拗らせファーストラブ〜アラサー女は死んだ初恋相手を助けるためにタイムリープする〜
第10話-1「もっと強く2010」
黄昏時の神社横の川。
河川敷にあたる場所で黒咲くんと二人、並んで座っていた。
そよぐ風とせせらぎの音が心地よい。
嫌いだったはずの光景もたまには良いと心が安らいだ。
そして隣で大好きな人が前を向いて笑っている。
たまらなく愛おしくて、大切な時間だった。
「わぁ! なにこれすごい!」
黒咲くんが見せてくれたのは小さな石。
その辺に落ちている小石と違い、不規則な丸い形だがカラフルなものだった。
どうやらこれが光る石の進展らしい。
宝石箱に入った玩具のようで、見ているだけでワクワクがとまらない。
こういう童心は何歳になっても色褪せず、燻ってくるものだと実感した。
「山に別荘あるだろ? そこに行ったら見つけた」
少し歩けばすぐに坂道、そして気づけば山に突入する。
住宅地から離れて、人気のなくなる静かな場所。
未来では大型ショッピングモールの建つ中都市と緑の茂る山に挟まれた狭間の土地、それがふたご町であった。
(あー、あのタレントの別荘の一つだっけ? 未来だと引退してるから忘れてた)
全国各地にある別荘の一つで、気まぐれに訪れてはいつの間にかいなくなる芸能人。
別格の豪邸に子どものときはよくはしゃいで忍び込んだことを思い出す。
その度に管理をしている人に見つかってつまみ出されていた。
「たまたまそこに本人がいて。 事情を説明したらくれた」
(いい人だったんだ)
画面越しではその人の本当の人柄なんてものはわからない。
嘘で作られた世界だから。
それを私たちは正と捉え、嘘に心惑わされる。
嘘の愛だとしても、私たちは生きていく上で常に飢えている。
推しなる存在は心を満たすもの。
そこに真偽は必要ない。
見えているものが私たちの世界だから。
「欲しかったらたくさんあるから取りに来てって」
「すごーい! 夜だとどれくらい光るのかなぁ?」
「家で見た感じだと、淡く光る感じかな。投げたらどうかわからないけど」
制服の上着ポケットからガラケーを取り出し、写真フォルダを開く。
「面白いこと発見したんだ。コレ見て」
見せてもらった写真に、希望の光を見た。
丸っこい瞳の中に星が灯る。
裸眼で見た時と、カメラで写したときで見え方が異なると嬉しそうに黒咲くんが語っていた。
「わぁ、すごい。これはカメラならではかも」
「裸眼とカメラの違いってやつかな」
「いいね、これでたくさん投げたときに同じようになれば映えだよ」
「……映えって?」
「あーはは……なんでもない」
映えは通じないことを思い出し、笑って誤魔化す。
これが麻理子であったらハエ扱いされるところであった。
ブンブン飛び回るハエ女呼ばわりだ。
「まぁ、みんなで投げるならちょうどいいんじゃないかな?」
「……うん」
とても穏やかに、夕日に染まって黒咲くんが微笑んだ。
その美しさに目を奪われていると、黒咲くんがそっと手を重ねてきた。
「ぴゃあーっ!!」
予想外に加え、慣れていない私は突然のボディタッチに叫んでしまった。
黒咲くんもまた慌てて手を引っこめる。
何も言えずに目を合わせると、思わず顔を赤らめて固まってしまう。
「……ふっ」
だが慣れないことへの恥ずかしさに戸惑うばかりのあどけなさが可笑しくなり、笑いが込み上げてきた。
「「ふっ……ふは、アハハ!!」」
こんなことで笑えるってすごい。
笑ってはいけないことも増えていき、誰かと笑うということが愛おしかった。
部屋でスマートフォンの画面を眺めながら口角をあげるだけの私はいなかった。
「やっぱすげーわ、時森の叫び」
「なんなのそれー、扱いひどっ」
私はまだ黒咲くんのことを知らない。
でも今も昔も変わらない。
笑っている一番星の黒咲くんが好きだった。
「楽しみだな」
「うん。すごく楽しみ」
拗らせた私の初恋。
今でもずっと変わらない私の恋心。
拗らせるのも案外悪くない。
