魔法外科医は癒やし系少年
涼波ハルカの喪失-10 ☸ エイナと人参
=== ✽ ✽ ✽ ===
王立学院には大きな食堂があり、生徒や講師がテーブルに着くとランチプレートが配られるという仕組みになっている。パンも温められたものを籠に入れて歩く給仕係が配り、好きなだけ食べることができる。
(エイナはいつものテーブルかな。なんか、窓際で給仕が早い席に近づくほど上級貴族がたくさん座るという習慣、なんとかならないものかな。端っこだとランチプレートを持ってきてくれるのも遅いし、パンのお替りもなかなか持ってきてくれないし)
午前の魔学、治世の講義を終えたロビは、貴族エリアに座っているエイナのテーブルに近づいた。
「ねえ、エイナ、今朝の件、どう?」
「おい、学院で俺に話しかけるな」
エイナは取り巻きと何かを話し込んでいる。エイナとその取り巻きは、王立学院に平民が入学できることを好ましく思っていない。
(また、なんか、良からぬ相談をしているのかな)
時折、会話からロビの名前が聞えてくることから、昨夜から今朝にかけてのことを自分の武勇伝のごとく話しているのかもしれない。
「今日のランチは、うまくないな。もっとマシなシェフはいないのか」
エイナが不満げな声を上げた。エイナのテーブルから離れ、平民の生徒が座っているドアそばのテーブルに向かっていたロビは、それに反応して振り返った。
「エイナ、食事中に大きな声を出すのはマナー違反です」
「す、すいません」
エイナの言葉を遮ったのはロレンだ。ロレンはウリシア王国の第一王女である。ロレンには、学年で言えば二つ下だが十一歳の妹、ルラン、そして八歳の第一王子アロンがいる。ルランとアロンは初等部に入学しており、ロレンとよく一緒にいるマレナ=オイチェカと四人でランチを食べていた。
(マレナって何となく色っぽいよな。どうしてだろう?)
エイナはウリシア王国三大貴族の長男とは言え、王家には腰が低い。
「それにあなた、人参が嫌いなだけでは?」
「そんなことはありません」
「だって、人参が入っている料理が出ると、いつもそう言っているもの」
食堂にいづらくなったのか、エイナは黙って立ち上がった。
(あ、やばい。エイナより先回りしないと)
エイナはテーブルを離れ、そしてドアの近くのテーブル、カサリを含む平民の生徒達が食事をしているテーブルの足を蹴飛ばした。
しかし、テーブルは微動だにしなかった。ロビの足がエイナの足を押さえつけたからである。そしてエイナはそのまま前に倒れた。
「エイナ、八つ当たりは良くないよ」
「うるさいな」
「あのね、私たちは同じヒト族なのよ。オリシス家だって、八十年前は赤字経営の下級貴族で、うちに借金をしていたわ」
「メイア、言いすぎだよ」
「ふん、憶えておけ」
エイナは怒ったまま食堂を出ていった。
「ああ、また今日もやっちゃった」
「いいのよ、あんな奴、この程度の恥はかかされるべきだわ」
こうやって、ロビはいつもエイナの機嫌を損ねていた。
「お兄様、ボクから何か言っておきましょうか?オリシス家とは繋がりがあります」
「大丈夫だよ。でも、家の問題に発展しそうな時はお願いしようかな」
「任せてください。お兄様とは熱い夜を過ごした仲です。何でも言ってください」
「ちょっと、ロビ、『熱い夜』って何?ちゃんと説明してくれる?やっぱりあなた、カサリに何か変なことを……」
「メイア、『暑い夜』だよ。カサリと会ったのは夏休みの時だから。オトイク王国はだウリシア王国よりちょっと南だし……ね?」
ロビがちらっと視線を動かすと、カサリがうれしそうな顔をしてロビを見ていた。
=== ✽ ✽ ✽ ===
次の講義は剣技で、生徒は訓練着に着替え、闘技練習場で基本的な攻撃、受け方の練習をしていた。まずは基本として、いくつかの『形』を練習する。これには攻撃と防御を組み合わせた動作が組み込まれている。
