自然派ママの異世界事件簿
5
涙をハンカチで拭き、顔を上げると初老の女性と、私と同じ歳ぐらいのアラフォー男性がいた。
アラフォー男性は日本人でも着ていそうなスーツ姿だったが、初老の女性はヒラヒラのドレス姿だった。ちょうど乙女ゲームの悪役令嬢が着ていそうなドレスを地味にしたような感じだった。背筋もピンとあり、どことなく風雅な態度だったので、老け込んだ様子はない。
一方、アラフォー男の方は顔は皺ができ、ちょっと渋い雰囲気だった。一部の女性からはウケそうな渋い雰囲気のイケメンだった。自分は全くタイプでは無いから興味はないが。
二人とも顔つきや体格は西洋人ふうだった。ホリが深く、目鼻も整っていた。肌の色も白い。二人とも髪の色が銀色で光に透けると、ほんの少しだけ透明感のあるピンク色にも見えるぐらいだった。
二人とも顔や髪の雰囲気がよく似ていて同じ遺伝子を感じさせた。おそらく親子だろう。
ただ、疑問なのはそんな事ではなく、何故日本語を話しいるのか?という点だった。
「あの、どちら様ですか?」
私の話た日本語も通じるようだ。
初老の女性はマージョリー、アラフォー男性はブラッドリーと名乗った。どう考えても英米の人名だが、カタカナ英語で日本語っぽい発音で自己紹介された。
「私は淡島柊と言います」
「まあ、柊さんっていうの。可愛いお名前ね」
マージョリーは見た目同様に上品に微笑んだ。一方ブラッドリーはブスッと不機嫌そうに腕を組んでいたが淡々と説明してくれた。
自分達は親子で、休暇に森にピクニックに来たという。そこで泣いている私にあって驚いたという。
「とりあえず町まで一緒に歩きません?話しながら事情を聞きましょうよ」
マージョリーが優しく微笑み、そうする事になった。
ゆっくりと森の中を歩きながら、私ば事情を一から説明した。
「これって異世界転移ってやつなんでしょうかね?」
冗談っぽく聞いたが、二人とも神妙そうに頷く。聞くと隣町でも似たような日本人女性がいるらしい。だから、マージョリーもブラッドリーも私に声をかけたそうだった。
「異世界転移だなんて…」
私は二人に聞こえないぐらいの小声で呟いてしまう。ほとんどうめき声だった。これだと本当にあの夢のようだ。
これが事実なら、この世界は息子が作ったネット小説「異世界ドキドキワクワクカフェ」の世界という可能性が高い。
「もしかしてその女性って宮崎若菜ちゃんっていう名前でしたか?」
「うん、そんな名前だったな」
ブラッドリーは不機嫌ながらも応えてくれた。
「若菜さんは、隣町で日本食のカフェをやってるのよね。私はあんまり行った事はないけれど、噂ではとっても美味しいんですって」
マージョリーの言葉に私肩を落としそうになる。
やっぱりこの世界は息子が作ったネット小説の世界のようだった。
確かルンルン王国という中世ヨーロッパ風の異世界で、食文化が悲惨な設定だった。乙女ゲームの悪役令嬢になるネット小説が人気のようだが、道理でマージョリーの服装はそれっぽうわけだ。
日本語を話している理由も想像がつく。作者が日本人なのだから、キャラクターの中身や言語が日本人というのは当然かも知れない。実際、マージョリーやブラッドリーはちょっと日本人くさい。私は職場で外国人のお客様と接する機会も多かったが、彼らと比べてマージョリーもブラッドリーもシャイで謙虚そうに見えた。一緒に歩いていても、あまり違和感がない。もっとも外見は、どう見ても西洋人風だったが。
「ところで私は帰れるんでしょうか。その若菜さんは、どうしてるんですか?」
あまり聞くたくない質問で、話しながらまた泣けてくる。自分の事より息子の事がやっぱり心配だった。
そもそも何で息子の小説の世界にいるのだろう。自分がこの世界にいる理由は息子がカギを握っていると言って良いが、確かめる術はない。
「残念だが、帰る方法はない」
ブラッドリーの言葉にまた泣けてくる。
厳しい人のようだ。
言ってる事は事実だと思うが、もう少しオブラートが欲しいというか。勝手な印象で悪いが、ブラッドリーの事はあまり好きになれない。なんとなく学校の先生のような厳しさが滲む男だった。
「そんなぁ……」
「ま、柊さん。泣かないでよ。若菜さんはカフェを運営して軌道に乗っているみたい。そうだわ、これから若菜さんのカフェに行ってみましょうよ。何かわかるかも?」
マージョリーに励まされ、私の涙は止まった。
同時に森の出口まで辿り着き、目の前には大きな海が広がっていた。
優しい潮の香りを感じながら、マージョリーの提案に頷いた。
「勝手にしろ」
ブラッドリーは何故だがずっと不機嫌で、吐き捨てるように言っていたが、若菜さんのカフェまで一緒に着いてきてくれるという。
こうしてマージョリー、ブラッドリー、私の三人で「異世界ドキドキワクワクカフェ」のヒロインが経営するカフェに向かった。
