離婚したので冒険者に復帰しようと思います。
12
「──おっそい! なにやってたんだよ 」
冒険者組合に着いた早々に、ライラはイルシアに文句を言われてしまった。
「あら、約束した時間には間に合っているからいいでしょ」
ライラは怒りの感情を高ぶらせているイルシアを前にしても、落ち着き払っていた。ロビーの壁にかけられた時計をゆっくりと見上げながら、のんきに返事をする。
約束した時間は十時だ。時計の針は、現在十時一分を指している。
「間に合ってねえんだよ! 見てみろ、一分過ぎてるだろ」
「そんなことはないわ。私がロビーに着いたときには十時だった。……たぶんね」
ライラの返答に、イルシアはぎゃあぎゃあとわめき立てる。
そんなイルシアを放置して、ライラはファルに声をかけた。
「おはようファルちゃん。今日もよろしくね」
「はい、よろしくお願いします!」
ファルが敬礼をしながら笑って答える。
ライラはファルと連れ立って冒険者組合のロビーをさっさと出て行く。
「……あ、おい待てって! おいていくなよな」
まだ文句を言っていたイルシアが、ふてくされながら慌ててついてくる。
「そうだファルちゃん。今日の依頼が終わったあとでいいのだけど、防具の調整をお願いできるかしら?」
「はい、もちろんです。何か気になることがありますか?」
ライラは腰回りに手をあてながら身体を動かしてファルに訴えかける。
「なんだか全体的にきつくなってきちゃったのよ。ほら、最初に詰めてもらったじゃない? 元に戻して欲しいなって」
「了解です。最近のライラさんは元気になってきて、私はすごく嬉しいです」
「ああ、ライラって太ったよな」
イルシアがライラの姿をじろじろと眺めながらそう言ったので、ファルは持っている杖で彼の頭を叩きつけた。
「言い方が悪いよ! なんでイルっていつもそうなのかな」
「そうっすよイルシア君。姉さんは健康的になっただけっすからね。最近は顔色も良いし美しさに磨きがかかりました。それになにより、肉付きのせいか色気まで出てきて最高じゃないですか!」
憤慨しているファルに加勢するように、ひとりの男が姿を現した。
「あらま、ハチ君じゃない。こんなところでどうしたの?」
ライラは内心の腹立たしさを隠しながら、八番の男の額を強めにつつきながら問いかける。
「だからハチじゃないっす! 痛い、痛いです。……え、えっと、今朝マスターに頼まれたんですよ。今日は姉さんたちを手伝えって」
八番の男はライラの対応にはすっかり慣れたもので、額をつつかれてもへらへらと笑っている。
彼はライラが「ハチ君」と呼び続けた結果、すっかり皆からハチと呼ばれるようになっていた。
そんなハチの後ろには、ライラと一緒に冒険者登録試験に合格した同期の冒険者たちが三名ほどいる。
その姿を見て、ライラは誰にも聞こえないような小さな声でマスターに悪態をついた。
「……あいつ、私に子守りを押し付けたわね」
冒険者組合に着いた早々に、ライラはイルシアに文句を言われてしまった。
「あら、約束した時間には間に合っているからいいでしょ」
ライラは怒りの感情を高ぶらせているイルシアを前にしても、落ち着き払っていた。ロビーの壁にかけられた時計をゆっくりと見上げながら、のんきに返事をする。
約束した時間は十時だ。時計の針は、現在十時一分を指している。
「間に合ってねえんだよ! 見てみろ、一分過ぎてるだろ」
「そんなことはないわ。私がロビーに着いたときには十時だった。……たぶんね」
ライラの返答に、イルシアはぎゃあぎゃあとわめき立てる。
そんなイルシアを放置して、ライラはファルに声をかけた。
「おはようファルちゃん。今日もよろしくね」
「はい、よろしくお願いします!」
ファルが敬礼をしながら笑って答える。
ライラはファルと連れ立って冒険者組合のロビーをさっさと出て行く。
「……あ、おい待てって! おいていくなよな」
まだ文句を言っていたイルシアが、ふてくされながら慌ててついてくる。
「そうだファルちゃん。今日の依頼が終わったあとでいいのだけど、防具の調整をお願いできるかしら?」
「はい、もちろんです。何か気になることがありますか?」
ライラは腰回りに手をあてながら身体を動かしてファルに訴えかける。
「なんだか全体的にきつくなってきちゃったのよ。ほら、最初に詰めてもらったじゃない? 元に戻して欲しいなって」
「了解です。最近のライラさんは元気になってきて、私はすごく嬉しいです」
「ああ、ライラって太ったよな」
イルシアがライラの姿をじろじろと眺めながらそう言ったので、ファルは持っている杖で彼の頭を叩きつけた。
「言い方が悪いよ! なんでイルっていつもそうなのかな」
「そうっすよイルシア君。姉さんは健康的になっただけっすからね。最近は顔色も良いし美しさに磨きがかかりました。それになにより、肉付きのせいか色気まで出てきて最高じゃないですか!」
憤慨しているファルに加勢するように、ひとりの男が姿を現した。
「あらま、ハチ君じゃない。こんなところでどうしたの?」
ライラは内心の腹立たしさを隠しながら、八番の男の額を強めにつつきながら問いかける。
「だからハチじゃないっす! 痛い、痛いです。……え、えっと、今朝マスターに頼まれたんですよ。今日は姉さんたちを手伝えって」
八番の男はライラの対応にはすっかり慣れたもので、額をつつかれてもへらへらと笑っている。
彼はライラが「ハチ君」と呼び続けた結果、すっかり皆からハチと呼ばれるようになっていた。
そんなハチの後ろには、ライラと一緒に冒険者登録試験に合格した同期の冒険者たちが三名ほどいる。
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