海の民の乙女 ─王妃になりそこなった少女─
第52話 初めての恋
最後の祝砲を撃ち終わると、船団は一路、東の大陸を目指して進路を取った。梨華はひとり甲板で遠ざかるガンディア国を眺めていた。
「王妃になりそこなったな、梨華」
隣に母が立ち、苦笑まじりに語りかけてくる。
「このままガンディアに残ってもよかったのに」
梨華は、まさか、とわざと明るく肩をすくめてみせた。
「だいたいあたしに王妃なんて務まると思う?」
「まあ……確かにあまり向いていない気もするが……」
前髪をかき上げ、言葉を濁す母に愉快そうに笑う。
「そうでしょ。おとなしく宮廷でじっとしているなんて絶対に無理。それにあたしは将来は水軍の長になるんだもの」
「言っておくが、母は当分隠居などせぬぞ」
もちろんよ、と梨華は尊敬の念をこめて答えやる。
「あたしじゃまだ全然母さまのようにはいかないわ。もっと経験を積まないと」
王宮の軍隊を追い返した時、母の手腕につくづく感服したものだ。刃も交えず、誰ひとり傷つけることなく得た勝利。荒事だけが力ではないと改めて思い知った。
「ねえ、母さま」
「何だ?」
「母さまが最初に好きになったのって父さま? それとも別の人?」
唐突な質問に母が眼を丸くする。
「いったいどうした?」
梨華は水平線に視線を投げたまま、
「最初はわからなかったけれど、今は思うの。ああ、これが恋だったんだって。相手のことを想うと、切なくて胸がいっぱいになるのね」
勝気な少女が知った、初めての恋。
「王妃になりそこなったな、梨華」
隣に母が立ち、苦笑まじりに語りかけてくる。
「このままガンディアに残ってもよかったのに」
梨華は、まさか、とわざと明るく肩をすくめてみせた。
「だいたいあたしに王妃なんて務まると思う?」
「まあ……確かにあまり向いていない気もするが……」
前髪をかき上げ、言葉を濁す母に愉快そうに笑う。
「そうでしょ。おとなしく宮廷でじっとしているなんて絶対に無理。それにあたしは将来は水軍の長になるんだもの」
「言っておくが、母は当分隠居などせぬぞ」
もちろんよ、と梨華は尊敬の念をこめて答えやる。
「あたしじゃまだ全然母さまのようにはいかないわ。もっと経験を積まないと」
王宮の軍隊を追い返した時、母の手腕につくづく感服したものだ。刃も交えず、誰ひとり傷つけることなく得た勝利。荒事だけが力ではないと改めて思い知った。
「ねえ、母さま」
「何だ?」
「母さまが最初に好きになったのって父さま? それとも別の人?」
唐突な質問に母が眼を丸くする。
「いったいどうした?」
梨華は水平線に視線を投げたまま、
「最初はわからなかったけれど、今は思うの。ああ、これが恋だったんだって。相手のことを想うと、切なくて胸がいっぱいになるのね」
勝気な少女が知った、初めての恋。
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