CrazyDoll-クレイジードール
彼女の住む世界
7「彼女の住む世界」
16月14日
9時00分
シルバニア国北東部
フィナーレ・ルチア
アスチルーベ学園
ミドルスクール3年Bクラスの教室には今日も静かな空気が流れている
教壇の前で赤髪の教師、アダム・ブラウンが生徒達の出欠確認を行う
生徒達はいつも通り、声を張り上げて、学生番号と名前を叫んでいた
アスチルーベ学園のいつもの光景、いつもの朝が、いつも通り始まろうとしている
しかし、今日は少しだけ、いつもと違う出来事があった
出欠確認を終えた先生が「今日は転校生が来ている、今から連れて来る」と言って教室から出て行ったのだ
先生が退出してから、しばらくの間、教室は転校生の話題で持ちきりになる
「どんな奴が来るのか?」「見た目は?」「性格は?」「カードの階級は?」と、生徒達は好き勝手に想像を膨らませていた
ミドルスクール3年Bクラスの生徒達は基本的には平和主義者であり、この学園に存在するクラスの中では1番の善良なクラスであった
生徒達はみんな、それぞれに好きな事があり、それに夢中になっているから、クラスで大きい争いが起こる事は少なく、みんなで助け合いながら、学園生活を謳歌している
アスチルーベ学園では6年間クラス替えが行われる事はなく、基本的に留年、編入、転校などがない限り、顔ぶれが変わる事はない
そんなクラスに新しい生徒が加わるとなれば、生徒達も色めき立つのは自然の流れであった
騒いでるBクラスの扉が開け放たれると、辺りは一気に先程の静寂を取り戻す
アダム先生は一人の女性型ドールを連れて、教室の中に入って来ると、生徒達に告げた
「彼女が転校生だ、みんな仲良くするように」
彼女は眼の下にある隈を少しだけ擦ると、生徒達に向かって短く自己紹介をした
「ジェニファー・ローレンスです、よろしくお願いします」
彼女の姿を見て、生徒達は困惑していた
こんな時期に転校生がやって来るから皆、華やかで元気のある子かミステリアスで掴みどころがない静かな子が入って来るものだと予想していた
何故そのような予想がなされたのか
答えは単純で、Bクラスでは空想本が流行っているからである
空想本とは、人形人が己の知識と知恵を絞り作り上げる、物語形式の本の事である
Bクラスで人気の高い、空想本のお決まりパターンとして、変なタイミングで転校してくる生徒は華やかで活発なタイプか、華やかではないがミステリアスなタイプの人形と相場が決まっていた
その固定観念をBクラスの生徒は皆、共通のものとして持ち合わせている
彼女の声は怒気を孕んでおり、活発なタイプと取れなくもない
しかし、眼の下の隈が表現しているのは、やはり活発なキャラクターではなく、ミステリアス系のキャラクターだろう
彼女は見た目と性質に、少しだけギャップがあるのだ
生徒達はジェニファーがどんなキャラクターなのか掴めずに、困惑の表情を浮かべていた
先生は生徒達がそんな事を考えているとは知らず、ジェニファーに窓際の席を与える
窓際の席は空想本でお決まりの席で、8割の生徒は席のチョイスに納得し、頷いていた
ジェニファーが席に着くと、隣の席の男性型ドールが彼女に声をかける
「僕はロクレン・スミスだ、よろしくなジェニファー」
ロクレンは短髪で黒髪の男性型ドールで、瞳の色は黄色だ
身長はジェニファーより少しだけ大きい
「よろしく」
ジェニファーは短く返事をした
アダム先生は生徒達に向かって言う
「今日はお昼時間までぶっ続けで戦闘訓練の授業を行う、9時50分までに戦闘倉庫に集合するように、ジェニファーは今日来たばかりだから、隣に居るロクレンに流れを教わってくれ、眠気が酷い奴は先生がビンタしてやるから申し出るように、それでは準備を始めてくれ」
先生の言葉を聞いて生徒達は戦闘訓練の準備に取り掛かる
