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余命×××日

地野千塩

3

 翌朝、私は朝早く起きる。朝食の準備もしなけれなならないし、呑気に寝ている気分でも無い。

 ネズミが毒団子が食べて死んでいないか気になった。父がいびきをかいて寝ているのを確認すると、廊下に直行。

 すると、一匹だけ死んでいた。毒団子を食べたのか、そばにそのカケラが転がっている。

「おぉ」

 想像以上に上手くいったので、私はため息つく。ネズミの死骸をまじまじと観察すると、そっとそれを掴み自分の部屋に持っていく。

 机の上に置く。

 でもそのまま、置いておくのも気が引けて、スーパーのビニール袋に突っ込む。隣の父の部屋から呑気ないびきが聞こえていた。

 私がネズミの死骸を持ってきた事などは、バレていないようだった。心臓は未だにドキドキしていたが、とりあえず大丈夫そうだった。
あの裏校舎の桜の木の下に持っていくまで、このまま机の上に放置していたが、特にバレる事はなかった。

 ネズミとはいえ死骸がある状況は、何となく気持ち悪くはあったが、慣れれば大した事はない。ここで普通に勉強したり、本を読んだりしていた。

 私は本を読むのが好きだった。

 陰キャラだし、友達もいないし、図書館に行って本を借りて楽しむのが唯一の趣味と言っていい。今は、余命幾ばくもない女子高生と数学教師の儚いラブストリーのハマっていた。『余命999日の花嫁』というタイトルで、涙を流すヒロインの拍子イラストを見るだけで胸に込み上げるものがある。

「死んだらどうなるのかね?」

 私は机の上のスーパーの復路入りのネズミをみつめながら呟く。

 子供の私にとっては、死は得体の知れない怖いもの。祖父母の葬式も意外と悲しくはなく「死んだらどうなるの?」という疑問ばかりに捉えわれていた。

 大人にそんな質問をぶつけても、答えが返ってくるどころか、頭が変な子供扱いされた。
図書館にその答えがあると思い、宗教関係の本を漁ってみたが、書いてある事は難しい。子供の私には、理解できなかった。ただ、仏教では輪廻転生があるといい、キリスト教では死後さばきにあうという考えのようだった。さばきなんて怖い。どちらと言えば輪廻転生の方が楽だが、答えはわからない。

 ハムスターのハム子やこの薄汚ないネズミでもその答えは知っている。そう思うと、小動物にも嫉妬心を覚えるぐらいだった。

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