自然派ママの異世界事件簿

地野千塩

6

「異世界ドキドキワクワクカフェ」のヒロイン・宮崎若菜はどこにでもいる平凡な25歳のOLだった。

 ただ、料理が趣味でネットでレシピを公開し、時々バズっていたりもした。

 そんな若菜は、モコモコさんという妖精に異世界転移させられる。モコモコさんは悪戯好きで、気まぐれに若菜を選んだ。

 若菜はモコモコさんによってデビル町という西洋風の海辺の街につくが、不味い料理の数々に憤慨。日本食をデビル町の人に振る舞いながら、ついに日本食カフェ・囲炉裏をオープンさせる。カフェは連日客で賑わい、王都の騎士、隣国の王子、ハイスペ貴族から逆ハーレム状態になるという話だった。

 逆ハーレムになるのが納得出来るぐらい若菜は可愛らしく健気だった。異世界に行ってもへこたれず、健気に頑張っていた。

「ねえ、その若菜さんという人の評判はどうなの?」

 私達は海辺の道をひたすら歩きながら二人に聞いてみた。

 ボードワークといい、木でできた道だったので歩きづらくはないが、マージョリーは品よくゆっくりと歩いていた。自然とマージョリーに歩幅を合わせる為、私達もゆっくり歩く。
意外とブラッドリーは、マージョリーに歩幅を合わせ、急がせる事はなかった。時々私達に「疲れていないか?」と聞いてくる。ブラッドリーは根は悪い人物ではなさそうだった。

「ふん、俺はあんなカフェは嫌いだね。日本食なんて美味しくない」

 その印象をぶち壊すような事をブラッドリーはいう。

 そういえば「異世界ドキドキワクワクカフェ」の中の若菜のカフェは、隣町・カラメル町の人から不評だったと書いてある事を思い出す。

 ペラペラの日本語で「日本食なんて美味しくない」という台詞は、シュールすぎるが、深く突っ込むのはよしておこう。

「マージョリーさんはどうなの?若菜さんの印象って」

 マージョリーにも聞いてみる事にした。

「そうねぇ。一度行った事があるけれど、味噌汁っていうのは苦手だったわ」
「そんな……」

 私が味噌汁がだいすきだった。これ以上健康に良い食べ物はない。にがりをg原液で数滴いれるとさらに健康に良い。にがりの味もほとんどわからなくなるし、ミネラルも豊富にとれる。

 江戸時代や明治初期の人達は味噌汁や玄米、魚、糠漬けという食事だったが、それでもかなり体力があったらしい。こんな食事は健康にもメリットが高く、私も朝ごはんはいつも今作感じで、朝に一度もダルさを感じた事なく、毎日元気に出社していた。

「塩のおむすびなんかは美味しかったけど、味噌汁っていうのはどうも臭くてねぇ」
「マージョリーさん、味噌汁は健康に良いですよ!」

 私は力説するが、マージョリーは渋い顔のままだった。

「しつこいな、お前は。よその国の食文化にケチつけたり、自分の国のものをごり押しするなよ」

 ブラッドリーの言う事は正論で、私は押し黙ってしまった。

 海辺をチラリと見るとのんびりと釣りをしている人が何人かいた。空に浮かぶ鳥も黄色やピンクで派手だ。

 明らかに日本の都心とは違う風景だった。確かにここで日本食を薦めるのは、良い事ではないのかもそれない。

「この土地では何の料理があるんです?」
気を取り直して聞いてみた。この土地にも健康に良いものがあると思えば好奇心が高まる。
「まあ、ここの料理はあんまり美味しくはないのよね……」

 マージョリーは顔を顰めた。「異世界ドキドキワクワクカフェ」ではオリーブオイル漬けの変なスープや油まみれのサラダや甘い肉などが出てきて食べられたもんでは無いという描写があった。

「俺はなんでも食うぞ。特にオリーブオイルスープが好きだ」
「いやだ、ブラッドリー。あんな油ギトギトのスープとも言えない料理が好きだなんて」

 マージョリーは、さらに顔を顰める。

 どうやらブラッドリーは舌がバカのようだ。この土地の料理を気に入っているようだ。

「確かのここの土地の料理は期待しない方がいいわ。でも、エリカのゲストハウスは色々頑張っているみたい」
「マージョリーさん、エリカのゲストハウスってなんですか?」
「あそこにあるミントグリーンの屋根のゲストハウスだよ」
 
 ブラッドリーが指差した先には、海辺の二階建てのゲストハウスがあった。日本語で「エリカのゲストハウス」と看板がでていた。

 ミントグリーンの屋根が可愛らしい。そういえば「異世界ドキドキワクワクカフェ」では、夏になると避暑地として過ごしやすい場所と書いてあった。おそらく観光客もよく来るような場所なのだろう。海も綺麗だし、空気も良い。食べ物が不味いという以外は良いところなのかもしれない。

「あなたも後でエリカのゲストハウスに泊まればいいわ」
「でもお金ないですよ」

 マージョリーの提案には応えられない。確かこの国では日本円は使えないはずだった。「異世界ドキドキワクワクカフェ」の中にそんな描写があった。

「まあ、だったらうちに泊まりなさいよ」
「いいんですか?」
「母さん、勝手のやめろ」
「あら、いいじゃない。私も日本人と仲良くしたいわ」
「俺は嫌だね!」

 ブラッドリーはどうやら日本人があまり好きではないようだった。
結局結論が出ないまま、若菜のカフェ・囲炉裏についた。

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