拗らせファーストラブ〜アラサー女は死んだ初恋相手を助けるためにタイムリープする〜
第10話-2「もっと強く2010」
「……なんでアンタたちまでいるのよ」
「てへっ! おじゃましまーす」
「うっわ、おうちめっちゃキレイ!」
2010年12月24日。
学校が終わったあと、私たちは私服に着替えて麻理子の家に来ていた。
里穂と二人で麻理子の家のリビングに入ると駆け回り、写真を撮り始める。
「なに写真撮ってんのよ!」
「ごめん、ここまで増えるとは思ってなくて」
「誘っていいって言ったのあたしだから気にしないでぇ!」
一緒に来た黒咲君が麻理子に謝り出すも、麻理子はお得意の恋する乙女になり、腰をくねらせながらニコニコと笑っていた。
いつもより気合いの入った白いモコモコのニットに花柄の段重ねスカート。
こういう華やかなファッションが流行ってたと懐かしい気持ちになる。
私はネックセーターにチェックのミニスカート、黒タイツと麻理子に比べて控えめな格好だ。
それでも私にしては頑張った高校生ファッションであった。
「お前が一番来んな!!」
「えー」
黒咲君に見られないようについてくる麻理子の小さな悪態にヘラっと笑う。
こんなクリスマスパーティーというリアル充実イベントにはライバル役が顔を出さなくては。
麻理子の美貌を引き立てるには程よいモブみというものも必要だと納得させた。
くわえて私は友達とクリスマスパーティーというものをした記憶がない。
遠い昔すぎて覚えてない現実だ。
(え? 何してるかって? そんなのSNSみてるかマンガ読んでるか、お笑いをみるか……)
社会人になってからは家でもリラックス出来ないくらいヤベェやつだったと苦笑いしてしまう。
お笑いネタになりそうな電車で揺れるやつだったかもしれない。
あの奇跡的に倒れない器用さはなんだろう。
また最寄り駅に近づくとしっかり目を覚まし、何事もなかったかのように降りれるスキル。
変な器用さを身につける社会人。
そんなスキルより他に身につけたいものはたくさんあると嘆きたくなる。
だが今の私は高校生。
社会人ということは忘れて、青春を楽しみたい気持ちが強く、ミニスカートに酔いしれながら若返りを果たしていた。
「じゃーん! クリスマスケーキだよぉ!!」
麻理子がニコニコ顔で華やかにデコレーションされたクリスマスケーキを運んでくる。
麻理子の星の女王様をイメージしたのか、キラキラした宝石箱のようにフルーツが飾られ艶めいていた。
極めつけは細かい銀色のチョコレートの粒で描かれた女王様のテンプレートである。
「すごい! きれーっ! 食べるのもったいないくらいだよぉ!」
その褒め言葉に麻理子が気まずそうに目を逸らして苦笑い。
「か、奏が作ってくれた……」
「まりりんじゃないんだ」
「誰がまりりんよ! スカートめくるぞ!」
「あーっ! それはあかーん!」
麻理子が暴れてチェックスカートの端に手をかける。
少し引っ張られれば恥ずかしさの極み。
ミニスカートの罠にかかり、私は心の底から絶叫していた。
(ミニスカートなんて何年ぶりだと思ってるのよー! スースーする!)
「時森はオヤジ女子だったんだね……」
これほどのデコレーションケーキを作る匠女子の鏡、奏が笑い方に悩んでいる。
控えめに反応を示すカースト主義な奏も、振り回される麻理子の姿に戸惑っていた。
昔は怖かったカースト上位の女の子たちも、改めてみると素朴なかわいらしさがある。
(東京はもっと怖かばい……)
そんな都会マウントを心で思うあたり、根っこは田舎娘なのだと撃沈した。
「そんなことないよぉ。ちゃんと性別は女ですからー!」
「キモい」
(言われ慣れております)
時が戻ってからというもの、やたらとキモチワルイと奇異な目で見られることが増えた気がした。
八方美人とは変人を隠すための殻である。
殻破りをしたら世間の荒波にさらされ、淘汰されやすくなる弱い生き物なのだ。
私たちはそうやって擬態して生きるしか選べなかった。
本当の私なんてものは必要とされなくて、偽っても不用品扱いで、私はどんな顔をして生きていけばいいのだろう。
30歳というのは自分がわからなくなる転換期なのかもしれないと思った。
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