ロクレンはジェニファーに流れを教える為に、喋り始めた
「ジェニファーは前の学園で戦闘訓練を受けた事はあるかな?」
「一応、前の学園にもあったわ、ただ学園毎に流れも違うだろうし、説明してくれると助かるわ」
素直なジェニファーの反応に、ロクレンは嬉しそうに微笑んでから言った
「分かった、それじゃあ説明するね、まず戦闘倉庫に行こうか」
ロクレンの誘導で戦闘倉庫に向かって歩き出す
「ジェニファーは、陽キャなのか陰キャなのか分かりにくいね?」
「なにそれ」
ロクレンの台詞に、ジェニファーは首を傾げる
「その人形の持つ固有のキャラクター性さ、陰キャは暗いキャラクターで、ミステリアスなキャラクター、陽キャは明るくてクラスの中心になるようなキャラクターの事だよ、ジェニファーは空想本はあまり読まないタイプ?」
「読まないわね」
「そうなんだ、空想本が好きであれば説明は簡単だったんだけど」
「用語の細かい用途はあまり分からないけど、要は明るい性格と暗い性格って事?」
「そうそう、単純に言えばそんな感じだね、ジェニファーは見た目的には陰キャだけど、性格は活発と言うか、凄く攻撃的な感じがあると言うか」
「なんだか凄く失礼な事言ってない?と言うか記号に当て嵌めないで貰える?私は陰キャでも陽キャでもなくジェニファー・ローレンスよ、人形だったら誰しも、暗い時もあれば、明るい時もあるでしょ、もしかしてロクレンってバカなの?」
「いや、まぁそうなんだけどね、ベースとしての話さ、あそこが戦闘倉庫だ」
この話題を続けると面倒だと判断したロクレンは、戦闘倉庫を指差した
戦闘倉庫は文字通り、戦闘を行う為の大きな建物である
外観は緑色をしており、大きな白い文字で斜め書きされた「死亡厳禁」の文字が特徴的である
ジェニファーはその文字を見て「なかなかユーモアがあるわね」と満足そうに頷いていた
9時40分
戦闘倉庫の中に入ると温度が急激に上昇する
戦闘倉庫は必要最低限の場所以外は密閉されており、太陽が強い季節であればある程、内部は高温になっていく
「戦闘の場には冷房装置など不要」と言うのが学園側の見解なのだが、生徒達からは多数の不満があがっていた
「暑いわね」ジェニファーの呟きに、ロクレンは苦笑いしながら言った
「寒い時期以外はこんな感じだよ、一応学園側から無制限で水が支給されてるから、補給ポイントに行けば水分補給は出来るけど、生ぬるいし、汚い水を使ってるのか味はあんまり良くないけどね」
武器保管庫に入った二人は、訓練用のハンドガンを一丁手にする
「武器は基本的にこの、訓練用のハンドガンを使うんだ、あとそこにある防弾布を服の中に巻いて、無線通信機もあるから」
「なんと言うか、過保護ね」
「まぁ学園側も責任を取りたくないんだろうさ、ここまでしてて怪我をするようならそれは学園側の責任じゃなくて、個人の責任ですよってね」
「ふーん、と言うかこの防弾布、臭いやばいわね…」
鼻を摘みながら言うジェニファーに、ロクレンが笑いながら言った
「この暑さなら仕方ないよ、一応洗われてはいるはずだから我慢してね」
ジェニファーは我慢しつつ、防弾布を自身の体に巻いた
9時50分
戦闘倉庫に84名の生徒が集まっていた
先生は生徒達に向かって喋り始める
「それでは今からチーム編成を発表する、今回はAクラスとBクラスで戦闘訓練を行ってもらう、今日は16チームだ、1チーム5名編成で、余った4名には見学してもらう」
先生が編成を発表して行く
ジェニファーとロクレンは一緒のチームになり、他にもシルエイト・フォスター、キュウチー・パーカー、サバキュウ・フィッシャーが仲間に選ばれていた
「それではこれより、戦闘訓練を行う、今回はA班からP班までの合計16チームで争ってもらうぞ、戦闘開始時刻は10時00分から12時00分までの120分だ、バトルのルールはタイムウォーズ形式で行くぞ」
