶えて貰うという取引が続いていた。

 そんなある日の事だった。

 私は、中学生になった。まだ慣れない入学したての教室で授業が始まるのを待っている時、担任教師が血相を変えてやってきた。

「桜井さん!桜井ししよさん!」
「え?私?なんですか?」
「大変です。お母様が亡くなりました」

 え?

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