面白い女〜不思議な溺愛物語〜

地野千塩

理解ある彼くん

 田中阿澄は、二回離婚を経験していた。どちらも、夫のモラハラ化が原因だった。今度こそ、モラハラなんてしない良い男と再婚したいと思い、各種婚活サービスを利用し、とある男性と出会った。

 上場会社のサラリーマンで、収入も顔も良い。性格もよく、阿澄の時間にルーズだったり、借りたものを返さなかったり、芸能人のゴシップで盛り上がるところも、「いいよ、いいよ。ありのままでいいよ」と理解してくれた。まさに理想の理解ある彼だったが、最近だんだんと様子がおかしかった。

「誰とデート代出してるんだよ!」

 ある日、二人でラブホテルに向かったが途中で少し大きめな地震があり、すっかりやる気が失せていたら、彼はぶつぶつと文句を言っていた。

 あれ?

 別れた旦那と同じ風にモラハラ化している?

 確かにあんな理想的な彼が、こうなるのは、何か自分に原因がありそうな気がしてきた。そういえば、別れた旦那も結婚する前は、優しくて理想的だった。

 確かに結婚は他人同士が支え合ってするものだ。「ありのままで良い」なんて言ってられない気がしてきた。

 とりあえず阿澄は、自分の欠点を書き出し、直せそうなところから、少しずつ直していった。時間にルーズなところなどは、自分の努力で治せる欠点だった。また、長時間スマートフォンで芸能人の動画を見るのをやめ、軽く運動したり、料理の勉強などもやってみた。

 すると、彼のモラハラ化も止まり、プロポーズもされた。阿澄がちょっと照れるぐらい溺愛されている。

 そうか。

 他のケースは知らないが、夫がモラハラ化してしまう件に限っては、自分が原因で引き寄せていたのだろう。他人は変わらないし、自分を変える方が早かった。

 理解ある彼よりを求めるよりも、ずっと早くて簡単だった。失敗を二回も繰り返し、ようやくわかった。こうして阿澄は、「理解ある彼」への幻想と決別出来た。

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