無崎くんは恐すぎる ~~見た目だけヤクザな無能男子高校生の無自覚な無双神話~~

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37話 無崎以外なら、いつでも、どうとでも出来る。


 37話 無崎以外なら、いつでも、どうとでも出来る。

「お前は信用できない。共闘などしたら、いつ、背後から撃たれるかわからない」

「あなたなら、必ずそう言うと思ったから、一度、闘わせていただきました。あなたを倒すために用意しておいた切り札の内半分を無駄に使ってまで。分かっていると思いますが、先ほど使った二枚は、どちらも、とんでもなく希少ですのよ」

「……」

「そろそろ、わたくしの覚悟が御理解いただけましたか? 先ほどの一戦、わたくしは、確実にあなたを殺せましたが、しかし、わたくしは、あなたを殺さなかった。あなたを殺すために用意していた隠し玉を披露し、命を見逃した。……これでもまだ信用できませんか?」

「信用させるために、一芝居をうつ。詐欺師の常套(じょうとう)手段だな。これまで、多くの闘手から卑劣極まりない手で野究カードを奪い取ってきたお前の策謀(さくぼう)……俺には透(す)けて見えているぞ。無崎にオレをぶつけ、疲弊(ひへい)した所をまとめて討(う)つ。……最小限のリソースで漁夫の利を求める卑劣さ。実にお前らしい作戦じゃねぇか」

「前線に出ていただなくて結構。無崎朽矢の討伐は、わたくしが担当いたします」

「なに?」

「ヤツはこの手で殺します。というより、わたくし以外では相手にならないでしょう。夜城院さんは、ヤツの配下を排除してください。つまり、わたくしがあなたにお願いしたいのは後方支援。これならば、わたくしに背後から撃たれる心配はないでしょう?」

(どういう事だ……こいつの提案からは、愚直な真摯さしか感じない……ありえない。こいつは蛇尾ロキだぞ……)

「もちろん、ヤツを討った後のわたくしは、これまで通り、あなたの敵ですわ。それを否定する気は毛頭ありません。どうぞ、ご自由に、お仲間と綿密に作戦を立てて、わたくしという脅威を討伐する作戦をたててくださいませ」

(なにかの作戦なのか? それにしては、あまりに……)

「真摯に答えましょう。わたくしとあなたが共闘するのは、今回限りです。しかし、無崎朽矢という怪物を排するまでは、決して敵意を向けないと誓いましょう。ですので、どうか、手をかしてくださいませ」

 そう言って、深々と頭を下げるロキ。
 屈辱に体が震えている。
 その様を見て、

「まさかの本気(ガチ)……かよ。気持ち悪ぃ……お前が俺に頭を下げる日がくるとは思ってもいなかった」

「最初で最後ですわ。――本音を言います。あなた程度に頭を下げるというのは……本当に……本当に、屈辱的ですわ」

「だろうな。もういい。やめろ。宿敵の『無様な姿』は見たくない」

 ロキは、スっと頭をあげると、姿勢を正して、

「共にあの魔王を討ちましょう。――あの化け物の一人勝ちだけは、断固として阻止しなければなりません」

「流石のお前でも、アレには恐怖を覚えるのか。タイマンなら俺に圧勝できるほどの、天才の中の天才であるお前でも」

「えぇ。なんせ、わたくしも、一応は人の子ですもの」

「……おまえも、人の子……か……はっ」

 夜城院は、吐き捨てるように笑ってから、

「ロキ、一つだけ聞かせろ」

「なんでしょう?」

「お前が……あえて『反社的思想を貫く理由』はなんだ? それだけの才能・力……その素晴らしいスペックを、なぜ、悪なんぞで浪費する?」

 その問いに対し、ロキは、無表情の仮面をかぶって言う。

「言いたくありません。夜城院さんには勿論、他の誰にも言いたくありません。申し訳ありません」

「……あぁ、そう」

 ふぅうっと少しだけ長い息を吐いて、

「共闘するのは、今回だけだぞ……二度はない」

「ありがとうございます」

 柔らかな笑顔を見せるロキ。
 そんな彼女を、夜城院は、不覚にも可愛いと思ってしまった。
 そんな自分に吐き気がした。
 『あらゆる意味』で『甘っちょろい自分』にヘドが出る。

「ちなみに、夜城院さん。あなたの分析だと、戦況はいかがですか?」

「……上品が転んだのが、とにかく痛い。佐々波という『不安定な脅威』も恐いな――が、しかし、魔に魅了されたあのバカ女二人以外の超特連中は、ほぼ全員が、無崎に対して危機感と敵対心を抱いている」

 所詮、敵は三人。
 決して、『どうしようもない状況』ではない。

「戦力的にはこちらが、遥かに上。おまけに、ナンバーワン切り札である蛇尾ロキが先頭に立って全力で闘うと言っている。正直、楽な勝ち戦だろう。……オレが恐れていたのは、お前とあいつが組んだパターンだけだ」

 その『冷静で正確な分析』に、ロキはニコっと微笑んだ。

(そう。メジャーリーガーである夜城院と組めば、無崎に勝つのは難しくない。無崎さえ消えてくれれば、後は楽勝。無崎以外は、ぜんぶゴミ。その気になれば、どうとでも出来る。仮に夜城院が超得連中と組んでわたくしを殺しにきたとしても、『アレ』を使えば対処は可能。現状、鬱陶しいのは無崎だけ。無崎は本当に不気味な男。『アレ』を使っても、タイマンでは、もしかしたら勝てないかもしれない――そう思わせる異質な雰囲気を持つ脅威。だからこそ、数の暴力で圧殺する。ふふ……最後に笑うのはわたくし。わたくしは、必ず、この世界の支配構造を破壊する)

 心の中でそう呟きつつ、
 ロキは、

「――とりあえず、超特待の方々を全員、戦場に引っ張り出さないといけませんね……特に、『龍名さん』と『沢村さん』は必須の弾。さてさて……」

 ロキと夜城院の舌戦、
 その全てを黙って見ていた二階堂は、

(夜城院は転んだ。超特待の連中も確かに強い……それでも、『無崎が絶対に負ける』とは思わない。……さて、ここからは慎重に行かないと。どっちが勝つかは問題じゃない。勝った方に、どうやってつくか――)


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