バーバリアン7 影使い

朝　リビングで遥に珈琲を淹れてやっていると怜子が理音を連れて起きて来た

おはよう　寝た？　と　俺は聞いた

怜子は薄く笑って小さく首を横に振った

よし　じゃあ濃い奴を淹れてやろう
おはよう　理音
俺たちの事は聞いた？

何か魂の抜けたような顔で頷いた

そう言う訳だから　助けたからって言っても俺は神でも紳士でも無いから何も義理や恩を感じる事はないからね
自分の愛する妻で猫のおねだりを聞いただけだから

と　内輪にしか分からないジョークを言いながら差し出した珈琲を受け取る理音に念を押した

それと連絡先を交換したウチのモデルたちとは出来たら仲良くしてやってくれ
特にエミリは君の事を随分と気に入ってるようだし
あの子は自分で衣装を作ってコスプレする為にウチの事務所に入った子だから君がああ言った気晴らしをしたいなら怜子に言ってくれたらいい

昨日の動画もいいね　とフォロワーが増え続けているし　な

と　手元のタブレットを再生して　怜子と理音の方へ滑らせた
美しいバーバリアンがハンマーを振り回して破壊の限りを尽くしている
昨日アップした動画の再生数が三千を越えて増え続けている
フォロワーももう直ぐ千に届く

俺は悪い顔でニヤッと笑って

だから　あのアーマーはプレゼントするよ　動画をアップしたければ協力するし　破壊するアテも確保済みだから

理音はこっちに戻って来たように顔に頬を赤くして　目を丸くした

数日して事務所でエミリに会ったので　動画を見せて　羨ましがらせた

え？なんですか、これ？リアルバーバリアン？理音さんですよね　師匠のアーマー着て！

なかなか　やるだろ？アーマーはプレゼントした
また　やりたければ連絡してくれって

え〜　ズルい！

なんだ　エミリの事も売り込んでやったのに　仲良くしてやってくれって

なんだ　社長　好き〜！

おいおい　ひとが誤解するような事　叫ぶな
まあ　あの子はコスプレと言うより匿名でバーバリアン　やりたいみたいだけど

ポケットでスマホが鳴った
誠から客が来て俺を待っている　と言う
下に居るから直ぐ戻る　と言って　エミリと別れた

事務所に入りながら　誠に　どなただ？と聞く

森本さまって　おっしゃいました　執務室にお通ししてます

森本さま？

ドアを開けて　お待たせ致しました　と入って行くと応接カウチに　理音が座っていた
俺を見て　ペコッと頭を下げる

おや　いらっしゃい
どうしました？

先日はすみませんでした　噛み付くような事ばかり言ってしまって

いや　いいよ　説明したように恩にきる必要はないよ
俺は一度君を見捨てたんだ　酷い変態だろ？
自分で責任が持てない捨て猫は拾わない主義だからな
君は怜子の猫だから　怜子のものである限り　守る　それだけだ
　
あの　事務所のあの女性も？

うん　そう　聞いてると思うけど　俺の猫　君の先輩の遥の妹だ
あと　もうひとり梓も事務所で働いているけど　今日は休みとってエミリの撮影にスタジオに行ってる　あ　この子は変態じゃ無いけどな
拾って懐かれたから責任を取っているだけ
ウチの経理のエキスパートで写真家としても注目を浴びつつある

いいですねぇ　才能がある人は…あ　すみません　いじけた事言って

いや　愚痴が出るなら　心が軽くなりつつある証拠だ
でも　梓は親に捨てられて　何も持ってない所から始めているから　才能があった訳じゃないよ
ウチに来て好きな事をやる　自分でやるって事を覚えて周りから助けて貰う事も知って進み続けているだけ
理音もやりたい事があれば言え
助けてやるには声をあげないといけないんだ
君が面談で怜子の名前を出したように　な

空気を読んで誠が珈琲を持って入って来た　カップが3個
俺は笑って　隣りを開けた