今日の形は、盾と片手長剣を使ったものである。中等部の生徒にとってはやや重い片手長剣を片手で扱うため、突き刺す攻撃を主体とした形を習う。カサリは身体が小さいので、教授と一緒に練習をしている。
そして、ロビの相手はエイナの取り巻きである。
(なんか、嫌な予感しかしないな……あ、このフォーム、三の形よりも肘の引きが大きい)
「うぅ、痛たたっ」
ロビはうずくまった。相手は、形で決められた場所とは違う腹部を突いていた。練習用とはいえ、固い木でできた剣である。出血するようなことは無いが、打撲や内出血は免れない。
「悪いな、ちょっと別の形と間違えちゃったよ」
「うん、いいよ、誰でも間違えることはあるよね」
「ちょっと、今の、ワザとでしょ!」
「メイア、だ、大丈夫」
そう言いながら、ロビは盾と剣を地面に置いてしゃがみ、腹を押さえた。メイアはロビの背中に手をかけながら一緒にしゃがんだ。
「ロビ、本当に大丈夫?」
「うん、わざと当たったから、それほど痛くないよ。それなりには痛いけど」
「わざと?」
「うん、まあ、見てて」
ロビは小声でメイアに話すと、剣を掴んでよろよろと立ち上がりはじめた。そして、地面に置いてある盾の位置を足で調整した。
「う、やっぱりダメだ」
そして、勢いよく地面にしゃがみこんだ。
「んっ……」
ロビが持っていた剣は、偶然にもロビが地面に置いた盾の角に当たり、盾が支点となって剣先が跳ね上がった。ロビの相手をしていた少年は声を出すこともできず、股間を押さえてうずくまった。
メイアは、ロビの背中をさすりながら笑いをこらえていた。ロビは普段からこんなことばかりしている。
「メイア、笑っちゃダメだよ」
この講義で今日は終わりである。学院の制服に着替えたロビ達は昨日のように、メイアカサリの三人で正門に向かって話しながら歩いていた。
「お兄様、剣技でお怪我をされたとか」
カサリは心配そうにロビを見上げた。
「大丈夫、ただの打撲だよ。もう自分で治癒しちゃったから」
「ちょっと見せてください」
「あ、こら、カサリ」
カサリは、ロビの服を上着ごとめくりあげた。
「お兄様、このたくさんの傷跡は何ですか?どこを怪我されたのですか?」
ロビは、すぐにメイアに見えないよう身体の向きを変えた。しかしカサリはロビの服の中に入って腹部を舐め始めた。
「ちょ、ちょっとカサリ、くすぐったいってば。魔石獣じゃないんだから、傷は舐めないってば。ね、お別れの挨拶しよ、ね」
ロビはカサリを服から引っこ抜くと、衣類を正して少しかがみ、カサリにディープキスをした。
(しまったな、今朝の怪我、まだ形成手術できていない)
形成手術とは、魔法外科医療のひとつで、傷跡などを目立たなくする手術である。
「ねえ、ロビ」
「な、何?メイア」
(メイア、声が低い。絶対、怒っているよな、カサリが舐めたからかな)
ロビは恐る恐る振り向いた。ロビの予想とは違い、メイアの表情は不安の色に染まっていた。
「たくさんの傷跡って、何?」
(あれ?思っていたのと違う反応、メイア、声が震えている)
「あ、いや、何でもないよ、カサリの見間違いだよ」
「いえ、お兄様、ボクは直接舐めましたから間違いありません。塩味でした」
「それは汗の味だよ」
「ちょっとこっちへ来て」
ロビはメイアに引っ張られ、生徒たちがいなくなった建物の裏に連れていかれた。カサリも一緒に付いてきた。
「見せなさいよ、傷跡」
「それはちょっと」
「やっぱりあるのね」
「うん」
ロビは渋々と制服の上着とシャツの前ボタンを外し、胸と腹部を見せた。メイアはロビに断りも入れず、両手で傷跡に触れた。
「なんてひどい傷、以前は無かったわ。エイナにやられたの?」
「ち、違うよって、いつ、僕の裸を見たの?」
「いいのよ、そんなこと」