先生の言葉を生徒達は真面目に聞いている
先生はジェニファーの為に説明を始めた
「今日は新しい生徒も居るから、タイムウォーズについて軽く説明するぞ、タイムウォーズとは、文字通り、時間を争う戦闘訓練だ、生徒一人一人には、持ち時間30分が与えられる、その時間がなくなってしまった者は脱落だ、時間を増やすには、与えられた訓練用ハンドガンで、他の生徒に弾丸を当てなければいけない」
先生の説明を、ジェニファーは、しっかりと聞いていた
「当てられた生徒は失格、弾丸を見事に命中させた生徒には、30分の時間が加算される、全てのチームを全滅させたら、その班の勝利だ、各班にはリアルタイムで動く生存確認端末も与える、この端末にはどんな奴が居て、現在どのぐらいの時間を所持しているのかが、表示される、少しでも戦闘の参考にしてくれ」
先生は説明を終えると、班のスタート位置を決めてから、生徒達を所定の場所に誘導した
9時55分
キュウチーが編成を見て呟く
「合計が43か、これは負けたな…」
キュウチーは短い茶髪で、緑色の瞳をした男性型ドールだ
キュウチーの台詞に続いてシルエイトが言った
「キングが二人、クイーンが一人、10が二人で58のチームもあるね、今回のバトルで勝つのはこのチームかな」
シルエイトは黄緑色の髪をした、瞳が紫色の男性型ドールだ
髪の毛は長く、腰元まで伸びている
二人のやり取りを聞いていたジェニファーが、口を挟む
「あんた達、カードの序列なんて気にしてる訳?くだらない」
「でもカードの序列で戦闘力の差は物凄いよ、うちのチームだとジャックのジェニファーさんが1番強いけど、戦闘訓練は総合力が大事になってくる、足を引っ張って悪いけど、この試合は勝ち目がないよ」
シルエイトの台詞を聞いて、ジェニファーは彼を小突く
「しっかりしなさいよ、数字はあくまで数字、生まれた時に判定されただけの、指標に過ぎないわ」
ジェニファーの言葉に、キュウチーが物申す
「ジェニファー、君は分かってないね、生まれた時に決められたこの数字が、僕たちの知能や運動能力を決め、将来活躍できる場所を決めるんだ、この数字が簡単に覆らない事はシルバニアのビッグデータが証明しているんだよ」
「あんた達、それで良いの?」
「良いも悪いもないよ、これはシンプルに実力の話さ、この中で1番数字の大きい君なら、ちゃんと理解できてるはずだよ」
「貴方の理論で言うなら、この中で1番数字の大きい私が言ってるんだから、数字はあくまで指標って言う、私の意見を尊重しなさいよ、もしかしてキュウチーってバカなの?」
「君よりはバカかもしれない、ただこの統計は正しいんだよ、この統計を取ったのはジェニファー、君よりも賢い、Aの統計学者なんだ、統計学者の出した大富豪理論に基づいてる、つまり人形は生まれた瞬間から、その強さ、賢さをある程度決められているのさ」
言い争いをしているジェニファーとキュウチーの間に、ロクレンが割って入る
「まぁ二人とも落ち着きなよ、今から一緒に戦う仲間なんだ、仲間割れなんて、バカのやる事でしょ?」
「はぁ?バカって言う方が、バカなんですけど?」
ジェニファーが反論し、キュウチーもそれに続く
「そうだよ、ロクレン、君は馬鹿なんだから引っ込んでなよ」
「前のテストは僕の方がキュウチーより高かったじゃないか」
「あれは、僕がちょっとサボってたから、地頭は絶対に僕の方が上だし!」
言い争いをする3人を止めようと、サバキュウが口を開く
「みんな先生に言いつけるよ?」
サバキュウは小柄な女性型ドールで、腰元まで伸びた髪は薄い紫色だ
瞳の色は黄色で、優しそうな眼をしている
先生と言う単語を聞いて、キュウチーとロクレンの表情が強張る
二人にとって先生はなによりも恐ろしい存在であった
