余命×××日

地野千塩

4

 あの日から3日経った。

 私は薄汚ないネズミの死骸と共に裏校舎にむかった。たった3日だけなのに桜は、あの日よりかなり散ってしまっていた。花の命は短いらしい。桜の木はどっしりとした幹なのに、花はなんと儚い事だろう。このアンバランス感が不思議だ。桜の木の下には、死体があると言った人も、こんなアンバランス感を感じていたのかも知れない。

 空は馬鹿みたいに澄んでいて、自分がネズミも死体を片手に持っている事も、嘘のようの思えてきた。

 私はハム子の時のように、土を掘り、ネズミの死骸を入れる。手で土を掘ったため、爪のなかも汚れてしまう。土の匂いは生命力を感じ、少し元気が出てきたが、やっている事は死骸を土に埋めるという夢も希望もない事だった。

「おぉ、人間よ」

 埋め終わると、白い羽根を背負ったあの男が現れた。相変わらず胡散臭いぐらい現実感が無い男だった。

「なんだ、ネズミかよ」
「文句あるの?」
「生意気なクソガキだ」

 男は、汚物でも見るかのように私を見下ろしていた。自分の事は好きではない事が伝わってくる。むしろとても嫌っているだろう。なぜ嫌っているかはわからないが、自分はそもそも人に好かれないタイプなので、「何となくイライラする」とかそんな理由だろう。

「これで願い叶えてくれるの?父の事業をなんとかして」
「わかったよ」

 しかし男は、一枚の紙を取り出してきた。婚姻届と書いてある。

「は?どういう事?」
「契約書だよ。俺とお前は、ここで霊的に婚姻関係に入るわけよ」

 男はととても面白そうの笑っていた。まるでゲームに勝ったような顔である。

「でも人間の結婚とは違うぜ。とにかく俺を拝め。俺に頼れ」
「それが霊的結婚ってこと?人間みたいに同居しなくていいの?」
「俺は忙しいんだよ。こんな芋臭い人間の娘など、同居は嫌だね」
「何か意味があるの?」
「契約書として文書を残しておく必要がある。その点は人間の結婚と同じだわな」
「未成年だけど言い訳?」
「ごちゃごちゃうるさい女だな!つべこべ言わずのこれを書け!お前の父の命ぐらい奪うのは簡単だ」

 怖い。

 恐怖で身体が固まりそうだった。

「ただ、名前書くだけ?」

 震えた声で男に聞き。男は偉そうに頷いた私は震えながら、結婚届けに名前を書く。普通の結婚届けとは違った。

「私は死の霊と結婚してする琴事をここに契約する。他の神、他、創造主『ヤハウェ』は拝まない」とある。そこに名前を書くだけだったが、意味がわからない。

「書いたわよ、これでいいの?」

 私はこの奇妙な結婚届けを男に突きつけた。
な書いてある内容は意味がわからない。

「死の霊ってなのよ?」

 怖いと思いながらも、私はキッと睨みつけながら言う。

「俺の名だ」
「幽霊なの?」
「そんなわけないだろう」

 男はこの話題をされるのが嫌みたいである。顔を歪ませながら、結婚届けと共に消えた。再び、現実世界に戻ったように、桜の木が現れた。

 この時は?男の存在など嘘だと感じていた。
非現実的なイケメンだし、言っている事も意味がわからない。自分は夢でも見ているのかもしれない。そんな気がした。

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