拗らせファーストラブ〜アラサー女は死んだ初恋相手を助けるためにタイムリープする〜
第9話-2「To be free2010」
「でも諦めたなら、やめたいなら仕方ないよね。 そんな気持ちで支えられても嬉しくないし」
百々は首を横に振り、ベッドから降りると勉強机へ真っ直ぐ向かっていく。
「あんたみたいな人に支えられて生きられる人もいるのに、やめたらもう生きていけないね」
パソコンのコードをまとめ、淡々と片付けをはじめる。
私はそれを黙って見ているしか出来ない。
「つまらない無難な道の方が長生きに決まってるじゃん。それが悪いわけじゃない」
一切私に目を向けることなく、百々はパソコンを抱えると無表情のまま部屋を出ていこうとする。
だがピタリと、私の真横で足を止め、ボヤくように大きな声で言葉を吐き出していた。
「無難に生きるための信念がなきゃ、それは妥協だ。誰の力になれるはずもない。だから助けてくれる、支えてくれる人が少ないわけだ。エネルギーを使わないから」
冷たくしり目に百々はため息をついた。
「せっかくあんたが燃えてたのに、残念ね」
今度こそ容赦なく部屋を出ようとする百々。
私は拳をギュッと握りしめて、大粒の涙を零す。
どうしようもなく悔しくて、やりきれないカスだけの私が泣いていた。
「なんでぇ……この頃のおねーちゃんより私の方が年上のはずなのに……」
「はぁ?」
「やめたくない。頑張りたい。どうして誰も支えてくれないの。一緒に頑張らせてよ」
本当に、頑張れる環境が欲しかった。
無条件の応援なんてものはなくて、真っ白な時は真っ白な足枷があり、灰色になった頃には目の前のことで精一杯、真っ黒になった頃には役立たずになっていた。
がむしゃらさ。
食いつく必死さ。
逆境にも負けない根性。
それって、いつ壊れたの?
自分で失くしたのか、壊されたのかなんてもう……わからない。
張り裂けた想いは濁流となり、荒ぶって止めることが出来なかった。
「私一人じゃ耐えられない。だから……助けてよ。 頑張ったのにガッカリした目で見ないでよ」
「芽々、あんたはまだ学生だよ?」
百々はパソコン片手に、反対の手を伸ばして私の頬を引っ張る。
ひりつく頬っぺが涙と混ざって、熱を帯びていた。
「まだ諦めなくていいんだ。大人になって助けてくれない奴は、助けかたを知らない可哀想な奴だ。助けない人間は、助けかたの無知なんだ。それだけならいいけど、叩く奴もいる。それはな、痛みの無知なんだよ」
澄ました顔をしていた百々の口角があがり、満足そうに笑んでいた。
「詳しいことはわからない。でも無知になるな」
涙が止められない。
止めたくもなかった。
長年離れていた姉がこんなにも眩しく見えたのははじめてだった。
「あんたの人生、守りたい人を守れて支えられたら最高だね。知れば正しい守り方がわかるから」
「うん」
私は鼻をグズグズと鳴らしながら涙を拭う。
百々は私の前髪をぐしゃぐしゃにする勢いで乱雑に頭を撫でてきた。
「暗黙とか、体裁とか、無知をつくるための毒でしかないんだから。今、やりたいことをやんな」
頭から手を離すとパソコンを持って部屋を出ようとする。
だが足を止め、くるりと思わしげにニヤニヤと笑い出す。
まだ止められない涙で顔を汚しながら私は首を傾げて百々を見た。
「あ、勉強はしなよ? 大学行けないからね?」
「うん、ありがとうおねーちゃん」
「で、あの動画さ。すごい良かったしバンバン回そうよ」
目を丸くすると、百々はさらにニタリと愉悦に浸る。
ものすごく怪しい百々に背筋がゾッとした。
「大学ではあたしが周知させておくから、アンタも頑張りな」
「おねーちゃん……」
優しいと心に染み渡るあたたかさを感じる。
怪しいなんて思ってごめんなさいと心の中で謝罪する。
だがそこは姉、百々は期待を裏切らない嫌味でムカつく姉のままだった。
「下心……ふっ、丸出しで頑張りな」
「も、もう! おねーちゃんのバカッ!」
大声で笑い部屋を出ていく百々の背中を叩いて、赤くなった顔を誤魔化していく。
ムカつくはずなのに、こんなくだらない日常がいとおしくて、涙の止め方がわからなかった。
止めたくもなかった。
(やっぱり諦めたくない。ならあとは私が勝手にやろう)
復興会が絡まない学生の勝手な行動ということでやればいい。
悪く言われてもここの復興会にそこまでの対応能力はないことを逆手に取ろう。
悪知恵が働くのも、殻を破る気分で嫌じゃない。
失敗したら勝手なことをしたからだって言われ、成功したら来年に繋がるかもしれないだけの話。
世間で叩かれるようなことでもない。
映えるという行為は本来、何かを盛り上げたいという気持ちからはじまったことだと思うから。
目立てばいいのではない。
誰かのための優しい行為が拡散されたらいい。
大切な人を思っての行動が認められたとき、きっと私たちの心は満たされるから。
(そうやって盛り上がればきっと人も増えてくよ!)
