魔法外科医は癒やし系少年
涼波ハルカの進撃-08 ☸ ナンチェリと辺境警備団
=== ✽ ✽ ✽ ===
ナンチェリとソメイはテーブルに戻り、再び頂き物のワインを飲み始めた。
<冒険者カードは身元証明とか要らないんですか?>
<うん。冒険者の身分証明書と言うよりは冒険者ランクと依頼をこなした履歴を証明するだけだから。ランクによって引き受けれる依頼の危険度が決まる。冒険者ギルドもなるべく死傷者は出したくないから、危険度の高い依頼はランクの低い冒険者には引き受けられないようにしているんだよ>
<ランクの低い冒険者が、ランクの高い冒険者のカードを奪ったりしないんですか?>
<ほとんどないよ。冒険者カード以外に冒険者ギルドと冒険者だけが知っている合言葉を決めるんだけど、冒険者カードを奪われた時に嘘の合言葉を教えるんだ。そして冒険者ギルドで合言葉を間違えて処刑される>
<怖いですね>
<そう、だから冒険者カードが狙われることはほぼ無いかな>
<合言葉はギルドマスターが覚えるのですか?>
<いや、 冒険者ギルドが保管している金属製の札の方に刻まれるんだ>
<ナンチェリ、あそこにたくさん冒険者カードがぶら下がっています>
<あれは依頼を受けて死んだ冒険者のカードだよ>
<そうですか……>
ソメイは先ほどまでのウキウキとした表情から一転、悲しそうな表情になった。
<ソメイも今のうちに合言葉を決めておかないと>
<はい。じゃあ、『ヨシノ』にします>
<後でマスターに聞かれるから、その時、答えてね。僕は立ち会えないから>
<わかりました>
「合言葉は『ヨシノ』」
「合言葉は『ヨシノ』」
ソメイはロビの発音を真似した。
「ソメイ、できましたよ。こちらにきてください」
「はい」
ソメイは少しギルドマスターと話をすると、うれしそうに冒険者カードを持ってきた。
「ははは、マスター、『アゼクス初敗北記念日、ソメイ最高!』か、面白い文字を掘ったな」
「よく下半分だけでわかりましたね。エリク冒険者ギルドにとっても記念日ですから」
「ありがとうございます」
レティーナと話をするため、ナンチェリは立ち上がった。
「依頼の方はどう?」
「全部、完了しています。依頼料は先に頂いていますので、後はここにサインしてください」
「ああ」
ナンチェリはペンを持つと、依頼板の下の方にサインをした。
「毎度ありがとうございます」
「また、同じだけ、依頼出したいんだが」
「かしこまりました。しかし最近、魔石獣がさらに増えていますので、依頼を倍以上出しても大丈夫です」
レティーナは最近の魔石獣の出現状況や、魔石獣の種類を説明し始めた。
「じゃあ、三倍で」
「では小金貨六枚になります」
ナンチェリは懐から布袋を取り出し、少し考えると大金貨一枚を渡した。
「面倒だから継続的に依頼を出しておいて。保管料もそこから引いて。あと、ソメイと連名で」
「あの、大金貨、初めて見ます。すごいです。咥えてみていいですか?」
「お好きなように。預かり証と会計報告は頼むよ」
「はい。それでは本日分の魔石を馬に乗せておきます」
「よろしく」
ナンチェリが振り返ると、ソメイは依頼が書かれた木の板を興味深そうに見ていた。
<ソメイ、うれしそうだね>
<はい、少し文字が読めるようになったので、ちょっとだけわかります。あと、イラストがかわいいです>
<そうだね。冒険者の中には文字が読めない人もいるから、目立つようにしているんだ>
<この依頼は、上に『ナンチェリ』って書いてあります。どうしてですか?>
<これは指名依頼。僕は魔石獣を無傷で生け捕りにできるから解体するタイミングが選べて、しかも肉が美味しいんだって。レイビグ商会からの依頼だよ>
<あの、もしかして聖蛇短剣の雷衝撃で気絶させているんですか?>
<そうだよ。でも、他にもいくつか手順があるんだ>
二人はテーブルに戻った。
<あの、ナンチェ……リ……>
「あら」
ナンチェリは受付に行き、レティーナに話しかけた。
