拗らせファーストラブ〜アラサー女は死んだ初恋相手を助けるためにタイムリープする〜
第11話-4(side里穂)「GLORIA2010」
【サイド里穂】
麻理子が去ったあと、視聴覚室に残された里穂が黒咲くんを見て息をつく。
「黒咲くんって罪作りだねぇ」
「ええ?」
「誰に好意向けられてものらりくらり。それだと結婚どころか、恋愛も難しいんじゃないの?」
その言葉に対する反応は遅く、鈍いものだった。
「……責任、とれないから」
「責任?」
「家に来てもらうことになるから。そんな理由が前提の結婚なんか、したくないよ」
「……それじゃあ、あんたはずっと孤独だよ。向き合おうとしてる人にもその態度貫くの?」
返答はない。
いや、喉の奥に言葉を詰まらせていた。
里穂は息をついて、辺り一面の幻想世界を見ていた。
ここは全てが夢で出来たような世界だと感じていた。
「アタシは将来、たくさん子供を産むよ。この町に残る。アタシは好きだから。ここで生きるよ」
「……ありがとう」
バタバタとした音が近づいてくる。
やがてそれは視聴覚室の前で止まり、荒々しく引き戸が開かれた。
「麻理子様がすぐ行けって何事!?」
長い髪を乱して登場した芽々に笑ってしまう。
スイッチが入ると真っ直ぐ全力に動く芽々は壁をぶち抜く力を持っている。
たくさんの手が引っ張ってきて涙することもあるけれど、それを振り払えば何も怖いものはない。
誰もがその一心不乱な姿の背を見るばかりなのだから。
「って、里穂と黒咲くんだけ?」
「芽々の登場、派手だなぁ」
「えー! そんなこと言われても!」
芽々はよく黒咲くんを星だと言う。
星のようにキラキラして優しく癒してくれる。
笑顔が一番星だと嬉しそうに語っていた。
もし黒咲くんが星なのだとしたら、芽々はその星がいるから輝ける月のような存在かもしれない。
誰かのために小さくても大きく見せて、夜空で圧倒的に輝く存在。
同じ夜空という舞台にありながらも、見える姿と実態は異なっている。
遠くにある星ほど、どんな姿をしているかわからないので、手を伸ばそうなんていう発想もなかった。
想えば一直線。
自分の想いよりも相手を優先して、怖いもの知らずに駆け寄っていくのはとても美しく見えた。
「後、当日の動きを決めるだけだから、アタシが麻理子様たちと話してくるよ」
「え?」
「芽々は黒咲くんと片付けね。当日、石運びやすいようまとめておいてね!」
「おい、しば……」
「「……」」
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