海の民の乙女 ─王妃になりそこなった少女─
第四章 真相 第38話 女装3人組
騒動から一夜明けて。朝靄の中、船を降りる三人の娘の姿があった。
娘たちはそれぞれに華やかなドレスをまとい、大きな羽飾りのついた帽子をかぶっている。いかにもこれから街に買い物に出かけようという、お洒落な風情だ。
が、注意して見れば、その表情は硬く、買い物などという楽し気なものではない。
「なぜわたしがこのような格好を……」
渡し板を降りながら、真ん中を歩いていた娘がぼそりとつぶやいた。輝く長い金髪に瞳と同じ色の青いドレスにはリボン飾りがたくさんつけられている。
先頭を歩いていた淡いピンクのドレスを着た娘が振り返り、
「文句言わないの。この船は王宮の兵に見張られているんだから、仕方ないじゃない。おかげであたしまでこんな動きにくいひらひらのドレスなんて着てるんだからね」
「よくお似合いですよ」
突然褒められ、娘の頬が薔薇色に染まる。
「何言ってるのよ。こんな邪魔っけなスカートなんてはいていたら、いざという時、蹴りもできやしない」
最後を歩く紫の上品なドレスを着た娘が、ごほん、と咳払い。
「二人ともいちゃついてる場合じゃないだろ……じゃなくて、ないでしょ」
「だっ、誰もいちゃついてなんて……」
今度はピンクのドレスの娘は耳たぶまで赤くなる。
実はこの三人組は梨華、リシャール、勇利の女装なのだ。梨華は別として、他の二人の長い髪はもちろん鬘《かつら》である。
娘たちはそれぞれに華やかなドレスをまとい、大きな羽飾りのついた帽子をかぶっている。いかにもこれから街に買い物に出かけようという、お洒落な風情だ。
が、注意して見れば、その表情は硬く、買い物などという楽し気なものではない。
「なぜわたしがこのような格好を……」
渡し板を降りながら、真ん中を歩いていた娘がぼそりとつぶやいた。輝く長い金髪に瞳と同じ色の青いドレスにはリボン飾りがたくさんつけられている。
先頭を歩いていた淡いピンクのドレスを着た娘が振り返り、
「文句言わないの。この船は王宮の兵に見張られているんだから、仕方ないじゃない。おかげであたしまでこんな動きにくいひらひらのドレスなんて着てるんだからね」
「よくお似合いですよ」
突然褒められ、娘の頬が薔薇色に染まる。
「何言ってるのよ。こんな邪魔っけなスカートなんてはいていたら、いざという時、蹴りもできやしない」
最後を歩く紫の上品なドレスを着た娘が、ごほん、と咳払い。
「二人ともいちゃついてる場合じゃないだろ……じゃなくて、ないでしょ」
「だっ、誰もいちゃついてなんて……」
今度はピンクのドレスの娘は耳たぶまで赤くなる。
実はこの三人組は梨華、リシャール、勇利の女装なのだ。梨華は別として、他の二人の長い髪はもちろん鬘《かつら》である。
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