拗らせファーストラブ〜アラサー女は死んだ初恋相手を助けるためにタイムリープする〜
第10話-5「もっと強く2010」
「だからオレも継いでがんばりたいんだ。もっとたくさんの人に知って手に取ってもらえないと。……もったいないもんな」
どうして、私はすぐに返事が出来ない?
声を出そうとしても、つっかえを外すことが怖くて間を開けてしまった。
「……応援、してる。誇るべきものだよ。絶対に、それは唯一無二のものなんだから」
「うん。本当に、いつもありがとう」
その声がどれだけ情けないものだったか。
少し困ったように口角を上げ笑ってくれる黒咲君に罪悪感を抱いた。
「時森のおかげでなんか変わった気がする。前を向いてがんばれそうだ」
「私は何も……。黒咲君は最初から頑張ってた。これから上手くいくよ。みんながきっと助けてくれるから」
「……うん」
黒咲君の返答も少しだけ遅くて、その喉に詰まるものは何かがわからない。
みんなに好かれて、仲良くて、頼られて、人気者の姿に憧れた。
なんて甘えるのが下手な人なんだろう。
力になりたいという人はたくさんいるはずなのに、弱音を吐かないことで言葉を奪われていく。
重責ばかりがのしかかり、その先に待っていたのは自分を失うというものだった。
それをわかっていて、伸ばせないこの手は何?
未来を回避したくてここにいるはずなのに、黒咲君を直視する度に動けなくなる。
【本当に拒絶しているのはどっちかわからなくなる】
「そう、だよな。時森も、受験頑張ってな」
「……うん」
ふと、私はこの町を飛び出した過去を思い出す。
変わりたかった。
それが町から去った理由だったはずなのに。
(何も変わらなかったよ。 たくさんのものを失っただけだった)
風が吹いても、何も変化がない。
何も切り替わらない世界の変え方がわからなかった。
「あ」
「え?」
突如、黒咲君が空を見上げて声を出す。
頬を染めて柔らかく微笑み、空を指さしながらこちらに視線を移す。
「時森、空見て」
その誘導に頷き、空を見上げるとヒラヒラと舞い散る花のような白い雪が降っていた。
都会ではめったに見ることのない優しい白さにホッと息を吐く。
「……雪だぁ」
「ホワイトクリスマス、だな」
「そうだね。いつもより降るの早い気がする」
子どものときだからそう見えたのだろうか。
家の屋根には太い氷柱が何本も出来るくらい寒くて、自分の身体を飲み込んでしまいそうな高さの積雪量だった。
少しずつ感じていく雪の量の変化。
あの巨大な氷柱は幻だったのかもしれない。
(それでも明日は積もっているかもしれないな)
シャベルを手に雪かきをしなくてはならない。
これが重労働なのだから困ってしまう。
見た目に反して雪は重いものだった。
「……オレ、頑張ってすごい職人になるから」
雪から目を離し、黒咲君の漆黒の瞳に私が映る。
それだけで胸が高鳴った。
誰かの目に私が映っている。
それが黒咲君だと実感すると、体内が燃えるように熱くなった。
「作品、いつかもらってくれないか?」
「もらっていいの? 工芸品なんて、立派なもので……」
「時森だから渡したい!」
肩を掴まれ、私の目が大きく見開かれていく。
こんなにも熱くて、なりふり構わずにぶつかってくる黒咲君ははじめてだった。
「絶対、絶対に驚かせてみせるから」
「……うん。楽しみにしてるね」
こんなふうに心が動くのは黒咲君だけ。
言動、行動に一喜一憂するのが止まらない。
(こんなに好きなんだから、他の人に惹かれるはずがなかったね)
強いところも弱いところも、全部受け止めたい。
抱きしめたいと思えた人は黒咲君だけ。
どうして、私はすぐに返事が出来ない?
声を出そうとしても、つっかえを外すことが怖くて間を開けてしまった。
「……応援、してる。誇るべきものだよ。絶対に、それは唯一無二のものなんだから」
「うん。本当に、いつもありがとう」
その声がどれだけ情けないものだったか。
少し困ったように口角を上げ笑ってくれる黒咲君に罪悪感を抱いた。
「時森のおかげでなんか変わった気がする。前を向いてがんばれそうだ」
「私は何も……。黒咲君は最初から頑張ってた。これから上手くいくよ。みんながきっと助けてくれるから」
「……うん」
黒咲君の返答も少しだけ遅くて、その喉に詰まるものは何かがわからない。
みんなに好かれて、仲良くて、頼られて、人気者の姿に憧れた。
なんて甘えるのが下手な人なんだろう。
力になりたいという人はたくさんいるはずなのに、弱音を吐かないことで言葉を奪われていく。
重責ばかりがのしかかり、その先に待っていたのは自分を失うというものだった。
それをわかっていて、伸ばせないこの手は何?
未来を回避したくてここにいるはずなのに、黒咲君を直視する度に動けなくなる。
【本当に拒絶しているのはどっちかわからなくなる】
「そう、だよな。時森も、受験頑張ってな」
「……うん」
ふと、私はこの町を飛び出した過去を思い出す。
変わりたかった。
それが町から去った理由だったはずなのに。
(何も変わらなかったよ。 たくさんのものを失っただけだった)
風が吹いても、何も変化がない。
何も切り替わらない世界の変え方がわからなかった。
「あ」
「え?」
突如、黒咲君が空を見上げて声を出す。
頬を染めて柔らかく微笑み、空を指さしながらこちらに視線を移す。
「時森、空見て」
その誘導に頷き、空を見上げるとヒラヒラと舞い散る花のような白い雪が降っていた。
都会ではめったに見ることのない優しい白さにホッと息を吐く。
「……雪だぁ」
「ホワイトクリスマス、だな」
「そうだね。いつもより降るの早い気がする」
子どものときだからそう見えたのだろうか。
家の屋根には太い氷柱が何本も出来るくらい寒くて、自分の身体を飲み込んでしまいそうな高さの積雪量だった。
少しずつ感じていく雪の量の変化。
あの巨大な氷柱は幻だったのかもしれない。
(それでも明日は積もっているかもしれないな)
シャベルを手に雪かきをしなくてはならない。
これが重労働なのだから困ってしまう。
見た目に反して雪は重いものだった。
「……オレ、頑張ってすごい職人になるから」
雪から目を離し、黒咲君の漆黒の瞳に私が映る。
それだけで胸が高鳴った。
誰かの目に私が映っている。
それが黒咲君だと実感すると、体内が燃えるように熱くなった。
「作品、いつかもらってくれないか?」
「もらっていいの? 工芸品なんて、立派なもので……」
「時森だから渡したい!」
肩を掴まれ、私の目が大きく見開かれていく。
こんなにも熱くて、なりふり構わずにぶつかってくる黒咲君ははじめてだった。
「絶対、絶対に驚かせてみせるから」
「……うん。楽しみにしてるね」
こんなふうに心が動くのは黒咲君だけ。
言動、行動に一喜一憂するのが止まらない。
(こんなに好きなんだから、他の人に惹かれるはずがなかったね)
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