「悪いけど、縄を売ってくれないか?ソメイが酔っぱらって寝ちまった。馬に縛り付けて帰る」
「わかりました。ナンチェリなら縄は無料でお付けします。今度、私も酔うのでどうか縄で縛ってください」
「あの、レティーナ、その、誤解されるような発言は控えめで……」
「あらナンチェリ、口調がいつもと違いますよ。おほほ」
「俺だってたまには弱気になることがあるんだよ」
「そうですか、じゃあ、弱気になった時はレティーナお姉さんに甘えてくださいね」
「考えておく」
「ナンチェリ、何ならソメイと一緒に泊まっていけばいいのに。ご予定でも?」
「これから第三辺境警備団へ行く。あそこにも魔石を頼んでいるからな」
「第三辺境警備団に限らす、辺境警備団の騎士はお強いと聞きます」
「あいつらは、魔石獣相手だが騎士団の中で最も実戦経験を積んでいるからな」
「誰か素敵な男性を紹介してくれないかしら」
「ここにもよく来るじゃないか。レティーナなら……いや、何でもない」
「なあに?」
レティーナは、普段の言葉遣いとは違った、いたずらっぽい言葉で話した。
「お前は、いい女だ」
「……そんな、ナンチェリったら口説かないで下さい」
「口説いてない、口説いてないよ」
「また口調がいつもと違います」
「じゃあ、行く」
=== ✽ ✽ ✽ ===
続いて、二人は第三辺境警備団に向かった。もっともソメイは馬の上に縛り付けられて荷物状態である。
ナンチェリは辺境警備団の正門にいた衛兵に声をかけた。
「ナンチェリだ。ロジャを呼んでくれ」
「なんだ、お前、偉そうだな。何用だ」
「新入りか。ロジャがあんたに振る舞っている酒代を持ってきたんだ。とっとと呼んでくれ」
衛兵は笛を吹いた。ナンチェリの周りにたちまち何人もの衛兵が現れた。
「おい、その人数じゃナンチェリに勝てないぞ。新入りが失礼したな。お前ら、元に戻れ」
「ロジャ、こいつ、若造のくせして偉そうです。ちょっとやらせてください」
「うーむ、まあ、それもいいか。ナンチェリ、頼むから辺境警備団の備品は壊さないでくれ。予算があまり無いんでな」
「ああ、いいよ」
若い衛兵は剣を抜いた。
「お前、剣を抜かないのか」
「あんたに見せる剣は持ってないからな」
「このクソガキが!」
(へえ、突きで入ってくるとはなかなかのセンス)
連打で突いてくる衛兵にナンチェリは一旦下がったが、すぐに腕の防具で受け流しながら距離を詰めた。そして衛兵の耳元でささやいた。
「あんた、剣を水平にしないとどんな防具だって切れないぞ」
「なにを、こいつ!」
ナンチェリは衛兵の首を下から掴み上げた。
「ロジャ、こいつ、殺していいか?」
「いや、悪いが勘弁してやってくれ。お前、詫びを入れろ」
「貴様、この体勢から俺を殺せるのか」
「ああ、殺せるとも」
ナンチェリは衛兵が腰に下げている短剣を抜き、顔に押し付けた。
「わ、わかった、詫びる、申し訳ない」
短剣を地面に捨てると、ナンチェリは衛兵の首から手を離した。そして衛兵の右手を掴んだ。
「今、下から切りかかろうとしたな。ロジャ、やっぱりこいつ、殺していいか?」
「そんな、なんで?」
「うちも人手が足りていないんだ。お仕置きぐらいで勘弁してやってくれ」
「わかった」
鈍い音がして衛兵はふらふらとその場に座り込んだ。
「最後は頭突きか、冒険者らしくて楽しいぜ」
「そりゃどうも」
「無礼は俺からも詫びる。申し訳なかった。皆、こいつは冒険者ギルドに出入りしている冒険者兼商人だ。よく覚えておいてくれ」
「ナンチェリだ。よろしく」
衛兵たちはすごすごと戻って行った。
「魔石、しっかり貯めておいたぜ」
「拝見させてもらうよ」
「それはそうと、ナンチェリ、今日は女連れか?」
「ああ、新しいパートナーだが……酒を飲んで寝ちまったよ」
「そうか、ナンチェリも隅に置けないな。馬と一緒にこっちにこいよ」
ロジャに案内されて着いた倉庫には、数袋に分けられた魔石が置かれていた。ナンチェリは、それぞれの袋の中を確認した。
