拗らせファーストラブ〜アラサー女は死んだ初恋相手を助けるためにタイムリープする〜
第1話-2「First Love 2022」
私は電車に乗りながら黒咲くんとの最後の会話を思い出す。
卒業式の日、みんながそれぞれの反応を示しながら卒業証書の入った黒筒を握りしめていた。
友達と別れ、校門の前で私は黒咲くんと対峙する。
「なぁ、時森はノストラダムスの大予言って覚えてる?」
突然のワードに私は目を丸くし、ケラケラと笑う。
「あー、なんか小学生のときに話題になったやつだよね?  懐かしー!」
子どものときに何かと言えば笑ってその時を待っていた。
それが本当なのか、嘘なのかはどうでもよく、話題として何かと滅亡と冗談を発していた。
「みんな世界が終わるって言ってた」
「終わらなかったな。 ……終わってくれればよかったのに」
「えっ?  今なんて」
呟かれた言葉を聞き取れなかった。
黒咲くんは散り際の桜のように淡く微笑んだ。
「ううん、なんでもない」
頭をくしゃくしゃと撫でられ、私は唇を尖らせながらも内心胸を高鳴らせて上がってしまう口角を押さえつける。
くすぐったい。
でもまるで幸福感しか知らないかのような高揚に私は綻んでいた。
「ここを離れてもオレのこと、忘れないでくれよ?」
「忘れるわけないじゃん!」
(忘れるわけないよ。ずっと好きだったんだから)
一瞬にして私は降下する。
片手に持っていた黒筒を握りしめた。
それから何気ない雑談をして、私は黒咲くんへと手を振り最後の別れをした。
私と黒咲くんの道は制服を着て通う学び舎を背に、右と左に分かれていく。
振り返ったときに見た黒咲くんの背中は、はじめて見た時よりもずいぶんと広くなり、春なのに寒さを感じた。
この先、二度と見ることはないとも知らず、私はその背が見えなくなるのを黙って見つめていた。
「さよなら、私の恋」
電車に揺られて、私は里穂とのメッセージのやりとりを俯瞰的に見ていた。
(黒咲くん、自殺なんてどうして)
あまりに実感がなさすぎて、実はエイプリルフールでしたオチはないだろうか。
いや、時期も違って今はコートが必要な寒さだ。
(都会と違って田舎だからとっくに結婚でもしてると思ってたけど、どうだったのかな)
じわりと、視界が歪んだ。
目頭が熱くて周りの人たちが横にゆらゆら揺れる。
(あ、どうしよう。泣きそ……やだ、こんなところで)
手の甲で強めに瞼を擦る。
小さな粒が手の甲でラメがついたように光っていた。
息を整え、私はただなんとなく出入口の上に設置された液晶に目を向け、羅列される文字を読む。
『ふたご座流星群の予想極大時刻は本日14日22時頃を予定。日本で条件良く観察できる時間帯に当たっています』
かわいいポップな星のイラストが液晶に降っている。
思わず頬を緩め、笑ってしまった。
(そういえば黒咲くんって星好きだったな)
今では閉鎖された屋上に、当時は忍び込んで学校が閉まるギリギリまで星を眺めていた彼を思い出す。
都会に出てきてからというもの、私は星が魅せる幻想的な景色というものを見ていない。
ふと、現実から離れたいと思ってしまう。
誰にも訴えられない圧力と、特別大切な人がいない家と会社の往復の日々。
運良く休めても一人ベッドの上でスマートフォンを触るだけの口を開かない夜。
誰を思い浮かべることもなく、SNSでみる知らない人の身近な話。
それを語ることもなく、ただ暗闇の中で光るディスプレイを見る。
人工的なもの、冷たいだけのもの。
人生って、こんなに流れるだけだった?
