魔女が最高層の世界で最下層の男と愛し合ったら 〜最下層のディアレスト〜

星名 泉花

隠された歴史と魔女の支配【1】

リベルトを大切にしたい。

その想いはリベルトのために何が出来るかを考えることに繋がり、原動力となっていた。

二段に分かれる巨大な本の壁。

どこを見渡しても本で敷き詰められた古い紙の匂いがする居城内の図書館。

貴族であれば誰でも利用が可能だが、朝一番ということもあり人はいなかった。

リベルトとアリシアを連れて来たが、圧倒される本の空間と独特なにおいにリベルトがあたりを見回して興奮していた。


「……すごい」

「こんなにたくさんの本を見るのははじめて?」


リベルトは頬を染めて頷いた。

目を輝かせて見渡している。


「エレナ様、私は入り口のところに控えておりますので何かございましたらお呼びください」

「わかったわ」


アリシアがお辞儀をして去っていく。

リベルトがいる限り、アリシアの距離を置く姿勢は変わらない。

あまりアリシアと話す機会がなくなってしまった。

それでも今はまだ不安定なリベルトを優先したい気持ちもあり、エレオノーラはリベルトに微笑みかけた。


「リベルト、好きなのを読んでいいからね。 どういうのが好き?」

その言葉にリベルトはしゅんと落ち込んでしまう。


「文字、読めない。男は本を読んじゃだめだから」


子犬のような表情にきゅんとしたのは表に出さず、雑念を振り払って考え込む。


(知識を与えないようにしているのかしら? リベルトは一体どういう環境で育ったのかな)

マイナスな考えが過るが、それはリベルトに必要のないもの。

私が出来ることは今のリベルトに誠実に向き合うことしかないのだから。

今まで与えられなかったなら、これからリベルトの興味のあることを見つけていきたい。

どんなものが好きなのか、もっと知りたい。

リベルトのことを思うだけで力が溢れ、エレオノーラはリベルトを想うやさしい心が笑顔に繋がっていることを知った。


――リベルトを想う自分は嫌いじゃない。

少しだけ、誇らしい。


「リベルト、一緒に本を読みましょう?」

「え?」

「子どものときに読んでた本は……あった!この辺りね」


何冊か本を手に取る。

全て絵本であった。

一冊一冊見せるように机の上に広げていく。


「どれがいい? 色々あるわよー」


『かっこいい女王さま』

『オオカミ退治の魔女』

『山の王女と海のお姫さま』

『黒猫と迷子の女の子』

『空飛ぶ郵便屋さん』


どの本も女の子が主人公で、髪の色は暗かった。

エレオノーラのような白髪のキャラクターはいない。

エレオノーラにとってはこの絵本で育ったようなものだから懐かしい気持ちでいっぱいであったが、リベルトにその気持ちはない。

楽しむエレオノーラに対し、リベルトは複雑そうに困惑していた。


「それから……」

「読まない」

「あら? 気に入らなかった?」


リベルトは戸惑いがちに小さく頷く。

そこではじめてリベルトが辛そうな表情をしているのに気づく。

本をすべて机に置くと、リベルトを見上げて首を傾げた。


「みんな黒い。オレ、黒は嫌いなんだ。エレオノーラがいい」


真っ直ぐにエレオノーラを見つめてくるリベルトに頬が熱くなる。


「もう、リベルトってばぁ。恥ずかしいわ」


見つめられると鼓動が大きくなって、全身がざわざわしてしまう。

リベルトにとっては何気ない一言でも、エレオノーラには求められる喜びになっていた。

純粋な気持ちにまぶしさを感じ、喉をならして本棚の前にしゃがみこむ。

絵本の並ぶ箇所を一冊一冊ずらして中を確認していく。

白い女の子の話なんてものはない。


(それこそ、子どもの頃に私が描いたものくらいしか……)

「見られるのが怖くて隠しちゃったんだったわね」


小さいころ、エレオノーラは絵を描くこと、歌うことが好きだった。

しかし誰に褒められることもなく、姉たちの影に埋もれてやめてしまった。

好きなものを好きと言えたエレオノーラの純粋さが詰まった手作りの絵本があった。



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