二人と違い、ジェニファーはサバキュウの言葉に過剰な反応を見せる
「先生に言いつけるですって?やってみなさいよ?ほら!早く!あんたみたいに権威を振りかざすタイプが、私は1番嫌いななのよ」
ジェニファーは前の学園で、先生に楯突いた事により、問題児認定を受けていた
その先生は若くして、教師になった男性型ドールで
「学園に通う生徒に、如何わしい事を強要する」と、密かに噂されている、人形人であった
彼は放課後、女性型ドールを、補習と言う名目で教室に拘束し、誰もいないタイミングに悪事を行なう
ジェニファーは最初「どうせロクでもない奴が、面白半分で流した噂でしょ」と、噂の事を信じていなかった
しかし、その先生に補習を言い渡され、自身が被害を受けそうになったジェニファーは先生に向かって銃を発砲し、学園側から問題児として認定されてしまった
その事で、学園側にクレームを入れたジェニファーだったが、先生は一切の証拠を残していなかった為、「ジェニファーには虚言癖がある」と、先生達や生徒から非難の的になっていた
複数居たと推測される、被害者の女性型ドール達は、一切声をあげる事はなく、味方がいない状況に耐えかねたジェニファーは、アスチルーベ学園への転校を余儀なくされた
そんな事があったからか、先程のサバキュウの言葉に、ジェニファーは強い苛立ちを感じていた
怒り狂う彼女に、サバキュウは言い返せず、涙目になってしまう
それを見ていたシルエイトが、ジェニファーを宥める
「まぁまぁ、落ち着きなよ、とりあえず自信もあるみたいだし、このチームの指揮はジェニファーに任せよう、それで良いだろ?みんな」
シルエイトの言葉に、ロクレン、キュウチー、サバキュウが無言で頷く
ジェニファーはアウェーな空気に、面倒臭さを感じていたが、これ以上言っても平行線だと理解して、チームに喝を入れた
「やるからには勝つわ、私の指示に従いなさい」
16月14日
9時00分
シルバニア国北東部
フィナーレ・ルチア
アスチルーベ学園
ミドルスクール3年Bクラスの教室には今日も静かな空気が流れている
教壇の前で赤髪の教師、アダム・ブラウンが生徒達の出欠確認を行う
生徒達はいつも通り、声を張り上げて、学生番号と名前を叫んでいた
アスチルーベ学園のいつもの光景、いつもの朝が、いつも通り始まろうとしている
しかし、今日は少しだけ、いつもと違う出来事があった
出欠確認を終えた先生が「今日は転校生が来ている、今から連れて来る」と言って教室から出て行ったのだ
先生が退出してから、しばらくの間、教室は転校生の話題で持ちきりになる
「どんな奴が来るのか?」「見た目は?」「性格は?」「カードの階級は?」と、生徒達は好き勝手に想像を膨らませていた
ミドルスクール3年Bクラスの生徒達は基本的には平和主義者であり、この学園に存在するクラスの中では1番の善良なクラスであった
生徒達はみんな、それぞれに好きな事があり、それに夢中になっているから、クラスで大きい争いが起こる事は少なく、みんなで助け合いながら、学園生活を謳歌している
アスチルーベ学園では6年間クラス替えが行われる事はなく、基本的に留年、編入、転校などがない限り、顔ぶれが変わる事はない
そんなクラスに新しい生徒が加わるとなれば、生徒達も色めき立つのは自然の流れであった
騒いでるBクラスの扉が開け放たれると、辺りは一気に先程の静寂を取り戻す
アダム先生は一人の女性型ドールを連れて、教室の中に入って来ると、生徒達に告げた
「彼女が転校生だ、みんな仲良くするように」
彼女は眼の下にある隈を少しだけ擦ると、生徒達に向かって短く自己紹介をした
「ジェニファー・ローレンスです、よろしくお願いします」
彼女の姿を見て、生徒達は困惑していた
こんな時期に転校生がやって来るから皆、華やかで元気のある子かミステリアスで掴みどころがない静かな子が入って来るものだと予想していた