心躍らず、傷さえも麻痺してわからない。
子どもの頃にこうなるだろうと想像していた大人にしては、あまりに退屈であまりにみじめだ。
仕事がなくなったらどこまで底は低くなるのだろう。
底辺ってどこにあるのかな。
よくわからない。
ただ、無性に私はあたたかさが恋しくなった。
私はそのまま電車で終着駅まで乗っていった。
卒業式の日、みんながそれぞれの反応を示しながら卒業証書の入った黒筒を握りしめていた。
友達と別れ、校門の前で私は黒咲くんと対峙する。
「なぁ、時森はノストラダムスの大予言って覚えてる?」
突然のワードに私は目を丸くし、ケラケラと笑う。
「あー、なんか小学生のときに話題になったやつだよね?  懐かしー!」
子どものときに何かと言えば笑ってその時を待っていた。
それが本当なのか、嘘なのかはどうでもよく、話題として何かと滅亡と冗談を発していた。
「みんな世界が終わるって言ってた」
「終わらなかったな。 ……終わってくれればよかったのに」
「えっ?  今なんて」
呟かれた言葉を聞き取れなかった。
黒咲くんは散り際の桜のように淡く微笑んだ。
「ううん、なんでもない」
頭をくしゃくしゃと撫でられ、私は唇を尖らせながらも内心胸を高鳴らせて上がってしまう口角を押さえつける。
くすぐったい。
でもまるで幸福感しか知らないかのような高揚に私は綻んでいた。
「ここを離れてもオレのこと、忘れないでくれよ?」
「忘れるわけないじゃん!」
(忘れるわけないよ。ずっと好きだったんだから)
一瞬にして私は降下する。
片手に持っていた黒筒を握りしめた。
それから何気ない雑談をして、私は黒咲くんへと手を振り最後の別れをした。
私と黒咲くんの道は制服を着て通う学び舎を背に、右と左に分かれていく。
振り返ったときに見た黒咲くんの背中は、はじめて見た時よりもずいぶんと広くなり、春なのに寒さを感じた。
この先、二度と見ることはないとも知らず、私はその背が見えなくなるのを黙って見つめていた。
「さよなら、私の恋」
電車に揺られて、私は里穂とのメッセージのやりとりを俯瞰的に見ていた。
(黒咲くん、自殺なんてどうして)
あまりに実感がなさすぎて、実はエイプリルフールでしたオチはないだろうか。
いや、時期も違って今はコートが必要な寒さだ。
(都会と違って田舎だからとっくに結婚でもしてると思ってたけど、どうだったのかな)
じわりと、視界が歪んだ。
目頭が熱くて周りの人たちが横にゆらゆら揺れる。
(あ、どうしよう。泣きそ……やだ、こんなところで)
手の甲で強めに瞼を擦る。
小さな粒が手の甲でラメがついたように光っていた。
息を整え、私はただなんとなく出入口の上に設置された液晶に目を向け、羅列される文字を読む。
『ふたご座流星群の予想極大時刻は本日14日22時頃を予定。日本で条件良く観察できる時間帯に当たっています』
かわいいポップな星のイラストが液晶に降っている。
思わず頬を緩め、笑ってしまった。
(そういえば黒咲くんって星好きだったな)
今では閉鎖された屋上に、当時は忍び込んで学校が閉まるギリギリまで星を眺めていた彼を思い出す。
都会に出てきてからというもの、私は星が魅せる幻想的な景色というものを見ていない。
ふと、現実から離れたいと思ってしまう。
誰にも訴えられない圧力と、特別大切な人がいない家と会社の往復の日々。
運良く休めても一人ベッドの上でスマートフォンを触るだけの口を開かない夜。
誰を思い浮かべることもなく、SNSでみる知らない人の身近な話。
それを語ることもなく、ただ暗闇の中で光るディスプレイを見る。
人工的なもの、冷たいだけのもの。
人生って、こんなに流れるだけだった?
心躍らず、傷さえも麻痺してわからない。
子どもの頃にこうなるだろうと想像していた大人にしては、あまりに退屈であまりにみじめだ。
仕事がなくなったらどこまで底は低くなるのだろう。
底辺ってどこにあるのかな。
よくわからない。
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