絶望だらけの私の未来が希望に変わる。
まるでキラキラ輝く星空のように、私は高校生として未来を見つめていた。
すっかり見慣れたケータイ電話が鳴る。
麻理子からのメールだった。
上々な反応ににやけ顔が抑えられない。
(あとは里穂にも相談しよっと)
いま、私は私を解放して生きたい。
そう思えた日になった。
黒咲くんのことも、私は諦めない。
百々は首を横に振り、ベッドから降りると勉強机へ真っ直ぐ向かっていく。
「あんたみたいな人に支えられて生きられる人もいるのに、やめたらもう生きていけないね」
パソコンのコードをまとめ、淡々と片付けをはじめる。
私はそれを黙って見ているしか出来ない。
「つまらない無難な道の方が長生きに決まってるじゃん。それが悪いわけじゃない」
一切私に目を向けることなく、百々はパソコンを抱えると無表情のまま部屋を出ていこうとする。
だがピタリと、私の真横で足を止め、ボヤくように大きな声で言葉を吐き出していた。
「無難に生きるための信念がなきゃ、それは妥協だ。誰の力になれるはずもない。だから助けてくれる、支えてくれる人が少ないわけだ。エネルギーを使わないから」
冷たくしり目に百々はため息をついた。
「せっかくあんたが燃えてたのに、残念ね」
今度こそ容赦なく部屋を出ようとする百々。
私は拳をギュッと握りしめて、大粒の涙を零す。
どうしようもなく悔しくて、やりきれないカスだけの私が泣いていた。
「なんでぇ……この頃のおねーちゃんより私の方が年上のはずなのに……」
「はぁ?」
「やめたくない。頑張りたい。どうして誰も支えてくれないの。一緒に頑張らせてよ」
本当に、頑張れる環境が欲しかった。
無条件の応援なんてものはなくて、真っ白な時は真っ白な足枷があり、灰色になった頃には目の前のことで精一杯、真っ黒になった頃には役立たずになっていた。
がむしゃらさ。
食いつく必死さ。
逆境にも負けない根性。
それって、いつ壊れたの?
自分で失くしたのか、壊されたのかなんてもう……わからない。
張り裂けた想いは濁流となり、荒ぶって止めることが出来なかった。
「私一人じゃ耐えられない。だから……助けてよ。 頑張ったのにガッカリした目で見ないでよ」
「芽々、あんたはまだ学生だよ?」
百々はパソコン片手に、反対の手を伸ばして私の頬を引っ張る。
ひりつく頬っぺが涙と混ざって、熱を帯びていた。
「まだ諦めなくていいんだ。大人になって助けてくれない奴は、助けかたを知らない可哀想な奴だ。助けない人間は、助けかたの無知なんだ。それだけならいいけど、叩く奴もいる。それはな、痛みの無知なんだよ」
澄ました顔をしていた百々の口角があがり、満足そうに笑んでいた。
「詳しいことはわからない。でも無知になるな」
涙が止められない。
止めたくもなかった。
長年離れていた姉がこんなにも眩しく見えたのははじめてだった。
「あんたの人生、守りたい人を守れて支えられたら最高だね。知れば正しい守り方がわかるから」
「うん」
私は鼻をグズグズと鳴らしながら涙を拭う。
百々は私の前髪をぐしゃぐしゃにする勢いで乱雑に頭を撫でてきた。
「暗黙とか、体裁とか、無知をつくるための毒でしかないんだから。今、やりたいことをやんな」
頭から手を離すとパソコンを持って部屋を出ようとする。
だが足を止め、くるりと思わしげにニヤニヤと笑い出す。
まだ止められない涙で顔を汚しながら私は首を傾げて百々を見た。
「あ、勉強はしなよ? 大学行けないからね?」
「うん、ありがとうおねーちゃん」
「で、あの動画さ。すごい良かったしバンバン回そうよ」
目を丸くすると、百々はさらにニタリと愉悦に浸る。
ものすごく怪しい百々に背筋がゾッとした。
「大学ではあたしが周知させておくから、アンタも頑張りな」
「おねーちゃん……」
優しいと心に染み渡るあたたかさを感じる。
怪しいなんて思ってごめんなさいと心の中で謝罪する。
だがそこは姉、百々は期待を裏切らない嫌味でムカつく姉のままだった。
「下心……ふっ、丸出しで頑張りな」
「も、もう! おねーちゃんのバカッ!」
大声で笑い部屋を出ていく百々の背中を叩いて、赤くなった顔を誤魔化していく。
ムカつくはずなのに、こんなくだらない日常がいとおしくて、涙の止め方がわからなかった。
止めたくもなかった。
(やっぱり諦めたくない。ならあとは私が勝手にやろう)
復興会が絡まない学生の勝手な行動ということでやればいい。
悪く言われてもここの復興会にそこまでの対応能力はないことを逆手に取ろう。
悪知恵が働くのも、殻を破る気分で嫌じゃない。
失敗したら勝手なことをしたからだって言われ、成功したら来年に繋がるかもしれないだけの話。
世間で叩かれるようなことでもない。
映えるという行為は本来、何かを盛り上げたいという気持ちからはじまったことだと思うから。
目立てばいいのではない。
誰かのための優しい行為が拡散されたらいい。
大切な人を思っての行動が認められたとき、きっと私たちの心は満たされるから。
(そうやって盛り上がればきっと人も増えてくよ!)
絶望だらけの私の未来が希望に変わる。
まるでキラキラ輝く星空のように、私は高校生として未来を見つめていた。
すっかり見慣れたケータイ電話が鳴る。
麻理子からのメールだった。
上々な反応ににやけ顔が抑えられない。
(あとは里穂にも相談しよっと)
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