何故そのような予想がなされたのか
答えは単純で、Bクラスでは空想本が流行っているからである
空想本とは、人形人が己の知識と知恵を絞り作り上げる、物語形式の本の事である
Bクラスで人気の高い、空想本のお決まりパターンとして、変なタイミングで転校してくる生徒は華やかで活発なタイプか、華やかではないがミステリアスなタイプの人形と相場が決まっていた
その固定観念をBクラスの生徒は皆、共通のものとして持ち合わせている
彼女の声は怒気を孕んでおり、活発なタイプと取れなくもない
しかし、眼の下の隈が表現しているのは、やはり活発なキャラクターではなく、ミステリアス系のキャラクターだろう
彼女は見た目と性質に、少しだけギャップがあるのだ
生徒達はジェニファーがどんなキャラクターなのか掴めずに、困惑の表情を浮かべていた
先生は生徒達がそんな事を考えているとは知らず、ジェニファーに窓際の席を与える
窓際の席は空想本でお決まりの席で、8割の生徒は席のチョイスに納得し、頷いていた
ジェニファーが席に着くと、隣の席の男性型ドールが彼女に声をかける
「僕はロクレン・スミスだ、よろしくなジェニファー」
ロクレンは短髪で黒髪の男性型ドールで、瞳の色は黄色だ
身長はジェニファーより少しだけ大きい
「よろしく」
ジェニファーは短く返事をした
アダム先生は生徒達に向かって言う
「今日はお昼時間までぶっ続けで戦闘訓練の授業を行う、9時50分までに戦闘倉庫に集合するように、ジェニファーは今日来たばかりだから、隣に居るロクレンに流れを教わってくれ、眠気が酷い奴は先生がビンタしてやるから申し出るように、それでは準備を始めてくれ」
先生の言葉を聞いて生徒達は戦闘訓練の準備に取り掛かる
ロクレンはジェニファーに流れを教える為に、喋り始めた
「ジェニファーは前の学園で戦闘訓練を受けた事はあるかな?」
「一応、前の学園にもあったわ、ただ学園毎に流れも違うだろうし、説明してくれると助かるわ」
素直なジェニファーの反応に、ロクレンは嬉しそうに微笑んでから言った
「分かった、それじゃあ説明するね、まず戦闘倉庫に行こうか」
ロクレンの誘導で戦闘倉庫に向かって歩き出す
「ジェニファーは、陽キャなのか陰キャなのか分かりにくいね?」
「なにそれ」
ロクレンの台詞に、ジェニファーは首を傾げる
「その人形の持つ固有のキャラクター性さ、陰キャは暗いキャラクターで、ミステリアスなキャラクター、陽キャは明るくてクラスの中心になるようなキャラクターの事だよ、ジェニファーは空想本はあまり読まないタイプ?」
「読まないわね」
「そうなんだ、空想本が好きであれば説明は簡単だったんだけど」
「用語の細かい用途はあまり分からないけど、要は明るい性格と暗い性格って事?」
「そうそう、単純に言えばそんな感じだね、ジェニファーは見た目的には陰キャだけど、性格は活発と言うか、凄く攻撃的な感じがあると言うか」
「なんだか凄く失礼な事言ってない?と言うか記号に当て嵌めないで貰える?私は陰キャでも陽キャでもなくジェニファー・ローレンスよ、人形だったら誰しも、暗い時もあれば、明るい時もあるでしょ、もしかしてロクレンってバカなの?」
「いや、まぁそうなんだけどね、ベースとしての話さ、あそこが戦闘倉庫だ」
この話題を続けると面倒だと判断したロクレンは、戦闘倉庫を指差した
戦闘倉庫は文字通り、戦闘を行う為の大きな建物である
外観は緑色をしており、大きな白い文字で斜め書きされた「死亡厳禁」の文字が特徴的である
ジェニファーはその文字を見て「なかなかユーモアがあるわね」と満足そうに頷いていた
9時40分
戦闘倉庫の中に入ると温度が急激に上昇する
戦闘倉庫は必要最低限の場所以外は密閉されており、太陽が強い季節であればある程、内部は高温になっていく
