拗らせファーストラブ〜アラサー女は死んだ初恋相手を助けるためにタイムリープする〜
第9話-3「To be free2010」
2010年12月20日、月曜日。
私たちは自分たちの出来る範囲で動画とポスターの拡散をはじめていた。
教室で上々な気分で足をブラつかせていた私のもとに黒咲くんが来た。
もう黒咲くんを釣るためならば手段は選ばないと決めた私は百々のように口角をあげてニヤリとした。
「時森、これって……」
「いい感じでしょ? みんなが拡散協力してくれた」
その発言を聞いていたクラスの人たちが同じようにニヤリとしてピースサイン。
私では巻き込む力もないので、麻理子に頼んで拡散力の強化に務めた。
さすがは最強のキャピキャピカーストトップの麻理子であり、女王様は伊達ではなかった。
「あくまで学生がお祭り広めたいの趣旨でやってるから運営はノータッチってことで」
「でも星を投げるって」
「黒咲くんが実現してくれるでしょう? 間に合えば嘘にならないから!」
漆黒の瞳に星が宿る。
これは私がはじめたことではない。
黒咲くんがいて、みんなが黒咲くんの人柄を知って成り立ったこと。
誰かが支えようと動けば変わることもあるんだ。
流れ星を作りたい想いは実現すると、私は信じている。
そこには理屈なんてものは必要ない。
論破は想いで強行突破だ。
「私も一緒に考えるから。 もう黒咲くんを一人で頑張らせない」
立ち上がって、私は堂々と手を差し出した。
「一緒にがんばろうよ!」
「周りがなんていうか……」
「関係ない。だって個人的な宣伝だもん。動画だって、お祭りとは別に勝手に現れますの宣言なだけ」
返されるものがないのなら私から掴む。
怯える黒咲くんの手は、私が流れ星になってその手に収まってみせるから。
その絶望は、きっと希望に変えてみせる。
「ポスターも、光る星を投げることと、星の女王が現れることメインで作ってるから! 場所がたまたまお祭り会場なだけ!」
「むちゃくちゃだな」
「むちゃくちゃでもなんでも、負けられない時はある! 目標と夢のある学生を叩くことは誰にも出来ない!」
汗ばむ手は熱いのか、それとも冷えているのか。
感覚のわからない手を掴みながらも私は妙な自信をもっていた。
「むちゃくちゃでも論破せよ! 感想でも、理論でも、夢に叶うものはない!」
「うん、そうだな。一人で頑張るのは……キツイから」
綻んでいく笑顔が愛おしい。
私は星のように一生懸命輝く黒咲くんが大好きだった。
想い続けて、拗らせて、どこまでも美化してしまうほどに恋焦がれた人。
幻想の黒咲くんと、現実の黒咲くんが混じりあう。
ここで笑っている黒咲くんが、あるべき未来だ。
「時森がむちゃくちゃな奴で良かったよ」
「えー、それ褒めてる?」
「かなり。オレ、すごくワクワクしてる」
握り返された手を離したくなかった。
いつか離れてしまうものとわかっていても、ここで生きている黒咲くんを忘れたくなかった。
「放課後、時間いいかな? 光る星の件、進展があるからさ!」
「うんっ!!」
あなたは私にとって輝く星で、世界で一番想いを拗らせた初恋の男の子。
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