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ブライトオレンジを抱えて

厭世 —Ennsei—

6

「俺の家族は母さんだけだから。母さんが最期の時まで俺はここに来続けるよ」
これは聞いてはいけない会話だったかもしれない。
私は急いで車椅子を漕いで自室に戻った。
徐々に雲がかってきて、黄昏色に染まってゆく空を眺めながらさっきの出来事を思い出していた。
彼はきっと母親が大好きなのだろう。
私と同じで。大切に思っていて、でもいなくなってしまうんだ思うと毎日でも会いたくて。
だから彼は毎日のように会いにきてたんだ。
目頭には熱いものを感じた。
私にはもう家族はいない。彼も私と同じになってしまうと考えるだけで胸が痛くなる。

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