離婚したので冒険者に復帰しようと思います。
3
「しかし、アンタねえ。今さらプレートなんて持ち込まれちゃ困るよ。プレートからカードへの移行期間はとっくに終わっているんだ」
心底迷惑そうに言われて、ライラは驚きつつも申し訳ない気持ちになる。
冒険者として活動を止めたあとは、貴族としての新しい生活に慣れるのに精一杯だった。組合からの知らせなど気にも留めていなかった。いや、そもそも連絡が来ていたかすら覚えてはいない。
ちゃんと確認をしておけばよかった。しかし、それを今さら後悔しても仕方ない。
冒険者としての活動を再開し、生計を立てたいと考えている今は、ライラに落ちこんでいる時間はないのだ。
ライラは頭を振って気持ちを切り替えると、男性職員に質問をした。
「それは申し訳ないわ。移行をしなければいけなかったなんて知らなかったの。できていない場合はどうなるのかしら?」
「──はあ? あんなに告知してあっただろう。期間内に移行してしなければ登録抹消だよ」
男性職員の馬鹿にするように吐き捨てた言葉に、ライラは返す言葉に詰まる。
「まったく! 自分の不手際で登録抹消されたっていうのに、こうやってごねる奴が多くて困るよ。冒険者をしたいというなら、つねに最新の情報には注意をはらっていてもらわなきゃな」
ライラが返事をしないでいると、男性職員は一方的に捲し立ててくる。
ライラは五年もの期間を冒険者として活動していなかった。
つまり、その間に何一つ冒険者組合に貢献していないということなのだから、登録が消されていても仕方がないとは思っていた。
しかし、ここまで露骨に敬遠されるとは想定外だった。
「……本当にごめんなさいね。じゃあ、冒険者としてこれからまた活動したい場合は再登録ということになるのかしら?」
「はあ 再登録ってアンタが? 冗談だろう」
気を取りなおして笑顔で尋ねたライラに、男性職員は馬鹿にするように鼻で笑った。
その声が少しばかり大きかったので、何か揉め事かとライラのいる受付周辺が静かになった。
男性職員とライラに挟まれた位置にいる受付嬢が、口元に手を当てて顔を青くしている。
「冗談じゃないのよ。移行に気が付かなかったのは私の落ち度だし、反省しているわ。本当に申し訳ないと思っているの。それで、再登録はできるのかしら?」
ライラは満面の笑みを浮かべて男性職員にもう一度尋ねる。
「……まあ、再登録はできるけどな。そうすると、冒険者登録試験をまた受けることになるわけよ。アンタ歳はいくつだ?」
男性職員はライラの姿をまじまじと見ると、呆れたように吐き捨てた。
「あら、冒険者登録は三十歳までだったと記憶しているのだけれど……。もしかして冒険者組合のシステムが変わったときに、年齢制限も変更になったのかしら?」
ライラは顔を青くしている受付嬢に向かって爽やかに問いかけた。
受付嬢は慌てて首を横に振る。
それを確認してから、ライラはにっこりと微笑んで男性職員に視線を向けた。
まさかこの私が三十歳を超えているように見えているわけじゃないよなと、無言で圧力をかける。
「ま、まあ、年齢制限はぎりぎりで大丈夫だとしても、冒険者証の移行を見逃していて再試験ってのは試験官たちの心証がかなり悪いぞ。試験で相当優秀な成績を出さなければ無理だと思うがね」
「…………ご心配どうもありがとうございます。ですが、そこは気にして頂かなくて結構ですわ」
さすがに腹立たしくなってきたライラは、顔を引きつらせながら微笑んだ。
ライラの年齢は二十八歳である。
たしかにすぐに二十九歳にはなるが、年齢制限ぎりぎりと言われることには反論したくなった。
しかし、ここで言い返したところで余計に心証が悪くなるばかりだ。のどまで出かかった言葉を、ライラは飲み込んで耐えることにした。
心底迷惑そうに言われて、ライラは驚きつつも申し訳ない気持ちになる。
冒険者として活動を止めたあとは、貴族としての新しい生活に慣れるのに精一杯だった。組合からの知らせなど気にも留めていなかった。いや、そもそも連絡が来ていたかすら覚えてはいない。
ちゃんと確認をしておけばよかった。しかし、それを今さら後悔しても仕方ない。
冒険者としての活動を再開し、生計を立てたいと考えている今は、ライラに落ちこんでいる時間はないのだ。
ライラは頭を振って気持ちを切り替えると、男性職員に質問をした。
「それは申し訳ないわ。移行をしなければいけなかったなんて知らなかったの。できていない場合はどうなるのかしら?」
「──はあ? あんなに告知してあっただろう。期間内に移行してしなければ登録抹消だよ」
男性職員の馬鹿にするように吐き捨てた言葉に、ライラは返す言葉に詰まる。
「まったく! 自分の不手際で登録抹消されたっていうのに、こうやってごねる奴が多くて困るよ。冒険者をしたいというなら、つねに最新の情報には注意をはらっていてもらわなきゃな」
ライラが返事をしないでいると、男性職員は一方的に捲し立ててくる。
ライラは五年もの期間を冒険者として活動していなかった。
つまり、その間に何一つ冒険者組合に貢献していないということなのだから、登録が消されていても仕方がないとは思っていた。
しかし、ここまで露骨に敬遠されるとは想定外だった。
「……本当にごめんなさいね。じゃあ、冒険者としてこれからまた活動したい場合は再登録ということになるのかしら?」
「はあ 再登録ってアンタが? 冗談だろう」
気を取りなおして笑顔で尋ねたライラに、男性職員は馬鹿にするように鼻で笑った。
その声が少しばかり大きかったので、何か揉め事かとライラのいる受付周辺が静かになった。
男性職員とライラに挟まれた位置にいる受付嬢が、口元に手を当てて顔を青くしている。
「冗談じゃないのよ。移行に気が付かなかったのは私の落ち度だし、反省しているわ。本当に申し訳ないと思っているの。それで、再登録はできるのかしら?」
ライラは満面の笑みを浮かべて男性職員にもう一度尋ねる。
「……まあ、再登録はできるけどな。そうすると、冒険者登録試験をまた受けることになるわけよ。アンタ歳はいくつだ?」
男性職員はライラの姿をまじまじと見ると、呆れたように吐き捨てた。
「あら、冒険者登録は三十歳までだったと記憶しているのだけれど……。もしかして冒険者組合のシステムが変わったときに、年齢制限も変更になったのかしら?」
ライラは顔を青くしている受付嬢に向かって爽やかに問いかけた。
受付嬢は慌てて首を横に振る。
それを確認してから、ライラはにっこりと微笑んで男性職員に視線を向けた。
まさかこの私が三十歳を超えているように見えているわけじゃないよなと、無言で圧力をかける。
「ま、まあ、年齢制限はぎりぎりで大丈夫だとしても、冒険者証の移行を見逃していて再試験ってのは試験官たちの心証がかなり悪いぞ。試験で相当優秀な成績を出さなければ無理だと思うがね」
「…………ご心配どうもありがとうございます。ですが、そこは気にして頂かなくて結構ですわ」
さすがに腹立たしくなってきたライラは、顔を引きつらせながら微笑んだ。
ライラの年齢は二十八歳である。
たしかにすぐに二十九歳にはなるが、年齢制限ぎりぎりと言われることには反論したくなった。
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