「この量だと小金貨五枚ってところか」
「おう、いいな、取引成立だ。また、次も頼むぜ」
「おっと、新米の授業料は?」
「うーむ、小金貨一枚で頼む」
「取引成立だ」
ナンチェリは、ロジャに小金貨四枚を渡した。
「ところで、森でダンツに会った。傭兵団に入って密猟団の警護をしていた」
「ああ、あいつか。しばらく前に警護団を辞めちまってな」
「傭兵団のこと、何か知らないか?」
ロジャは少し困ったような顔をして腕を組んだ。
「ああ、名前はホルセレという名前の傭兵団で、兵士だけでなく魔道士もいるらしい。うちの警護団にも引き抜きに来て困っているんだ」
「ホルセレの拠点はどこに?」
「拠点は王立調査団が調べている最中だが、ここに入ってきている情報だと、ウリシア王国の南部にあるオクスジュ大商店街によく出入りしているらしい」
「意外と遠くだな。エリクからかなり離れている」
「ここ数年、大量に食料や洋服などを買い込んでいる連中がいて目を付けたらしい。察するに組織の規模も大きいだろう」
「なるほど」
「そこで王立調査団が尾行したところ誰も帰らず、伝書魔石鳥獣だけが帰ってきたのさ」
「何か書いてあったのか?」
「『私を探さないでください』だってさ。置き手紙みたいで笑えるだろ?」
(なんでホルセレ傭兵団は素性を隠しているんだろう。傭兵団であれば、有名になってより好待遇で仕事を受けるのが普通なはず)
「参考になった、感謝する」
「でもあまり関わらない方がいいと思うぜ」
「そうかもな」
ナンチェリは小金貨一枚をロジャに投げた。
「お、ありがとよ。なんか情報が入ったらまた話す。次もよろしく頼むよ」
それからナンチェリは大収穫だった魔石を四体の馬に分けて乗せ、ソメイを馬の上に縛り付けたまま馬を引きながら歩いた。もちろん、他者が見ていないところでは、荷物を背負った馬を引っ張る勢いで走ったことは言うまでもない。
(ダリアに怒られないよう、夕食の時間に間に合いますように)
ナンチェリとソメイはテーブルに戻り、再び頂き物のワインを飲み始めた。
<冒険者カードは身元証明とか要らないんですか?>
<うん。冒険者の身分証明書と言うよりは冒険者ランクと依頼をこなした履歴を証明するだけだから。ランクによって引き受けれる依頼の危険度が決まる。冒険者ギルドもなるべく死傷者は出したくないから、危険度の高い依頼はランクの低い冒険者には引き受けられないようにしているんだよ>
<ランクの低い冒険者が、ランクの高い冒険者のカードを奪ったりしないんですか?>
<ほとんどないよ。冒険者カード以外に冒険者ギルドと冒険者だけが知っている合言葉を決めるんだけど、冒険者カードを奪われた時に嘘の合言葉を教えるんだ。そして冒険者ギルドで合言葉を間違えて処刑される>
<怖いですね>
<そう、だから冒険者カードが狙われることはほぼ無いかな>
<合言葉はギルドマスターが覚えるのですか?>
<いや、 冒険者ギルドが保管している金属製の札の方に刻まれるんだ>
<ナンチェリ、あそこにたくさん冒険者カードがぶら下がっています>
<あれは依頼を受けて死んだ冒険者のカードだよ>
<そうですか……>
ソメイは先ほどまでのウキウキとした表情から一転、悲しそうな表情になった。
<ソメイも今のうちに合言葉を決めておかないと>
<はい。じゃあ、『ヨシノ』にします>
<後でマスターに聞かれるから、その時、答えてね。僕は立ち会えないから>
<わかりました>
「合言葉は『ヨシノ』」
「合言葉は『ヨシノ』」
ソメイはロビの発音を真似した。
「ソメイ、できましたよ。こちらにきてください」
「はい」
ソメイは少しギルドマスターと話をすると、うれしそうに冒険者カードを持ってきた。
「ははは、マスター、『アゼクス初敗北記念日、ソメイ最高!』か、面白い文字を掘ったな」
「よく下半分だけでわかりましたね。エリク冒険者ギルドにとっても記念日ですから」
