閉じる

他に寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。

にのまえ

プロローグ②

 明け方、見えてきた国と国との境。わたくしは乗ってきた馬を降りて、警備騎士に通行料を払い国境を越えた。しばらく馬を走らせて、ここまで来れば大丈夫だと止めた。馬から降りて、後ろを振り向き、国境先にある故郷リルガルド国を見つめた。

「お父様、お母様、お兄様、弟君ごめんなさい。わたくしはリルガルド国を出ました、二度と帰りません」

 この結婚はすべて……わたくし一人のわがままから始まったのだもの。



 いまから三年前。彼と結婚をするまで名門といわれる騎士家系で育ち。幼頃から剣を握り、リスガルド国の為にと。五歳上の兄と同じ騎士団に入り、一生を剣に捧げると決めていた。

 令息、令嬢達が通う学園ではなく。王都の騎士学園に入学、卒業後に王族直営の騎士団養成所に入団の準備を始めていた。そんな矢先、一週間後に開催される舞踏会に出てくれと、お父様に頼まれた。

 開催される舞踏会は国王陛下の愛娘、王女の大切なデビュタントの日だそうだ。陛下は貴族の者全てに娘のデビュタントを祝ってほしいと、願われた。その願いを叶える為、陛下の近衛騎士として勤める、お父様はわたくしに頭を下げた。

『嫌よ、お父様。舞踏会に出るなんて』
『――リイーヤ頼む、私の顔を立ててくれ』

 いくら騎士家系の生まれだからといって、女だてらに剣を握る跳ねっ返り令嬢として。貴族の間にわたくしの名だけが一人歩きをしているのを、お父様は知っている。

 しかし、お父様は「頼む」と、なんどもわたくしに頭を下げた。

 国王陛下の近衛騎士を務める、お父様の仕事の関係もある。そのことを考えると、これ以上はわがままを言えず参加をすることにした。舞踏会なんて十五歳のデビュタント以来だ。

「他に寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く