だってそれはずっと一途に想える心があるということだから。
河川敷にあたる場所で黒咲くんと二人、並んで座っていた。
そよぐ風とせせらぎの音が心地よい。
嫌いだったはずの光景もたまには良いと心が安らいだ。
そして隣で大好きな人が前を向いて笑っている。
たまらなく愛おしくて、大切な時間だった。
「わぁ! なにこれすごい!」
黒咲くんが見せてくれたのは小さな石。
その辺に落ちている小石と違い、不規則な丸い形だがカラフルなものだった。
どうやらこれが光る石の進展らしい。
宝石箱に入った玩具のようで、見ているだけでワクワクがとまらない。
こういう童心は何歳になっても色褪せず、燻ってくるものだと実感した。
「山に別荘あるだろ? そこに行ったら見つけた」
少し歩けばすぐに坂道、そして気づけば山に突入する。
住宅地から離れて、人気のなくなる静かな場所。
未来では大型ショッピングモールの建つ中都市と緑の茂る山に挟まれた狭間の土地、それがふたご町であった。
(あー、あのタレントの別荘の一つだっけ? 未来だと引退してるから忘れてた)
全国各地にある別荘の一つで、気まぐれに訪れてはいつの間にかいなくなる芸能人。
別格の豪邸に子どものときはよくはしゃいで忍び込んだことを思い出す。
その度に管理をしている人に見つかってつまみ出されていた。
「たまたまそこに本人がいて。 事情を説明したらくれた」
(いい人だったんだ)
画面越しではその人の本当の人柄なんてものはわからない。
嘘で作られた世界だから。
それを私たちは正と捉え、嘘に心惑わされる。
嘘の愛だとしても、私たちは生きていく上で常に飢えている。
推しなる存在は心を満たすもの。
そこに真偽は必要ない。
見えているものが私たちの世界だから。
「欲しかったらたくさんあるから取りに来てって」
「すごーい! 夜だとどれくらい光るのかなぁ?」
「家で見た感じだと、淡く光る感じかな。投げたらどうかわからないけど」
制服の上着ポケットからガラケーを取り出し、写真フォルダを開く。
「面白いこと発見したんだ。コレ見て」
見せてもらった写真に、希望の光を見た。
丸っこい瞳の中に星が灯る。
裸眼で見た時と、カメラで写したときで見え方が異なると嬉しそうに黒咲くんが語っていた。
「わぁ、すごい。これはカメラならではかも」
「裸眼とカメラの違いってやつかな」
「いいね、これでたくさん投げたときに同じようになれば映えだよ」
「……映えって?」
「あーはは……なんでもない」
映えは通じないことを思い出し、笑って誤魔化す。
これが麻理子であったらハエ扱いされるところであった。
ブンブン飛び回るハエ女呼ばわりだ。
「まぁ、みんなで投げるならちょうどいいんじゃないかな?」
「……うん」
とても穏やかに、夕日に染まって黒咲くんが微笑んだ。
その美しさに目を奪われていると、黒咲くんがそっと手を重ねてきた。
「ぴゃあーっ!!」
予想外に加え、慣れていない私は突然のボディタッチに叫んでしまった。
黒咲くんもまた慌てて手を引っこめる。
何も言えずに目を合わせると、思わず顔を赤らめて固まってしまう。
「……ふっ」
だが慣れないことへの恥ずかしさに戸惑うばかりのあどけなさが可笑しくなり、笑いが込み上げてきた。
「「ふっ……ふは、アハハ!!」」
こんなことで笑えるってすごい。
笑ってはいけないことも増えていき、誰かと笑うということが愛おしかった。
部屋でスマートフォンの画面を眺めながら口角をあげるだけの私はいなかった。
「やっぱすげーわ、時森の叫び」
「なんなのそれー、扱いひどっ」
私はまだ黒咲くんのことを知らない。
でも今も昔も変わらない。
笑っている一番星の黒咲くんが好きだった。
「楽しみだな」
「うん。すごく楽しみ」
拗らせた私の初恋。
今でもずっと変わらない私の恋心。
拗らせるのも案外悪くない。
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