拗らせファーストラブ〜アラサー女は死んだ初恋相手を助けるためにタイムリープする〜
第13話-1「BALLAD2022」
僅かにカーテンの隙間から射し込む日差しの中で目を覚ます。
ぼやけた視界が段々とはっきりした輪郭に変化していく。
「星祭りっ!! ……え?」
起き上がった場所はベッドの上。
周りを見渡すと自分で選んだお気に入りの白いタンスに薄型テレビ、ローテーブル。
やや幼い雰囲気の薄ピンク色をした星柄カーテンはお気に入りで何年も使用中。
ここ最近見慣れていた部屋ではなく、自身で家具を配置した6畳のワンルームだった。
「ここ……私の部屋。でも……」
ハッとして、髪を触る。
髪が短い。
高校生の私は髪が長かったはず。
慌ててベッドから飛び降り、全身鏡の前に立つ。
写っていたのは……疲れた顔をした30歳の自分だった。
「なんで……どういうこと? 私、戻ってきたの?」
鏡に触るとベタベタと指紋が付着する。
何をどうしても高校生の私はいない。
頭の中がグルグルとする。
やがてたどり着いたのは星祭りの記憶であった。
「はっ、星祭りは!? あれからどうなったの!?」
カウントダウンをしてそれから年越しして、黒咲君が笑ってるのを見て幸せだと感じて……。
「全然……覚えてない。私、あの後どうなったの?」
最後に見たのは笑顔の黒咲くん。
だが今、私は30歳のため黒咲君の時間も変わっているはずだ。
「……黒咲くん」
ベッドに置かれたスマホを探し、現在の日時を確認する。
着信履歴がたくさんあったが、無視をして日付をみた。
 
【2022年12月12日、(月) AM 09:12】
私は青ざめて腰を抜かし、ベッドに座り込む。
無我夢中でスマホのメッセージアプリを開く。
「やだ、やだっ! 黒咲くんは!? 黒咲くんはどうなったの!?」
震える手で私は通話ボタンを押していた。
プルルル、プルルル、プルッ!
「はいはぁい、芽々、こんな朝からどうしたのー? 久しぶりじゃーん」
「里穂ーっ! 私あれからどうなったの!?」
「はい!?  なんのこと!?」
私の感覚は先程まで星祭りにいた高校生。
だが通話をしている里穂は30歳の大人だ。
時間の感覚がズレているため、話が噛み合わないのも当然であった。
「ご、ごめん……。黒咲くんは……元気かな?」
「えー、卒業してから喋ってないからわかんないなぁ。家業継いで、復興会にも参加して頑張ってるみたいだけど」
その回答に唾を飲み込む。
「……黒咲くん、まだ生きてるってこと?」
「おいおい、勝手に殺しちゃダメでしょー」
吹き出すように笑い出す里穂に、私は胸をなでおろし安堵の息をつく。 
「そうだね。ふっ……やっぱりおかしかったんだよ。そうだ、そっちが夢だったんだ」
黒咲くんが自殺した、という未来がおかしかった。
あれが夢できっと今いる私は間違ったものを見てしまったのだろう。
夢と記憶がごちゃごちゃなだけで、自殺の未来はない。
あんなにキラキラ笑っていた黒咲くんを、私は隣りで見ていたのだから。
「……あのさ、言う必要ないと思って言わなかったんだけど」
「んー?」
「黒咲くんのお父さんなんだけど、亡くなったんだよね」
時が止まったかのような感覚がした。
冷たい汗が背中を伝う。
スマートフォンを持つ手が震えた。
「えっ……何で……」
「なんか倒れてそのまま亡くなったみたい。旦那が言うにはくも膜下出血だったとか」
「それっていつの話!?」
「今年の……7月だったかな。月末だった気がするんだけど」
「7月……」
(なんだろう、妙に引っかかる)
私は何が大切なキーワードを落としている。
このタイムリープした時系列も、夢の時系列も同じことが共通しているはずだ。
