拗らせファーストラブ〜アラサー女は死んだ初恋相手を助けるためにタイムリープする〜
第11話-3(side麻理子)「GLORIA2010」
【サイド麻理子】
貸したスマホ片手に歩く里穂を見て、麻理子は不思議に思う。
黒咲くんの様子を見にきた麻理子と里穂という珍しい組み合わせである。
画面越しに見える姿は里穂からどう見えているのだろう。
上下を気にする麻理子と何が違うのか。
ふと、光る石に合わせてドレスも光らせたいと発言した芽々を思い出す。
暗くても光を放つ光沢のある粒を眩して、奏が手先の器用さを発揮し完成させた。
まさに麻理子のために作られたドレスである。
周りは片田舎では浮いてしまうほどに現実離れしていると褒め称えてくる。
麻理子から言わせてみればどんぐりの背比べでしかない。
小さい頃はテレビの中でしか見えてこなかった世界がどんどん近くなってきて、気づけば知らない顔が誰よりも近く見えてくる。
冠を被って最強だと思い込んでいたら、いきなりカーテンがめくられて同じように恍惚に笑っていた人がいた。
自分はこんな顔をしていたのかとゾッとし、下を見ると見上げてくるたくさんの美醜の手があった。
怖くなって上を見れば強烈な光を放つ足がある。
手を伸ばしてもそれには届かない。
何度も踏みつけられて、気づけばたくさんの手の一本になっていた。
「じゃあ開けてくださーい」
「えっ!? あたしが開けるの!?」
視聴覚室の前に着くと里穂が背中を押し、麻理子を遠慮なく前に進ませようとする。
ニヤニヤする笑い方に麻理子はムッとして口をへの字にするも、全く里穂には通じていなかった。
「ほらほら女王様頼みますよー」
「もーっ、ええい!」
勢いに任せて思いきり引き戸を開く。
緊張から固く目を瞑り、裏返った声を張った。
「く、黒咲くん! ドレス出来たんだけどどうかな?」
赤くなる頬を抑え、勇気を出して目を開くと視界にキラキラが広がった。
「……え?」
視聴覚室に散りばめられた光る石。
それはまるで簡易的なプラネタリウムのようだった。
天然の星空に見慣れてはいてもまた異なる小さな寄せ集めの輝きに息を呑んだ。
「わぁー、なにこれすごーい」
「あ、北島見に来てくれたのか」
「これが光る石なんだねー。すごいなぁ、ちょっと感動しちゃった」
「そのドレスも光るんだね。光の粒がキラキラしてる」
その言葉に固まってしまう。
無邪気に笑う芽々の姿が頭をよぎった。
「これはめめりんが考えて……」
「へぇ、時森が……。さすが、北島の良さを引き出してるよなぁ」
誰にでも優しい黒咲くん。
でもその優しさが今ほど痛く感じたことはない。
その良さを特別に感じてくれているわけではないとわかっていたからであった。
嫌でもわかる、ケジメの時だ。
芽々の親友にそれを見られているというのが今の麻理子にはちょうど良かった。
「……黒咲くんは、どう思う?」
「え?」
「何も思わない? あたし、ドレス着て黒咲くんの前に立って……」
「……キレイだと思うよ。本当に星の女王様っているんだなって、そう錯覚しそうになるくらい」
「……うん、ありがとう」
カメラがあるから泣かなくて済む。
さっぱりさせて、未来へ歩き出す。
拗らせるのは女王に似つかわしくないのだから。
艶やかに笑うのが麻理子が描くかっこいい女王様だ。
「里穂っち、動画撮影お願い。あたし、奏とめめりんのとこ戻る」
「……わかった」
引き戸を抜けて、現実世界へと帰る。
せっかく整えたキラキラが滲んで見えた。
【姫を辞めるためには、淡さなんていらない】
不慣れなヒールの音が廊下に響いていた。
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