閉じる

拗らせファーストラブ〜アラサー女は死んだ初恋相手を助けるためにタイムリープする〜

星名 泉花

第7話-3「携帯電話2010」

「あ、それって目に留まるようになればいいってことだよな?」

「すでに目は夢中……」

「んん?」

「はっ!? なんでもございません!」


慌てて頭を下げて、話を元に戻す。


「これ、参考にならない?」


黒咲くんが上着のポケットから取り出したのは、七色の透き通る丸い石だった。

あの時、過去へと戻った私が黒咲くんに再会し、プレゼントしたものだった。

なんの石かは初めて見るものだったのでわからなかったが、暗くなりつつある世界でも淡く光を放っていた。


「この石、あの時の……」

「これキレイだよなぁ。 すごいんだぞ?  夜でも見えるくらい光るんだ」


空に掲げると、黄昏た日を浴びて石の中で炎が揺らめくように赤く輝いた。

見れば見るほど不思議な石である。

なぜ、そんなものを持っていたのか、覚えが全くなかった。


「まるで星を掴んだかのようで気に入ってるんだ」

「星……」


その一言に私は内側から星が溢れ出すのを体感する。

あの流星群が私をここに連れてきたのだとしたら、その石は星の奇跡かもしれない。

そしてその石の輝きは夜でも幻想世界をみせてくる。

ふたご町に落ちた奇跡で、希望の星だった。

私は手を伸ばし、石ごと黒咲くんの手を両手で包み込んだ。


「それだよ、それ! 黒咲くんすごい!!」

「えっ?」

「願いを込めて星を投げるんだよ! 流れ星ならぬ投げ星!」


黒咲くんと見た流星群。

あなたの笑顔は一番星。

星に見守られて私たちは時をかけ、巡り会えた。

私はその奇跡の光景を再現したかった。


「みんなで投げたらそれこそ流星群みたいできっとキレイだよ!!」

「光る星を投げる……」


黒咲くんの漆黒の瞳に光が走る。

キラキラ、まるで星空のようだった。


「うん、いいなそれ。 絶対キレイだ」



あなたの好きを、私は希望に変えたい。

黒咲くんに絶望が来ないように星に願いを込めて、私は未来を回避したいと祈っていた。


「でしょ? ロマンティックで素敵!  星のことなら黒咲くろさきくんだね!」


私のはしゃぎ過ぎな様子に黒咲くんは少し頬を赤くして、やわらかく微笑む。


「考えたのは時森だろ?」

「違うよ? 黒咲くんが言ってくれたから生まれたんだよ?」


私は腕を大きく広げて、希望を表現する。

私だけの力じゃない。

黒咲くんの想いがあったから事が動いたんだ。

一人で出来ないことも、想いが重なり力を合わせれば夢物語なんかで終わらないんだ。


「バラバラじゃ出てこなかった! 黒咲くんは私に力をくれたんだよ!  ありがとう!」


どうか、自分を卑下しないで。

黒咲くんは一生懸命でとてもすごい人なのだから。

あなたが壊れる未来なんて、私は認めない。

その笑顔は未来へと繋いでみせる。


「……うん。ありがとう、時森。何回言っても足りないや」

「楽しもうね!」


黒咲くんは七色の石を握りしめて、口角をあげ決意する。

石の輝きが反射して、黒咲くんの瞳に波が生まれた。


「石を光らせる方法、探してみる。だから待ってて?」

「うん、待ってる」


(黒咲くんが笑ってる。その笑顔がとても嬉しい。やっぱり黒咲くんは私の好きな人。星のように光る笑顔が大好きなんだ)

  
本当に順調で、楽しくて、幸せで。

黒咲くんが笑うたびに酔いしれていた。


あなたの笑顔を曇らせたくないのに、希望は時に晴れから曇りに変わってく。

やがて雨になって、晴れることなくあなたは時を止めてしまったんだ。


「拗らせファーストラブ〜アラサー女は死んだ初恋相手を助けるためにタイムリープする〜」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く