無崎くんは恐すぎる ~~見た目だけヤクザな無能男子高校生の無自覚な無双神話~~

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9話 疑心暗鬼に質量が生じる、虚像の翻訳。


 9話 疑心暗鬼に質量が生じる、虚像の翻訳。

 ついに暗号を解読した上品里桜は、『スカイタワー・メジャーの151階』を慎重に探索していた。

(モンスターはおらんみたいやなぁ……けど、トラップが多い……)

 151階は、赤外線センサーが張り巡らされている、とてつもなく広いワンフロア。
 例えるなら、『トル〇コのモンスターハウス』のモンスターなしバージョン。
 難易度の高いローグ系RPG並みに、フロア内のあちこちにトラップが設置されていて、なかなか、奥に見えている『上へと続く階段』まで辿り着けない。

(頂上は160階で、ここから先、エレベーターは使えん……Mマシンを入手するまで、まだ時間がかかりそうやなぁ……ちっ、現時点で所有しとる野究カードだけやと心もとないから、さっさとMマシンを手に入れたいんやけど……)

 あの時、屋上から自分を見下ろしていた魔王の顔を思い出す。

 無崎朽矢。
 とても高校一年生とは思えないイカれた顔面をしたヤクザ。
 常に『深淵』を睨んでいるような、酷くおぞましい相貌(そうぼう)。
 思い浮かべるだけでも体が震えた。

(絶対にMマシンを手にいれたる。そんで、生き残って、いつか、この世界を買うんや)

 また発見したトラップを解除しようと、腰にセットしているカードホルダーに手を伸ばす。
 ワナ抜け用のアイテムが封印されている『汎用野究カード』を取り出し、手首に巻いている腕輪型のスキャナーに通す。

 すると、『野究カード』が粒子化して、彼女の手の中に、アーク溶接棒のような物体となって納まった。
 慎重にワナを解除しようと腰を落とした、
 ……と、その時、


 ――チーン!


 エレベーターが開く音がして、
 上品はバっと振り返る。

 反射的に、カードホルダーへと手が伸びた。
 放り捨てた『アーク棒のような何か』は、一瞬で粒子化し、野究カード状態に戻ると、自動的にカードホルダーの中へと戻る。

「ぅ、嘘やろぉ?! まさか、ウチ以外にも暗号を解読したヤツが……くっ、誰や……『沢村』? 『龍名』? いや、あいつらは間違いなく天才やけど、数学は得意やない。『あの難易度の問題』は絶対に解かれへん。……ま、まさか、ロキ?! 可能性があるとすれば、あいつくらい……くっ」

 ブツブツ言いながら、取り出した一枚の野究カードをスキャナーに通すと、上品の手の中に、ギガロ粒子を放出している『刀身が真黒な日本刀』が収められる。

 上品が愛用しているプロ級武装野究カード『147ギロのムービングファストブレード』。不規則なギガロ粒子の奔流が特徴的な、『ギガロ・バリアフィールドの破壊力』に特化したストレートブレード。

 ――エレベーターを睨みつけ、黒刀を構える上品の目に映ったのは一組の男女。
 片方は、ニタニタした笑みと抜群のスタイル、そして眩いばかりの銀髪ツインテールが特徴的な美少女。

 もう一方は、極悪で凶悪なワイルドオーラを纏っている常闇の覇鬼。

(佐々波と無崎?! 最っ悪や! まさか、あいつらも暗号を解読したやなんて……くっっそぉ! つぅか、あいつら、入学から今日までの、たった一か月弱でアレを解いたんか? どんだけ頭ええねん! このウチでさえ八カ月もかかったんやぞ! くそがぁ! と、とにかく、やつらにMマシンを奪われるんだけは阻止せんと……あいつらがMマシンを入手してもうたら、いよいよ対抗手段がのうなる!)

 心臓がドクンと跳ねた。
 思わず、ギリっと奥歯をかみしめる。
 冷汗が流れていった。

「んー、あ、いたいた。うぃーっす、上品セーンパーイ!」

 ニタニタと薄気味悪い笑顔でそう声をかけてくる小悪魔。
 その横では、重たい無言を貫いたまま、
 『地獄の修羅』を彷彿(ほうふつ)とさせる『苛烈(かれつ)な睨み』を向けてくる魔王。

 上品は思わず、一歩うしろに引いてしまった。
 恐怖に包まれる。
 心が壊れそうになる。

(ち、近くで見たら……ホンマ、なんつぅ迫力……こ、怖ぁ……)

 無崎の常軌を逸した顔面による恐怖。
 魂ごと支配されそうになる。

 泣きそうになった。
 しかし、寸での所で、自分をいさめて、

「……さ、佐々波。ここには、何をしにきたん?」

「ナニって、野究カードを取りに来たに決まってんじゃないすか。Mマシンを駆(か)るのがボクの夢だったんすよねぇ」

 想像通りの最悪な状況に、つい顔をゆがめる上品。

「まあ、ここにきた理由は、それだけじゃないっすけどねぇ。くく」

 そう言うと、『ニチャっとした黒い笑み』を浮かべて、

「麗しき上品センパイに会いに来たんすよ」

「ウチに? ……な、何の用や」

 そこで、佐々波は無崎に視線を向けた。
 無崎も佐々波に視線を向けている。

 佐々波は、無崎の耳元に口を寄せ、
 『上品には聞こえない小さな声』で、

「センセー。人間関係は最初の印象が一番大事っす。さあ、さっき練習した最高の笑顔を、いざ、ご披露ターイム」

 ((わ、わかった。やってみる。

 無崎は、一度頷くと、視線を上品に向けて、

「……っっ!!」

 ギニャァアアアっと、
 歪(いびつ)に嗤(わら)ってみせた。

 捕食者(プレデター)の笑み。
 悪魔の嘲笑(ちょうしょう)。
 その様は、まるで、無間地獄をそのまま描いた闇の芸術。


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