アラフォー男性は日本人でも着ていそうなスーツ姿だったが、初老の女性はヒラヒラのドレス姿だった。ちょうど乙女ゲームの悪役令嬢が着ていそうなドレスを地味にしたような感じだった。背筋もピンとあり、どことなく風雅な態度だったので、老け込んだ様子はない。
一方、アラフォー男の方は顔は皺ができ、ちょっと渋い雰囲気だった。一部の女性からはウケそうな渋い雰囲気のイケメンだった。自分は全くタイプでは無いから興味はないが。
二人とも顔つきや体格は西洋人ふうだった。ホリが深く、目鼻も整っていた。肌の色も白い。二人とも髪の色が銀色で光に透けると、ほんの少しだけ透明感のあるピンク色にも見えるぐらいだった。
二人とも顔や髪の雰囲気がよく似ていて同じ遺伝子を感じさせた。おそらく親子だろう。
ただ、疑問なのはそんな事ではなく、何故日本語を話しいるのか?という点だった。
「あの、どちら様ですか?」
私の話た日本語も通じるようだ。
初老の女性はマージョリー、アラフォー男性はブラッドリーと名乗った。どう考えても英米の人名だが、カタカナ英語で日本語っぽい発音で自己紹介された。
「私は淡島柊と言います」
「まあ、柊さんっていうの。可愛いお名前ね」
マージョリーは見た目同様に上品に微笑んだ。一方ブラッドリーはブスッと不機嫌そうに腕を組んでいたが淡々と説明してくれた。
自分達は親子で、休暇に森にピクニックに来たという。そこで泣いている私にあって驚いたという。
「とりあえず町まで一緒に歩きません?話しながら事情を聞きましょうよ」
マージョリーが優しく微笑み、そうする事になった。
ゆっくりと森の中を歩きながら、私ば事情を一から説明した。
「これって異世界転移ってやつなんでしょうかね?」
冗談っぽく聞いたが、二人とも神妙そうに頷く。聞くと隣町でも似たような日本人女性がいるらしい。だから、マージョリーもブラッドリーも私に声をかけたそうだった。
「異世界転移だなんて…」
私は二人に聞こえないぐらいの小声で呟いてしまう。ほとんどうめき声だった。これだと本当にあの夢のようだ。
これが事実なら、この世界は息子が作ったネット小説「異世界ドキドキワクワクカフェ」の世界という可能性が高い。
「もしかしてその女性って宮崎若菜ちゃんっていう名前でしたか?」
「うん、そんな名前だったな」
ブラッドリーは不機嫌ながらも応えてくれた。
「若菜さんは、隣町で日本食のカフェをやってるのよね。私はあんまり行った事はないけれど、噂ではとっても美味しいんですって」
マージョリーの言葉に私肩を落としそうになる。
やっぱりこの世界は息子が作ったネット小説の世界のようだった。
確かルンルン王国という中世ヨーロッパ風の異世界で、食文化が悲惨な設定だった。乙女ゲームの悪役令嬢になるネット小説が人気のようだが、道理でマージョリーの服装はそれっぽうわけだ。
日本語を話している理由も想像がつく。作者が日本人なのだから、キャラクターの中身や言語が日本人というのは当然かも知れない。実際、マージョリーやブラッドリーはちょっと日本人くさい。私は職場で外国人のお客様と接する機会も多かったが、彼らと比べてマージョリーもブラッドリーもシャイで謙虚そうに見えた。一緒に歩いていても、あまり違和感がない。もっとも外見は、どう見ても西洋人風だったが。
「ところで私は帰れるんでしょうか。その若菜さんは、どうしてるんですか?」
あまり聞くたくない質問で、話しながらまた泣けてくる。自分の事より息子の事がやっぱり心配だった。
そもそも何で息子の小説の世界にいるのだろう。自分がこの世界にいる理由は息子がカギを握っていると言って良いが、確かめる術はない。
「残念だが、帰る方法はない」
ブラッドリーの言葉にまた泣けてくる。
厳しい人のようだ。
言ってる事は事実だと思うが、もう少しオブラートが欲しいというか。勝手な印象で悪いが、ブラッドリーの事はあまり好きになれない。なんとなく学校の先生のような厳しさが滲む男だった。
「そんなぁ……」
「ま、柊さん。泣かないでよ。若菜さんはカフェを運営して軌道に乗っているみたい。そうだわ、これから若菜さんのカフェに行ってみましょうよ。何かわかるかも?」
マージョリーに励まされ、私の涙は止まった。
同時に森の出口まで辿り着き、目の前には大きな海が広がっていた。
優しい潮の香りを感じながら、マージョリーの提案に頷いた。
「勝手にしろ」
ブラッドリーは何故だがずっと不機嫌で、吐き捨てるように言っていたが、若菜さんのカフェまで一緒に着いてきてくれるという。
こうしてマージョリー、ブラッドリー、私の三人で「異世界ドキドキワクワクカフェ」のヒロインが経営するカフェに向かった。
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