拗らせファーストラブ〜アラサー女は死んだ初恋相手を助けるためにタイムリープする〜
第5話-3「BREAK OUT!2010」
「なんか展示出来たらいいよなー。みんなこっそり掲示板に出してるくらいだろ?」
そういう世界もあったんだ。
過去のことでも知らないことはたくさんある。
いまは紙が主流の漫画もどんどんWebメインとなり、縦スクロールのものも増えている。
スマートフォンという技術革命を中心におよそ十数年で劇的な変化が起こっていたのだと改めて驚かされた。
流れる時の早さは、学生時代よりも早すぎて追いついていけなかった。
「いっそ募集だけかけて話題作り? 来年、公式キャラとして発表しちゃうとか」
(ゆるキャラって有名になったのこのくらいの時だよね?)
ガラケーでも調べられるが、こういう時のスマートフォンでの検索の早さは桁違いであった。
「時森すごいなー。よくそれだけ思いつくな」
「いや、私のアイディアでは……」
途端に、社会で叩かれ続けた日々を思い出す。
何をしても無能扱いで、見下されて、存在否定を受けていると思えてくる巧妙な手口に傷を負った。
陰湿極まりない手口だ。
法の隙間をくぐり、圧倒的優位な立ち位置から追い詰めていく。
その残酷さは大人になると正義と化す。
反省もなく、見て見ぬふりとなり、叱られる機会もないので膨張する。
下層にいる私には悪の正義に見えていた。
そのトラウマが目の前を真っ黒に染めていく。
(結局、未来の情報をやってるだけ。既存の真似事でしかない。オリジナリティなんてない。当たるとかもわかんない。だいたい私は無価値だし。誰にも認めてもらえなかったし、働くことさえ嫌がられる始末だもの)
抜け出せない闇に呼吸が苦しくなった。
お得意の笑顔の仮面を被って、大人ヅラをする。
「ごめん、テキトーなこと言った。もうちょっと、ちゃんと考えるね」
しっかりしないと、足元は簡単に崩れていく。
一寸先は闇、とはこういうことなのだろうか。
誰にも支えてもらえない足場ほど脆いものはなかった。
「なんで? おもしろそうじゃん?」
「え?」
降ってきた言葉に顔を上げる。
穏やかな優しい眼差しの黒咲くんに目を奪われた。
「何がどう転ぶかわかんないしさ。とりあえずやってみようよ」
そんな暖かいコトバをかけてもらえたのは何年ぶりだろうか。
否定に否定が続き、疲弊していたココロに染み渡る。
肯定してほしいわけではなかった。
ただ私を否定するような悪意をぶつけないでほしかった。
無価値だなんてレッテルをはらないで。
不用品扱いしないで。
これ以上、追いつめないで。
引き裂かれてバラバラになっていた心が、少しずつ元の位置に戻り出す。
何気ない優しい一言が世界を変えていく。
色褪せた世界から、色鮮やかな世界へ。
流星のように降り続ける黒咲くんという輝きが私に光をくれた。
私は微笑みながら涙を浮かべた。
黒咲くんはオロオロとして慌てふためく。
「お金はないから厳しいこともあるけど」
「……うん」
現実は変わらない。
でもそばにいたい人は選べる。
私は黒咲くんのそばで、喜ぶ顔がみたい。
絶望に身を投げる未来は、希望に変える。
優しいあなたに絶望は必要ないから。
「私、やりたい。何がいいとかはわかんないけど、やってみたい!」
黒咲くんの手を取り、私は瞳に星を灯した。
「黒咲くんに楽しいって思ってほしい!」
「……オレに?」
「あ……」
驚く黒咲くんに、我に返る。
口ばかり先走り、要点のない気持ちばかり言ってしまう。
こんな目立つ場所で開いてばかりの口は起爆材のようだった。
「あー、えっとその気持ちに嘘はなくて……いや、決して下心とかではなく」
「ははっ、そうだよな、楽しまないとな」
誤魔化せただろうか?
いや、本音であり下心満載だ。
それでも好きと告白するタイミングではない。
空気を読むのだ、アラサー女。
大人と書いて大気汚染。
高校生と書いて空気清浄機。
黒咲くんに浄化されてしまえ、穢れた私!
