夏はキラキラ☆大嫌い

おくとりょう

晴れちゃったね【浜辺の漂流物×宿題】

「もー!そんなふうにため息つかなくてもいいじゃーん」
 そう言って彼の隣に腰を降ろすと、彼はのっそりと顔をあげた。

 突き抜けるように鮮やかな青空。綿菓子みたいな白い雲。
 今日はサークルの合宿で、海水浴に訪れていた。メンバーのひとりが「プライベートビーチつきの親戚の別荘を借りれた」おかげで、周りの迷惑を気にせず、大学生らしい夏の海を満喫している。

 隣の彼以外は。

「大学生って言っても、僕らは医大生だよ。人の生死に携わる仕事なんだから、遊ぶ暇があれば、勉強を進めるべきでは?」
 そーなんだけどさぁ。
「レポート済ませた?」
 うぅ、いや、まだです……。
 彼の冷たい視線にたじろぐ。
「今回は合宿って聞いたから来たのに、遊んでばかり。ここは英会話サークルだと思っていたけれど、イベントサークルだったの?」
 ん~、まぁ、おっしゃる通りではあるのだけれど…。
 せない!
「でも、こんなに天気いいんだから、ちょっと外で気分転換するくらいいいじゃない?」
 私の言葉を聞いているのかどうか。彼は何も言わずに参考書に視線を戻すと、後ろに倒れた。

 彼とは高校からの友人だった。以前はもっと明るかった気がするんだけれど…。

 青い空を雲がゆっくり流れていく。

 あーあ。
「花火はきらいだって言うから、海にしたのにな」

 あっ!内緒なんだった!
 慌てて口を塞ぐも、もう遅かった。恐る恐る視線をあげると、彼と目が合う。いつも眠たげな彼の目蓋がバッチリ開かれていた。

「そっか」
 少しの沈黙のあと、視線を下げて何か申し訳なさそうに呟いた。

「え?」
 聞き返した私をそのままに、彼は突然立ち上がると、海の方へ向かう。そして、愉しく騒ぐみんなの輪に入る……ことはなく、波打ち際でしゃがみこんだ。
「どうしたの?」
 肩越しに覗き込むと、そこには口の開いたガラス瓶。砂に半分埋まったそこには、なぜか魚とカニが入り込んでしまっていた。


「ありがとう」
 そのとき、いつも無口な彼がクスッと笑ったような気がした。
「……うん」
 つられて私も笑顔を返した。彼の気持ちは分からないけど。

 海風が私と彼の髪を揺らす。
 あ。レポートの締切、明日だった。
 青ざめる私に、彼は呆れたようにため息をついた。空はさっきより明るく思えた。

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