「よくないよ、僕の裸、どこで見たの?」
メイアはロビに抱き着いた。
「ロビ、いいわ、これ以上は聞かない。でも、もっと自分のことを大事にして。お願い」
(うわ、思いっきりスルーされた。どこで見られたんだろう)
「う、うん」
「今日の剣技だって、本当は避けれたんでしょ?」
「でも、避けたらまた別の仕返しをされるだけだから」
「ランチの時だって、エイナにテーブル、蹴らせておけばよかったじゃない」
「そんなことしたら、メイアの服が汚れちゃうよ」
「いいの、私の服なんて洗えば。お願い」
「ロビ、ボクも入れて。メイア、泣いているよ」
「うん、わかったよ」
ロビはカサリも抱き寄せ、二人の頭を撫でた。
(メイア、貴族と平民じゃしょうがないんだよ)
ロビはセバス=クロティスに関する十九年前の記録のことを思い出していた。内乱時、ある騎士を優先して治療しなかったため、最初の母親はその騎士に殺され、その騎士もすぐに命を失った。
現場医療では一人でも多くの命を救うために、命の助かる見込みのある怪我人から治療する。その騎士は、助かる見込みが無いと判断された。そして、殺人行為は事故として処理されたことが書かれていた。
正門を抜けたところで二人と別れたロビは、また、オリシス家の監禁部屋のところへ行った。すぐに明かり窓からハルカの顔が見えた。
(あれ、どうしてわかったんだろう?『発動治療寝床』)
ロビは治療寝床に乗り、明かり窓に近づいた。
(『接触念話』)
<どうして僕が来たの、わかったの?>
<足音がしたので。ロビ様の足音は憶えました>
<それはすごいや、さすが狼獣人族>
<あの、ロビ様>
<何?>
<またキスしてもよろしいですか?>
<うん。今度はしてあげる>
ハルカは今朝と同様、腕の筋肉を震わせながら、ロビとキスをした。獣人族の舌は長いので、ディープキスをすると口の中がいっぱいになる。
<じゃあ、また明日>
<はい、また明日>
ロビが軽く手を振ると、今朝と同じくハルカは床に落ちた。しかしすぐにジャンプして明かり窓に飛びつき、ロビに不意打ちのキスをした。
王立学院には大きな食堂があり、生徒や講師がテーブルに着くとランチプレートが配られるという仕組みになっている。パンも温められたものを籠に入れて歩く給仕係が配り、好きなだけ食べることができる。
(エイナはいつものテーブルかな。なんか、窓際で給仕が早い席に近づくほど上級貴族がたくさん座るという習慣、なんとかならないものかな。端っこだとランチプレートを持ってきてくれるのも遅いし、パンのお替りもなかなか持ってきてくれないし)
午前の魔学、治世の講義を終えたロビは、貴族エリアに座っているエイナのテーブルに近づいた。
「ねえ、エイナ、今朝の件、どう?」
「おい、学院で俺に話しかけるな」
エイナは取り巻きと何かを話し込んでいる。エイナとその取り巻きは、王立学院に平民が入学できることを好ましく思っていない。
(また、なんか、良からぬ相談をしているのかな)
時折、会話からロビの名前が聞えてくることから、昨夜から今朝にかけてのことを自分の武勇伝のごとく話しているのかもしれない。
「今日のランチは、うまくないな。もっとマシなシェフはいないのか」
エイナが不満げな声を上げた。エイナのテーブルから離れ、平民の生徒が座っているドアそばのテーブルに向かっていたロビは、それに反応して振り返った。
「エイナ、食事中に大きな声を出すのはマナー違反です」
「す、すいません」
エイナの言葉を遮ったのはロレンだ。ロレンはウリシア王国の第一王女である。ロレンには、学年で言えば二つ下だが十一歳の妹、ルラン、そして八歳の第一王子アロンがいる。ルランとアロンは初等部に入学しており、ロレンとよく一緒にいるマレナ=オイチェカと四人でランチを食べていた。
(マレナって何となく色っぽいよな。どうしてだろう?)
