拗らせファーストラブ〜アラサー女は死んだ初恋相手を助けるためにタイムリープする〜
第5話-2「BREAK OUT!2010」
更に時間は進んで、昼休み。
現状報告というていで黒咲くんのもとへと行く。
間近でみる黒咲くんの漆黒の瞳は深くて吸い込まれそうだ。
まつ毛も長くて、キレイという言葉がピッタリである。
やっぱり好きだなぁと年甲斐もなくキュンに震えていた。
「へぇ、なんかすごいな。 そんなこと思いつかなかった」
「ホームページとかに載せてみようよ。動画編集見てくれる人いるかも」
ホームページに動画を載せるくらいなら容易だろう。
テキトーな考えで私は口にする。
だが黒咲くんの反応は苦々しく、渋っていた。
「あー、うん。そうしたいよなぁ」
「何か問題でもあるの?」
色褪せた微笑みで黒咲くんは生々しい現実を口にした。
「……ホームページに新しいページ作ったりすると結構お金かかるんだよ。そんなお金を出すのは……厳しいかな」 
「あー、そうだよね」
こればかりは残り少ない時間でどうなる問題でもなく、また高校生の力で解決出来ることでもない。
お金の問題はシビアだ。
学生が何を言っても説得力もない。
ましてや貧困層の多い町で簡単に資金は出ない。
何かしら理由をつけて出来ない理由を作り、腰をあげないのが上にふんぞり返る役職者という生き物なのだから。
私は肩を落として俯いた。
「芽々、なんか面白そうなことやってんじゃん?」
隣を見ると期待に目を輝かせたお調子者の親友、里穂がストラップだらけのガラケーを持ち立っていた。
話を聞いていたのか、里穂は鼻を鳴らして誇らしげに口角をあげていた。
「ホームページ、いじるくらいなら出来るかも」
「えっ!? 里穂、そんなこと出来るの!?」
「ブログやってるからねー。実は従姉妹に教えてもらって自分でWebページ作ってるんだぁ」
新情報であった。
そういえばホームページ制作が密かに人気だった時代もあったと思い出す。
知識のない私には技術が進化していて、どれだけの工数があるかは想像出来ないが。
在宅ワークとしてWeb制作が稼げると言われているが、メジャーになりすぎて争奪戦である未来。
だがこの時代ではまだ貴重な技術のはずだ。
「サーバー代のお金ないから趣味程度だけど」
「里穂すごい! ただの噂好きのミーハーじゃなかったのね!?」
 
「あんたそんなふうに思ってたの!?」
軽口に里穂は絶句する。
私は調子に乗って里穂に抱きつき擦り寄った。
「うそうそ、里穂は情報収集がうまくて行動も早いからすごいと思ってた!」
「嘘くせーな」
そう言いながらも頭をよしよしと撫でてくる里穂は優しかった。
何歳になってもよしよしされるのは嬉しいものだ。
気軽に甘えることの出来る友人はありがたいとじんわりあたたかさを身に染みて体感した。
私の素を知っても何年も関係の続く友人はとても大事で無くしたくないものだった。
だから私は初恋相手も失いたくない。
より一層、想いを強めていく。
順調に協力者が増えていくことに胸を躍らせた。
里穂が席に戻り、構想を練っているのを見て、私は満たされ微笑んでいた。
黒咲くんもまた固くなっていた表情を柔らかくしていた。
「ありがとな、時森。 ホームページのことは親父に話してみるよ」
「うんっ!」
緊張でこわばりがちだった黒咲くんが前を向いていてこちらも嬉しくなる。
そう、黒咲くんは自殺するような人ではない。
明るくみんなの人気者。
いつだって優しくて、困っている人に手を伸ばす頼れる男の子だった。
「動画アイディアは出たとして、あとは演出と衣装と、拡散の手段か」
チラシやポスターは復興会が出しているが、普通で目につかない。
ありきたりの雪だるまと星が描かれただけのそこら辺に埋もれてしまう無難さだった。
それでは注目なんて夢のまた夢。
ルーチンワークとしてやるべきこととそうでないことがごっちゃになっている。
苦手なことがわかる不器用さは素人目でみても顕著なものだ。
まさに事務の片手間である。
元々好きな人が作れば良いが、そうでない人が作ったものはいやいやな気持ちが伝わってしまう。
お祭りといっても身内思考であった。
身内思考もまた、ケースバイケースである。
今、それはあきらかにマイナスに働いていた。
(地元を推すなんて考えたこともなかったからなぁ)
「推し……」
そういえば推し活が当たり前になっていたことを思い出す。
特に推しのなかった私は遠巻きにみていたが、なんだかんだで「これが好き」ではなく「これ推してる」がベターになっていた気がした。
 
推し活の代名詞はゆるキャラやアニメキャラから始まったのではないかと推測する。
原点はもっと昔だろうが、価値観はじわじわと高まっているのがこの時代だろう。
そしてそれが未来で爆発する。
「アニメみたいなのつくれたら最高よね」
「アニメは難しいかなー」
時間も人もいない中でさすがに無理があるとはわかっていながらも口にすると、黒咲くんは笑ってくれた。
反応があるって嬉しいなと頬を染める。
「あ、でもイラスト上手いやつ多いよな」
クラスメイトの何人かを挙げていた。
人気者は周りの把握力が高かった。
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