「戦闘の場には冷房装置など不要」と言うのが学園側の見解なのだが、生徒達からは多数の不満があがっていた
「暑いわね」ジェニファーの呟きに、ロクレンは苦笑いしながら言った
「寒い時期以外はこんな感じだよ、一応学園側から無制限で水が支給されてるから、補給ポイントに行けば水分補給は出来るけど、生ぬるいし、汚い水を使ってるのか味はあんまり良くないけどね」
武器保管庫に入った二人は、訓練用のハンドガンを一丁手にする
「武器は基本的にこの、訓練用のハンドガンを使うんだ、あとそこにある防弾布を服の中に巻いて、無線通信機もあるから」
「なんと言うか、過保護ね」
「まぁ学園側も責任を取りたくないんだろうさ、ここまでしてて怪我をするようならそれは学園側の責任じゃなくて、個人の責任ですよってね」
「ふーん、と言うかこの防弾布、臭いやばいわね…」
鼻を摘みながら言うジェニファーに、ロクレンが笑いながら言った
「この暑さなら仕方ないよ、一応洗われてはいるはずだから我慢してね」
ジェニファーは我慢しつつ、防弾布を自身の体に巻いた
9時50分
戦闘倉庫に84名の生徒が集まっていた
先生は生徒達に向かって喋り始める
「それでは今からチーム編成を発表する、今回はAクラスとBクラスで戦闘訓練を行ってもらう、今日は16チームだ、1チーム5名編成で、余った4名には見学してもらう」
先生が編成を発表して行く
ジェニファーとロクレンは一緒のチームになり、他にもシルエイト・フォスター、キュウチー・パーカー、サバキュウ・フィッシャーが仲間に選ばれていた
「それではこれより、戦闘訓練を行う、今回はA班からP班までの合計16チームで争ってもらうぞ、戦闘開始時刻は10時00分から12時00分までの120分だ、バトルのルールはタイムウォーズ形式で行くぞ」
先生の言葉を生徒達は真面目に聞いている
先生はジェニファーの為に説明を始めた
「今日は新しい生徒も居るから、タイムウォーズについて軽く説明するぞ、タイムウォーズとは、文字通り、時間を争う戦闘訓練だ、生徒一人一人には、持ち時間30分が与えられる、その時間がなくなってしまった者は脱落だ、時間を増やすには、与えられた訓練用ハンドガンで、他の生徒に弾丸を当てなければいけない」
先生の説明を、ジェニファーは、しっかりと聞いていた
「当てられた生徒は失格、弾丸を見事に命中させた生徒には、30分の時間が加算される、全てのチームを全滅させたら、その班の勝利だ、各班にはリアルタイムで動く生存確認端末も与える、この端末にはどんな奴が居て、現在どのぐらいの時間を所持しているのかが、表示される、少しでも戦闘の参考にしてくれ」
先生は説明を終えると、班のスタート位置を決めてから、生徒達を所定の場所に誘導した
9時55分
キュウチーが編成を見て呟く
「合計が43か、これは負けたな…」
キュウチーは短い茶髪で、緑色の瞳をした男性型ドールだ
キュウチーの台詞に続いてシルエイトが言った
「キングが二人、クイーンが一人、10が二人で58のチームもあるね、今回のバトルで勝つのはこのチームかな」
シルエイトは黄緑色の髪をした、瞳が紫色の男性型ドールだ
髪の毛は長く、腰元まで伸びている
二人のやり取りを聞いていたジェニファーが、口を挟む
「あんた達、カードの序列なんて気にしてる訳?くだらない」
「でもカードの序列で戦闘力の差は物凄いよ、うちのチームだとジャックのジェニファーさんが1番強いけど、戦闘訓練は総合力が大事になってくる、足を引っ張って悪いけど、この試合は勝ち目がないよ」
シルエイトの台詞を聞いて、ジェニファーは彼を小突く
「しっかりしなさいよ、数字はあくまで数字、生まれた時に判定されただけの、指標に過ぎないわ」
ジェニファーの言葉に、キュウチーが物申す