そしてそれは、タイムリープでさえ改変出来なかった決定的なこと。
ふと、私の中に卒業式の日の記憶が駆け巡った。
ぼやけた視界が段々とはっきりした輪郭に変化していく。
「星祭りっ!! ……え?」
起き上がった場所はベッドの上。
周りを見渡すと自分で選んだお気に入りの白いタンスに薄型テレビ、ローテーブル。
やや幼い雰囲気の薄ピンク色をした星柄カーテンはお気に入りで何年も使用中。
ここ最近見慣れていた部屋ではなく、自身で家具を配置した6畳のワンルームだった。
「ここ……私の部屋。でも……」
ハッとして、髪を触る。
髪が短い。
高校生の私は髪が長かったはず。
慌ててベッドから飛び降り、全身鏡の前に立つ。
写っていたのは……疲れた顔をした30歳の自分だった。
「なんで……どういうこと? 私、戻ってきたの?」
鏡に触るとベタベタと指紋が付着する。
何をどうしても高校生の私はいない。
頭の中がグルグルとする。
やがてたどり着いたのは星祭りの記憶であった。
「はっ、星祭りは!? あれからどうなったの!?」
カウントダウンをしてそれから年越しして、黒咲君が笑ってるのを見て幸せだと感じて……。
「全然……覚えてない。私、あの後どうなったの?」
最後に見たのは笑顔の黒咲くん。
だが今、私は30歳のため黒咲君の時間も変わっているはずだ。
「……黒咲くん」
ベッドに置かれたスマホを探し、現在の日時を確認する。
着信履歴がたくさんあったが、無視をして日付をみた。
 
【2022年12月12日、(月) AM 09:12】
私は青ざめて腰を抜かし、ベッドに座り込む。
無我夢中でスマホのメッセージアプリを開く。
「やだ、やだっ! 黒咲くんは!? 黒咲くんはどうなったの!?」
震える手で私は通話ボタンを押していた。
プルルル、プルルル、プルッ!
「はいはぁい、芽々、こんな朝からどうしたのー? 久しぶりじゃーん」
「里穂ーっ! 私あれからどうなったの!?」
「はい!?  なんのこと!?」
私の感覚は先程まで星祭りにいた高校生。
だが通話をしている里穂は30歳の大人だ。
時間の感覚がズレているため、話が噛み合わないのも当然であった。
「ご、ごめん……。黒咲くんは……元気かな?」
「えー、卒業してから喋ってないからわかんないなぁ。家業継いで、復興会にも参加して頑張ってるみたいだけど」
その回答に唾を飲み込む。
「……黒咲くん、まだ生きてるってこと?」
「おいおい、勝手に殺しちゃダメでしょー」
吹き出すように笑い出す里穂に、私は胸をなでおろし安堵の息をつく。 
「そうだね。ふっ……やっぱりおかしかったんだよ。そうだ、そっちが夢だったんだ」
黒咲くんが自殺した、という未来がおかしかった。
あれが夢できっと今いる私は間違ったものを見てしまったのだろう。
夢と記憶がごちゃごちゃなだけで、自殺の未来はない。
あんなにキラキラ笑っていた黒咲くんを、私は隣りで見ていたのだから。
「……あのさ、言う必要ないと思って言わなかったんだけど」
「んー?」
「黒咲くんのお父さんなんだけど、亡くなったんだよね」
時が止まったかのような感覚がした。
冷たい汗が背中を伝う。
スマートフォンを持つ手が震えた。
「えっ……何で……」
「なんか倒れてそのまま亡くなったみたい。旦那が言うにはくも膜下出血だったとか」
「それっていつの話!?」
「今年の……7月だったかな。月末だった気がするんだけど」
「7月……」
(なんだろう、妙に引っかかる)
私は何が大切なキーワードを落としている。
このタイムリープした時系列も、夢の時系列も同じことが共通しているはずだ。
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