エイナはウリシア王国三大貴族の長男とは言え、王家には腰が低い。
「それにあなた、人参が嫌いなだけでは?」
「そんなことはありません」
「だって、人参が入っている料理が出ると、いつもそう言っているもの」
食堂にいづらくなったのか、エイナは黙って立ち上がった。
(あ、やばい。エイナより先回りしないと)
エイナはテーブルを離れ、そしてドアの近くのテーブル、カサリを含む平民の生徒達が食事をしているテーブルの足を蹴飛ばした。
しかし、テーブルは微動だにしなかった。ロビの足がエイナの足を押さえつけたからである。そしてエイナはそのまま前に倒れた。
「エイナ、八つ当たりは良くないよ」
「うるさいな」
「あのね、私たちは同じヒト族なのよ。オリシス家だって、八十年前は赤字経営の下級貴族で、うちに借金をしていたわ」
「メイア、言いすぎだよ」
「ふん、憶えておけ」
エイナは怒ったまま食堂を出ていった。
「ああ、また今日もやっちゃった」
「いいのよ、あんな奴、この程度の恥はかかされるべきだわ」
こうやって、ロビはいつもエイナの機嫌を損ねていた。
「お兄様、ボクから何か言っておきましょうか?オリシス家とは繋がりがあります」
「大丈夫だよ。でも、家の問題に発展しそうな時はお願いしようかな」
「任せてください。お兄様とは熱い夜を過ごした仲です。何でも言ってください」
「ちょっと、ロビ、『熱い夜』って何?ちゃんと説明してくれる?やっぱりあなた、カサリに何か変なことを……」
「メイア、『暑い夜』だよ。カサリと会ったのは夏休みの時だから。オトイク王国はだウリシア王国よりちょっと南だし……ね?」
ロビがちらっと視線を動かすと、カサリがうれしそうな顔をしてロビを見ていた。
=== ✽ ✽ ✽ ===
次の講義は剣技で、生徒は訓練着に着替え、闘技練習場で基本的な攻撃、受け方の練習をしていた。まずは基本として、いくつかの『形』を練習する。これには攻撃と防御を組み合わせた動作が組み込まれている。
今日の形は、盾と片手長剣を使ったものである。中等部の生徒にとってはやや重い片手長剣を片手で扱うため、突き刺す攻撃を主体とした形を習う。カサリは身体が小さいので、教授と一緒に練習をしている。
そして、ロビの相手はエイナの取り巻きである。
(なんか、嫌な予感しかしないな……あ、このフォーム、三の形よりも肘の引きが大きい)
「うぅ、痛たたっ」
ロビはうずくまった。相手は、形で決められた場所とは違う腹部を突いていた。練習用とはいえ、固い木でできた剣である。出血するようなことは無いが、打撲や内出血は免れない。
「悪いな、ちょっと別の形と間違えちゃったよ」
「うん、いいよ、誰でも間違えることはあるよね」
「ちょっと、今の、ワザとでしょ!」
「メイア、だ、大丈夫」
そう言いながら、ロビは盾と剣を地面に置いてしゃがみ、腹を押さえた。メイアはロビの背中に手をかけながら一緒にしゃがんだ。
「ロビ、本当に大丈夫?」
「うん、わざと当たったから、それほど痛くないよ。それなりには痛いけど」
「わざと?」
「うん、まあ、見てて」
ロビは小声でメイアに話すと、剣を掴んでよろよろと立ち上がりはじめた。そして、地面に置いてある盾の位置を足で調整した。
「う、やっぱりダメだ」
そして、勢いよく地面にしゃがみこんだ。
「んっ……」
ロビが持っていた剣は、偶然にもロビが地面に置いた盾の角に当たり、盾が支点となって剣先が跳ね上がった。ロビの相手をしていた少年は声を出すこともできず、股間を押さえてうずくまった。
メイアは、ロビの背中をさすりながら笑いをこらえていた。ロビは普段からこんなことばかりしている。
「メイア、笑っちゃダメだよ」
この講義で今日は終わりである。学院の制服に着替えたロビ達は昨日のように、メイアカサリの三人で正門に向かって話しながら歩いていた。
「お兄様、剣技でお怪我をされたとか」