「ジェニファー、君は分かってないね、生まれた時に決められたこの数字が、僕たちの知能や運動能力を決め、将来活躍できる場所を決めるんだ、この数字が簡単に覆らない事はシルバニアのビッグデータが証明しているんだよ」
「あんた達、それで良いの?」
「良いも悪いもないよ、これはシンプルに実力の話さ、この中で1番数字の大きい君なら、ちゃんと理解できてるはずだよ」
「貴方の理論で言うなら、この中で1番数字の大きい私が言ってるんだから、数字はあくまで指標って言う、私の意見を尊重しなさいよ、もしかしてキュウチーってバカなの?」
「君よりはバカかもしれない、ただこの統計は正しいんだよ、この統計を取ったのはジェニファー、君よりも賢い、Aの統計学者なんだ、統計学者の出した大富豪理論に基づいてる、つまり人形は生まれた瞬間から、その強さ、賢さをある程度決められているのさ」
言い争いをしているジェニファーとキュウチーの間に、ロクレンが割って入る
「まぁ二人とも落ち着きなよ、今から一緒に戦う仲間なんだ、仲間割れなんて、バカのやる事でしょ?」
「はぁ?バカって言う方が、バカなんですけど?」
ジェニファーが反論し、キュウチーもそれに続く
「そうだよ、ロクレン、君は馬鹿なんだから引っ込んでなよ」
「前のテストは僕の方がキュウチーより高かったじゃないか」
「あれは、僕がちょっとサボってたから、地頭は絶対に僕の方が上だし!」
言い争いをする3人を止めようと、サバキュウが口を開く
「みんな先生に言いつけるよ?」
サバキュウは小柄な女性型ドールで、腰元まで伸びた髪は薄い紫色だ
瞳の色は黄色で、優しそうな眼をしている
先生と言う単語を聞いて、キュウチーとロクレンの表情が強張る
二人にとって先生はなによりも恐ろしい存在であった
二人と違い、ジェニファーはサバキュウの言葉に過剰な反応を見せる
「先生に言いつけるですって?やってみなさいよ?ほら!早く!あんたみたいに権威を振りかざすタイプが、私は1番嫌いななのよ」
ジェニファーは前の学園で、先生に楯突いた事により、問題児認定を受けていた
その先生は若くして、教師になった男性型ドールで
「学園に通う生徒に、如何わしい事を強要する」と、密かに噂されている、人形人であった
彼は放課後、女性型ドールを、補習と言う名目で教室に拘束し、誰もいないタイミングに悪事を行なう
ジェニファーは最初「どうせロクでもない奴が、面白半分で流した噂でしょ」と、噂の事を信じていなかった
しかし、その先生に補習を言い渡され、自身が被害を受けそうになったジェニファーは先生に向かって銃を発砲し、学園側から問題児として認定されてしまった
その事で、学園側にクレームを入れたジェニファーだったが、先生は一切の証拠を残していなかった為、「ジェニファーには虚言癖がある」と、先生達や生徒から非難の的になっていた
複数居たと推測される、被害者の女性型ドール達は、一切声をあげる事はなく、味方がいない状況に耐えかねたジェニファーは、アスチルーベ学園への転校を余儀なくされた
そんな事があったからか、先程のサバキュウの言葉に、ジェニファーは強い苛立ちを感じていた
怒り狂う彼女に、サバキュウは言い返せず、涙目になってしまう
それを見ていたシルエイトが、ジェニファーを宥める
「まぁまぁ、落ち着きなよ、とりあえず自信もあるみたいだし、このチームの指揮はジェニファーに任せよう、それで良いだろ?みんな」
シルエイトの言葉に、ロクレン、キュウチー、サバキュウが無言で頷く
ジェニファーはアウェーな空気に、面倒臭さを感じていたが、これ以上言っても平行線だと理解して、チームに喝を入れた
「やるからには勝つわ、私の指示に従いなさい」
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