拗らせファーストラブ〜アラサー女は死んだ初恋相手を助けるためにタイムリープする〜
第11.5話-side奏2「誰が為に協奏をする」
「……奏、ずっと一緒にいてくれてありがとね」
麻理子が奏の手を取り、穏やかに微笑む。
あまりにもそれがキレイで直視できない。
「アタシは麻理子といたいからいるだけで」
「それが嬉しいの。 奏が絶対肯定してくれたから励みに出来たし、見栄もはれた」
「……違うよ。そんな、麻理子が思ってるような理由じゃ……」
麻理子は世界一キレイで、かわいくて、輝いている。
絶対に負けそうにない華やかさをもちながらも、常に足元を気にして陰る憂いさえ、奏は目が離せなくなる。
黒咲くんが好きだと語るのを応援し、笑って話を聞きながらも内側に湧いてくるドロドロからは目をそらせなかった。
【黒咲くんって全然麻理子の魅力に気づかないじゃん。麻理子の良さがわからない奴の何がいいの?】
【アタシの方がずっとずっと麻理子の良さ知ってるし。麻理子を傷つける奴は滅びてしまえ】
麻理子はみんなのアイドルで友達も多い。
その魅力に惹かれてみんなが寄ってくる。
笑顔で対応する麻理子は素敵だ。
だけど……。
【なんで他の女の子と仲良くするの? アタシが一番でしょ?  なんでそんな頬を染めて麻理子を一番にしない奴のところに寄ってくの?】
何度、口に出しそうになったか。
【黒咲くんって麻理子のこと、好きじゃないよ】
【よく麻理子に告白してくる男子がいるけど、本音をわかってる?】
【麻理子を抱きたいだけだよ】
【ふざけんなよ。キモチワルイ】
【麻理子を大切にしない奴に渡すものか!】
だから気づかれない程度に誘導する。
『本当に麻理子が好きならそんなことしない。考える必要もないよ。放っておいちゃえ』
あぁ、なんて……。
【独占的で、浅ましいの……】
「麻理子は本当にキレイで、かわいくて。 好きで好きでたまらないの」
涙がこぼれ落ちる。
わがままな理由で泣くこの姿は麻理子にどう映る?
見た目は透明でも、実際はドロドロで粘着質な液体が流れているだけ。
時々、この気持ちはなんだろうと考える。
【アタシは、麻理子を恋愛として好きなのだろうか?  それともこれは友情の延長線?】
執着ばかりが増えていき、麻理子の行動さえも支配したくなる。
好きなのはありのままの麻理子のはずなのに、この手は麻理子を押さえつけ抱きしめようと手を伸ばす。
【あなたに否定されたらアタシの世界は崩れるほどに】
「麻理子の負担になってることはわかってる。アタシがずっと夢見ていられるように……」
涙が止まらない。
こんな自分勝手な理由で泣くのはキモチワルイ。
自分のことなのに自分の気持ちが一番わからない。
麻理子が息一つつくだけで怖くなり、頭の中にたくさんの考えが過ぎっていく。
色つきリップクリームの塗られた小さな唇が開くだけで、何度も恐怖する。
「奏が言うほどキレイじゃないよ。そんなすごい人間じゃないのになって」
実際に麻理子が奏を傷つけることはないのに、奏の中は不安と恐怖に満ちている。
ただ麻理子に着いていくのが精一杯で、まるで忠犬のように思えた。
「でも奏はそれでも好きだって言ってくれるから。何を見せても肯定してくれるから、だんだんと等身大でいいんだって思えた」
手を伸ばし、涙を拭ってくる白くて細い指。
髪をシュシュで飾らなくなった姿は偶像ではない。
生身の麻理子だった。
「奏がいないとかわいくあろうと努力も出来なかったかもしれない。奏はあたしの絶対的な安心だったから」
麻理子が大きく腕を広げる。
華奢でキラキラした宝石のような女の子だったはずなのに。
今はどうしてか、飾るものもないのにこれまで見てきた姿の中で一番キレイだと思った。
「大好きだよ、奏。ほら、おいで」
手を伸ばさずにはいられない。
小さなその身体に抱きしめられるのは、奏の特権だから。
「麻理子は麻理子だよ。アタシの大好きな麻理子だ」
「うん」
手を伸ばして頭を撫でてくる。
いつか、同じように飾りつけていたそれを手放せる日がくるまで……どうか。
「明日、がんばろうね。奏の誘導がないと台無しなんだからね!」
「……うん!」
麻理子の音に合わせて震えているのに気づかないでほしい。