「ありがとうございます」
レティーナと話をするため、ナンチェリは立ち上がった。
「依頼の方はどう?」
「全部、完了しています。依頼料は先に頂いていますので、後はここにサインしてください」
「ああ」
ナンチェリはペンを持つと、依頼板の下の方にサインをした。
「毎度ありがとうございます」
「また、同じだけ、依頼出したいんだが」
「かしこまりました。しかし最近、魔石獣がさらに増えていますので、依頼を倍以上出しても大丈夫です」
レティーナは最近の魔石獣の出現状況や、魔石獣の種類を説明し始めた。
「じゃあ、三倍で」
「では小金貨六枚になります」
ナンチェリは懐から布袋を取り出し、少し考えると大金貨一枚を渡した。
「面倒だから継続的に依頼を出しておいて。保管料もそこから引いて。あと、ソメイと連名で」
「あの、大金貨、初めて見ます。すごいです。咥えてみていいですか?」
「お好きなように。預かり証と会計報告は頼むよ」
「はい。それでは本日分の魔石を馬に乗せておきます」
「よろしく」
ナンチェリが振り返ると、ソメイは依頼が書かれた木の板を興味深そうに見ていた。
<ソメイ、うれしそうだね>
<はい、少し文字が読めるようになったので、ちょっとだけわかります。あと、イラストがかわいいです>
<そうだね。冒険者の中には文字が読めない人もいるから、目立つようにしているんだ>
<この依頼は、上に『ナンチェリ』って書いてあります。どうしてですか?>
<これは指名依頼。僕は魔石獣を無傷で生け捕りにできるから解体するタイミングが選べて、しかも肉が美味しいんだって。レイビグ商会からの依頼だよ>
<あの、もしかして聖蛇短剣の雷衝撃で気絶させているんですか?>
<そうだよ。でも、他にもいくつか手順があるんだ>
二人はテーブルに戻った。
<あの、ナンチェ……リ……>
「あら」
ナンチェリは受付に行き、レティーナに話しかけた。
「悪いけど、縄を売ってくれないか?ソメイが酔っぱらって寝ちまった。馬に縛り付けて帰る」
「わかりました。ナンチェリなら縄は無料でお付けします。今度、私も酔うのでどうか縄で縛ってください」
「あの、レティーナ、その、誤解されるような発言は控えめで……」
「あらナンチェリ、口調がいつもと違いますよ。おほほ」
「俺だってたまには弱気になることがあるんだよ」
「そうですか、じゃあ、弱気になった時はレティーナお姉さんに甘えてくださいね」
「考えておく」
「ナンチェリ、何ならソメイと一緒に泊まっていけばいいのに。ご予定でも?」
「これから第三辺境警備団へ行く。あそこにも魔石を頼んでいるからな」
「第三辺境警備団に限らす、辺境警備団の騎士はお強いと聞きます」
「あいつらは、魔石獣相手だが騎士団の中で最も実戦経験を積んでいるからな」
「誰か素敵な男性を紹介してくれないかしら」
「ここにもよく来るじゃないか。レティーナなら……いや、何でもない」
「なあに?」
レティーナは、普段の言葉遣いとは違った、いたずらっぽい言葉で話した。
「お前は、いい女だ」
「……そんな、ナンチェリったら口説かないで下さい」
「口説いてない、口説いてないよ」
「また口調がいつもと違います」
「じゃあ、行く」
=== ✽ ✽ ✽ ===
続いて、二人は第三辺境警備団に向かった。もっともソメイは馬の上に縛り付けられて荷物状態である。
ナンチェリは辺境警備団の正門にいた衛兵に声をかけた。
「ナンチェリだ。ロジャを呼んでくれ」
「なんだ、お前、偉そうだな。何用だ」
「新入りか。ロジャがあんたに振る舞っている酒代を持ってきたんだ。とっとと呼んでくれ」
衛兵は笛を吹いた。ナンチェリの周りにたちまち何人もの衛兵が現れた。
「おい、その人数じゃナンチェリに勝てないぞ。新入りが失礼したな。お前ら、元に戻れ」
「ロジャ、こいつ、若造のくせして偉そうです。ちょっとやらせてください」
「うーむ、まあ、それもいいか。ナンチェリ、頼むから辺境警備団の備品は壊さないでくれ。予算があまり無いんでな」