「ありがとな。なんか元気出たよ」
「うんっ!」
やってみなきゃわからない。
怖い気持ちはあるけど、社会で叩かれるより怖くない。
だってここにいるのは未成熟な子どもなんだ。
無謀な挑戦がだいたい許されるのは子どもだ。
やってはいけない理由を考えるのが大人だ。
ここにいる私は子どもなのだから、上司やお局の顔なんて気にしなくていいんだ。
すっかり浄化された私は機嫌を良くして、不用社畜アラサーに似つかわしくない前向き思考になっていた。
だから見落としていた。
こんなに賛同して楽しもうとしている黒咲くんが自殺に至るまでの闇を。
私たちは大人になればなるほど、意見が言えなくなっていくということをーー。
そういう世界もあったんだ。
過去のことでも知らないことはたくさんある。
いまは紙が主流の漫画もどんどんWebメインとなり、縦スクロールのものも増えている。
スマートフォンという技術革命を中心におよそ十数年で劇的な変化が起こっていたのだと改めて驚かされた。
流れる時の早さは、学生時代よりも早すぎて追いついていけなかった。
「いっそ募集だけかけて話題作り? 来年、公式キャラとして発表しちゃうとか」
(ゆるキャラって有名になったのこのくらいの時だよね?)
ガラケーでも調べられるが、こういう時のスマートフォンでの検索の早さは桁違いであった。
「時森すごいなー。よくそれだけ思いつくな」
「いや、私のアイディアでは……」
途端に、社会で叩かれ続けた日々を思い出す。
何をしても無能扱いで、見下されて、存在否定を受けていると思えてくる巧妙な手口に傷を負った。
陰湿極まりない手口だ。
法の隙間をくぐり、圧倒的優位な立ち位置から追い詰めていく。
その残酷さは大人になると正義と化す。
反省もなく、見て見ぬふりとなり、叱られる機会もないので膨張する。
下層にいる私には悪の正義に見えていた。
そのトラウマが目の前を真っ黒に染めていく。
(結局、未来の情報をやってるだけ。既存の真似事でしかない。オリジナリティなんてない。当たるとかもわかんない。だいたい私は無価値だし。誰にも認めてもらえなかったし、働くことさえ嫌がられる始末だもの)
抜け出せない闇に呼吸が苦しくなった。
お得意の笑顔の仮面を被って、大人ヅラをする。
「ごめん、テキトーなこと言った。もうちょっと、ちゃんと考えるね」
しっかりしないと、足元は簡単に崩れていく。
一寸先は闇、とはこういうことなのだろうか。
誰にも支えてもらえない足場ほど脆いものはなかった。
「なんで? おもしろそうじゃん?」
「え?」
降ってきた言葉に顔を上げる。
穏やかな優しい眼差しの黒咲くんに目を奪われた。
「何がどう転ぶかわかんないしさ。とりあえずやってみようよ」
そんな暖かいコトバをかけてもらえたのは何年ぶりだろうか。
否定に否定が続き、疲弊していたココロに染み渡る。
肯定してほしいわけではなかった。
ただ私を否定するような悪意をぶつけないでほしかった。
無価値だなんてレッテルをはらないで。
不用品扱いしないで。
これ以上、追いつめないで。
引き裂かれてバラバラになっていた心が、少しずつ元の位置に戻り出す。
何気ない優しい一言が世界を変えていく。
色褪せた世界から、色鮮やかな世界へ。
流星のように降り続ける黒咲くんという輝きが私に光をくれた。
私は微笑みながら涙を浮かべた。
黒咲くんはオロオロとして慌てふためく。
「お金はないから厳しいこともあるけど」
「……うん」
現実は変わらない。
でもそばにいたい人は選べる。
私は黒咲くんのそばで、喜ぶ顔がみたい。
絶望に身を投げる未来は、希望に変える。
優しいあなたに絶望は必要ないから。
「私、やりたい。何がいいとかはわかんないけど、やってみたい!」
黒咲くんの手を取り、私は瞳に星を灯した。
「黒咲くんに楽しいって思ってほしい!」
「……オレに?」
「あ……」
驚く黒咲くんに、我に返る。
口ばかり先走り、要点のない気持ちばかり言ってしまう。
こんな目立つ場所で開いてばかりの口は起爆材のようだった。
「あー、えっとその気持ちに嘘はなくて……いや、決して下心とかではなく」
「ははっ、そうだよな、楽しまないとな」
誤魔化せただろうか?
いや、本音であり下心満載だ。
それでも好きと告白するタイミングではない。
空気を読むのだ、アラサー女。
大人と書いて大気汚染。
高校生と書いて空気清浄機。
黒咲くんに浄化されてしまえ、穢れた私!
「ありがとな。なんか元気出たよ」
「うんっ!」
やってみなきゃわからない。
怖い気持ちはあるけど、社会で叩かれるより怖くない。
だってここにいるのは未成熟な子どもなんだ。
無謀な挑戦がだいたい許されるのは子どもだ。
やってはいけない理由を考えるのが大人だ。
ここにいる私は子どもなのだから、上司やお局の顔なんて気にしなくていいんだ。
すっかり浄化された私は機嫌を良くして、不用社畜アラサーに似つかわしくない前向き思考になっていた。
だから見落としていた。
こんなに賛同して楽しもうとしている黒咲くんが自殺に至るまでの闇を。
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