勇者パーティーを追放された俺は辺境の地で魔王に拾われて後継者として育てられる~魔王から教わった美学でメロメロにしてスローライフを満喫する~

一ノ瀬 彩音

14.

「離してくれよぉ」
それでもなお、抵抗しようとすると、母から拳骨が飛んできた。
「い、痛い」
頭を押さえてうずくまると母が言う。
「いい加減にしなさい、貴方が勝手に出ていったんでしょう、今さら何の用なの?」
冷たく言われて言葉が出なくなる。
「貴方は、これからどうするの? 父親の加護無しで本気で生きてけるはずないでしょ」
そう言われて戸惑う。
村を守るのは父親の結界が必要だという事、それがなければ、村の生存率は皆無だという事……。
「母さん俺にどうしろと」
「お父さんを追いかけて、何でもするから許して下さいと言いなさい」
そう言うと、再び立たされ、背中を押される。
「早く行く!!」
その声に後押しされて俺は走り出した。
「くそっ、どこ行ったんだよ」
そう言いながら走ると、声が聞こえた。
「ねぇ、リュート、こっち来て」
見るとテラスでくつろいでいる少女が居た。
「え?」
「いいから、こっちきて」
そう言われてテラスにでると、少女がこちらを向いた。
「久しぶりね、リュート」
「え? なんで君がここに居るの?」
「え? あら、いては悪いの?」
「父さん、悪趣味」
「見つかりやすかっただろう?」
そんなことを言いながら父は笑っている。
今いるのは魔王城のテラスだ。
「で、何の用なのかしら、リュート」
「俺は、ただ、父さんに謝りに来ただけだよ」
そう答えると彼女は言った。
「謝る? 謝って許すと思っているの?」
それもそうだろう、俺はガキだから考えが甘いのだ。
無言で目の前の彼女=父親を見つめる。
すると、父親が口を開いた。
「謝罪したいならすればいいさ、だがその前に、カルザッサお前に話がある」
急に話を振られて焦るカルザッサさんだったがなんとか答えた。
「私にですか?」
「ああ、カルザッサお前なら分かるよな?」
カルザッサさんは少し考えるような仕草をした後答えた。
「ええ、分かりますとも」
少し緊張した声で答える彼に父親は続けた。
「じゃあ話が早いな、こっちに来てくれ」
「陛下の命令だから行きますけど、親子げんかに巻き込むのは勘弁して下さいよ」
「お前にしか頼めないだろう?」
そう言われてため息をつくと彼こちらにやってきた。
そのまま俺の後ろに立つとそのまま思いっきり叩かれる。
「つっ」
「気絶させないと反抗しますかね」
「だろうな、さっさと済ませろ」
「おお怖い、リュート様、許して下さいね、お父上の命なので、仕方なくですからね」
そう言って彼が殴りかかってくる。
「痛っ、ぐふっ、げはっ、ゴホッ」
薄れゆく意識の中で俺はそのまま気絶した。
「うーん」
ゆっくりと目を覚ますと、そのまま辺りを見回した。
肌寒く薄暗いここは何処だ?
「起きたか、お早う、リュート」
「父さん、ここは何処」
「城の地下、左側の間かな」
そこはと思い出した。
此処は、捕虜を幽閉しておく牢獄と、拷問する取り調べ室がある。
「とうさん、なんで俺はここに居るの?」
次第に明かりがともって行く。
この前の小屋だって、かなりの恐怖だったのに……、
嫌だ、早く逃げ出したいが固定されていて抜け出せない。
「カルカッサ、終わるまで出ていろ、息子の泣き顔は誰にも見せたくはないからな」
そう言われたので彼は出て行った。
扉が閉まると彼は椅子を俺の目の前まで持ってきて座った。
「で、謝れば許してくれると思っているんだろう?」
そう言われて首を振る。
それを見て笑う父。
「嘘をつけ、まぁいい、今からお前の処分を決めようと思う」
その言葉にゾッとした。
殺されると思ったからだ。
そんな俺を楽しそうに見ながら父は続ける。
「まず最初に言っておくことがある、最初の発端は、母親の所に帰りたいだったな、俺が里帰りはダメだと言ったら、お前は如何した?」
(そんな事言われてもあの時は)
そう思いながらも口ごもっていると続けて言われた。
「答えられないか? 仕方ないな、では質問を変えよう、俺がなぜ帰れと言ったかわかるか?」
(そんなの知らないよ)
そう心のなかで思っているとまた聞かれる。
「分からないか? それともわざと分からないふりをしているのか? どっちでも良いが、そろそろ答えを言っておこうか、それはお前が我儘だったからだよ」
そう言って俺を見た後立ち上がり近づいてくる。
逃げたいけど逃げれない。
「父さん、やめて、許して」
必死にそう言うが無駄だった。
そのまま蹴られる。
ドゴッ!! 壁にぶつかり咳き込んでいると父が言う。
「この程度で音を上げるのか? ああそうか、今まで甘やかしすぎたんだな、すまないなぁ、今度はもう少し厳しくしようか?」
そう言って近づく父に恐怖を感じ始める。
「いやだぁぁあ」
叫び声をあげるが無視される。
「安心しろ、殺しはしない、殺す気もない、それにまだまだ始まったばかりだしな」
その言葉の後に何度も殴られ蹴られた。
教育何て生易しいものではない、
「そうそう、お前は許してほしかったんだよな? 許して欲しいんなら、泣いてごらん」
そう言って笑いながら殴ってくる。
痛い、痛い、痛い、嫌だ、助けて、誰か……、 そんな思いが頭を駆け巡る。
そして、遂に限界が来たのか俺は意識を手放した。
次に目を覚ました時には、地下牢ではなく自分の部屋にいた。
服も新しいものになっている。
体を起こそうとするが痛みが酷い。
結局起き上がれずにベッドに横になっていると、誰かが部屋に入ってきた。
「目が覚めた?」
見るとそこに居たのは父親だった。
「さて、お迎えが来たぞ」
そう言いながら俺の腕を掴むとずるずると引っ張っていく。
「止めて、やだ」
「それと、お前に一つ、絶望をやろう、母親が迎えに来ている間に、あの村の結界を解いておいた」
そういわれて青ざめる俺の顔を見てニヤリと笑うとそのまま歩き出したのだった。
「そして、お前が村に着くタイミングで、村を襲わせてみようかと思う、いい余興じゃなないか?」
そう言って笑う父はまるで悪魔のようで怖かった。

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