「ああ、いいよ」
若い衛兵は剣を抜いた。
「お前、剣を抜かないのか」
「あんたに見せる剣は持ってないからな」
「このクソガキが!」
(へえ、突きで入ってくるとはなかなかのセンス)
連打で突いてくる衛兵にナンチェリは一旦下がったが、すぐに腕の防具で受け流しながら距離を詰めた。そして衛兵の耳元でささやいた。
「あんた、剣を水平にしないとどんな防具だって切れないぞ」
「なにを、こいつ!」
ナンチェリは衛兵の首を下から掴み上げた。
「ロジャ、こいつ、殺していいか?」
「いや、悪いが勘弁してやってくれ。お前、詫びを入れろ」
「貴様、この体勢から俺を殺せるのか」
「ああ、殺せるとも」
ナンチェリは衛兵が腰に下げている短剣を抜き、顔に押し付けた。
「わ、わかった、詫びる、申し訳ない」
短剣を地面に捨てると、ナンチェリは衛兵の首から手を離した。そして衛兵の右手を掴んだ。
「今、下から切りかかろうとしたな。ロジャ、やっぱりこいつ、殺していいか?」
「そんな、なんで?」
「うちも人手が足りていないんだ。お仕置きぐらいで勘弁してやってくれ」
「わかった」
鈍い音がして衛兵はふらふらとその場に座り込んだ。
「最後は頭突きか、冒険者らしくて楽しいぜ」
「そりゃどうも」
「無礼は俺からも詫びる。申し訳なかった。皆、こいつは冒険者ギルドに出入りしている冒険者兼商人だ。よく覚えておいてくれ」
「ナンチェリだ。よろしく」
衛兵たちはすごすごと戻って行った。
「魔石、しっかり貯めておいたぜ」
「拝見させてもらうよ」
「それはそうと、ナンチェリ、今日は女連れか?」
「ああ、新しいパートナーだが……酒を飲んで寝ちまったよ」
「そうか、ナンチェリも隅に置けないな。馬と一緒にこっちにこいよ」
ロジャに案内されて着いた倉庫には、数袋に分けられた魔石が置かれていた。ナンチェリは、それぞれの袋の中を確認した。
「この量だと小金貨五枚ってところか」
「おう、いいな、取引成立だ。また、次も頼むぜ」
「おっと、新米の授業料は?」
「うーむ、小金貨一枚で頼む」
「取引成立だ」
ナンチェリは、ロジャに小金貨四枚を渡した。
「ところで、森でダンツに会った。傭兵団に入って密猟団の警護をしていた」
「ああ、あいつか。しばらく前に警護団を辞めちまってな」
「傭兵団のこと、何か知らないか?」
ロジャは少し困ったような顔をして腕を組んだ。
「ああ、名前はホルセレという名前の傭兵団で、兵士だけでなく魔道士もいるらしい。うちの警護団にも引き抜きに来て困っているんだ」
「ホルセレの拠点はどこに?」
「拠点は王立調査団が調べている最中だが、ここに入ってきている情報だと、ウリシア王国の南部にあるオクスジュ大商店街によく出入りしているらしい」
「意外と遠くだな。エリクからかなり離れている」
「ここ数年、大量に食料や洋服などを買い込んでいる連中がいて目を付けたらしい。察するに組織の規模も大きいだろう」
「なるほど」
「そこで王立調査団が尾行したところ誰も帰らず、伝書魔石鳥獣だけが帰ってきたのさ」
「何か書いてあったのか?」
「『私を探さないでください』だってさ。置き手紙みたいで笑えるだろ?」
(なんでホルセレ傭兵団は素性を隠しているんだろう。傭兵団であれば、有名になってより好待遇で仕事を受けるのが普通なはず)
「参考になった、感謝する」
「でもあまり関わらない方がいいと思うぜ」
「そうかもな」
ナンチェリは小金貨一枚をロジャに投げた。
「お、ありがとよ。なんか情報が入ったらまた話す。次もよろしく頼むよ」
それからナンチェリは大収穫だった魔石を四体の馬に分けて乗せ、ソメイを馬の上に縛り付けたまま馬を引きながら歩いた。もちろん、他者が見ていないところでは、荷物を背負った馬を引っ張る勢いで走ったことは言うまでもない。
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