お互いに飾る必要がなくなるまで。
きっと隣で音を奏で続けるーー。
麻理子が奏の手を取り、穏やかに微笑む。
あまりにもそれがキレイで直視できない。
「アタシは麻理子といたいからいるだけで」
「それが嬉しいの。 奏が絶対肯定してくれたから励みに出来たし、見栄もはれた」
「……違うよ。そんな、麻理子が思ってるような理由じゃ……」
麻理子は世界一キレイで、かわいくて、輝いている。
絶対に負けそうにない華やかさをもちながらも、常に足元を気にして陰る憂いさえ、奏は目が離せなくなる。
黒咲くんが好きだと語るのを応援し、笑って話を聞きながらも内側に湧いてくるドロドロからは目をそらせなかった。
【黒咲くんって全然麻理子の魅力に気づかないじゃん。麻理子の良さがわからない奴の何がいいの?】
【アタシの方がずっとずっと麻理子の良さ知ってるし。麻理子を傷つける奴は滅びてしまえ】
麻理子はみんなのアイドルで友達も多い。
その魅力に惹かれてみんなが寄ってくる。
笑顔で対応する麻理子は素敵だ。
だけど……。
【なんで他の女の子と仲良くするの? アタシが一番でしょ?  なんでそんな頬を染めて麻理子を一番にしない奴のところに寄ってくの?】
何度、口に出しそうになったか。
【黒咲くんって麻理子のこと、好きじゃないよ】
【よく麻理子に告白してくる男子がいるけど、本音をわかってる?】
【麻理子を抱きたいだけだよ】
【ふざけんなよ。キモチワルイ】
【麻理子を大切にしない奴に渡すものか!】
だから気づかれない程度に誘導する。
『本当に麻理子が好きならそんなことしない。考える必要もないよ。放っておいちゃえ』
あぁ、なんて……。
【独占的で、浅ましいの……】
「麻理子は本当にキレイで、かわいくて。 好きで好きでたまらないの」
涙がこぼれ落ちる。
わがままな理由で泣くこの姿は麻理子にどう映る?
見た目は透明でも、実際はドロドロで粘着質な液体が流れているだけ。
時々、この気持ちはなんだろうと考える。
【アタシは、麻理子を恋愛として好きなのだろうか?  それともこれは友情の延長線?】
執着ばかりが増えていき、麻理子の行動さえも支配したくなる。
好きなのはありのままの麻理子のはずなのに、この手は麻理子を押さえつけ抱きしめようと手を伸ばす。
【あなたに否定されたらアタシの世界は崩れるほどに】
「麻理子の負担になってることはわかってる。アタシがずっと夢見ていられるように……」
涙が止まらない。
こんな自分勝手な理由で泣くのはキモチワルイ。
自分のことなのに自分の気持ちが一番わからない。
麻理子が息一つつくだけで怖くなり、頭の中にたくさんの考えが過ぎっていく。
色つきリップクリームの塗られた小さな唇が開くだけで、何度も恐怖する。
「奏が言うほどキレイじゃないよ。そんなすごい人間じゃないのになって」
実際に麻理子が奏を傷つけることはないのに、奏の中は不安と恐怖に満ちている。
ただ麻理子に着いていくのが精一杯で、まるで忠犬のように思えた。
「でも奏はそれでも好きだって言ってくれるから。何を見せても肯定してくれるから、だんだんと等身大でいいんだって思えた」
手を伸ばし、涙を拭ってくる白くて細い指。
髪をシュシュで飾らなくなった姿は偶像ではない。
生身の麻理子だった。
「奏がいないとかわいくあろうと努力も出来なかったかもしれない。奏はあたしの絶対的な安心だったから」
麻理子が大きく腕を広げる。
華奢でキラキラした宝石のような女の子だったはずなのに。
今はどうしてか、飾るものもないのにこれまで見てきた姿の中で一番キレイだと思った。
「大好きだよ、奏。ほら、おいで」
手を伸ばさずにはいられない。
小さなその身体に抱きしめられるのは、奏の特権だから。
「麻理子は麻理子だよ。アタシの大好きな麻理子だ」
「うん」
手を伸ばして頭を撫でてくる。
いつか、同じように飾りつけていたそれを手放せる日がくるまで……どうか。
「明日、がんばろうね。奏の誘導がないと台無しなんだからね!」
「……うん!」
麻理子の音に合わせて震えているのに気づかないでほしい。
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