カサリは心配そうにロビを見上げた。
「大丈夫、ただの打撲だよ。もう自分で治癒しちゃったから」
「ちょっと見せてください」
「あ、こら、カサリ」
カサリは、ロビの服を上着ごとめくりあげた。
「お兄様、このたくさんの傷跡は何ですか?どこを怪我されたのですか?」
ロビは、すぐにメイアに見えないよう身体の向きを変えた。しかしカサリはロビの服の中に入って腹部を舐め始めた。
「ちょ、ちょっとカサリ、くすぐったいってば。魔石獣じゃないんだから、傷は舐めないってば。ね、お別れの挨拶しよ、ね」
ロビはカサリを服から引っこ抜くと、衣類を正して少しかがみ、カサリにディープキスをした。
(しまったな、今朝の怪我、まだ形成手術できていない)
形成手術とは、魔法外科医療のひとつで、傷跡などを目立たなくする手術である。
「ねえ、ロビ」
「な、何?メイア」
(メイア、声が低い。絶対、怒っているよな、カサリが舐めたからかな)
ロビは恐る恐る振り向いた。ロビの予想とは違い、メイアの表情は不安の色に染まっていた。
「たくさんの傷跡って、何?」
(あれ?思っていたのと違う反応、メイア、声が震えている)
「あ、いや、何でもないよ、カサリの見間違いだよ」
「いえ、お兄様、ボクは直接舐めましたから間違いありません。塩味でした」
「それは汗の味だよ」
「ちょっとこっちへ来て」
ロビはメイアに引っ張られ、生徒たちがいなくなった建物の裏に連れていかれた。カサリも一緒に付いてきた。
「見せなさいよ、傷跡」
「それはちょっと」
「やっぱりあるのね」
「うん」
ロビは渋々と制服の上着とシャツの前ボタンを外し、胸と腹部を見せた。メイアはロビに断りも入れず、両手で傷跡に触れた。
「なんてひどい傷、以前は無かったわ。エイナにやられたの?」
「ち、違うよって、いつ、僕の裸を見たの?」
「いいのよ、そんなこと」
「よくないよ、僕の裸、どこで見たの?」
メイアはロビに抱き着いた。
「ロビ、いいわ、これ以上は聞かない。でも、もっと自分のことを大事にして。お願い」
(うわ、思いっきりスルーされた。どこで見られたんだろう)
「う、うん」
「今日の剣技だって、本当は避けれたんでしょ?」
「でも、避けたらまた別の仕返しをされるだけだから」
「ランチの時だって、エイナにテーブル、蹴らせておけばよかったじゃない」
「そんなことしたら、メイアの服が汚れちゃうよ」
「いいの、私の服なんて洗えば。お願い」
「ロビ、ボクも入れて。メイア、泣いているよ」
「うん、わかったよ」
ロビはカサリも抱き寄せ、二人の頭を撫でた。
(メイア、貴族と平民じゃしょうがないんだよ)
ロビはセバス=クロティスに関する十九年前の記録のことを思い出していた。内乱時、ある騎士を優先して治療しなかったため、最初の母親はその騎士に殺され、その騎士もすぐに命を失った。
現場医療では一人でも多くの命を救うために、命の助かる見込みのある怪我人から治療する。その騎士は、助かる見込みが無いと判断された。そして、殺人行為は事故として処理されたことが書かれていた。
正門を抜けたところで二人と別れたロビは、また、オリシス家の監禁部屋のところへ行った。すぐに明かり窓からハルカの顔が見えた。
(あれ、どうしてわかったんだろう?『発動治療寝床』)
ロビは治療寝床に乗り、明かり窓に近づいた。
(『接触念話』)
<どうして僕が来たの、わかったの?>
<足音がしたので。ロビ様の足音は憶えました>
<それはすごいや、さすが狼獣人族>
<あの、ロビ様>
<何?>
<またキスしてもよろしいですか?>
<うん。今度はしてあげる>
ハルカは今朝と同様、腕の筋肉を震わせながら、ロビとキスをした。獣人族の舌は長いので、ディープキスをすると口の中がいっぱいになる。
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