ちょっとHぃショートショート
アートな猫たち 影使いから
通った!通った!通ったよ!
と 木島由香が興奮して連絡して来たのが2月頭だった
県立美術館での美和と若狭の"flowers"展
キトゥンズテイルスで集まって作戦会議をして木島に企画を返したら 本来 木島の企画が通っても次年度の遅い時期のプログラムに入るくらいだったのがゴールデンウィークの目玉だった前衛芸術家の企画展がセンセイ本人の暴力事件で吹っ飛んだ しかも この際とばかりセンセイのアシスタントからの作品盗用 剽窃の情報がリークされてアートの業界はてんやわんやの醜聞合戦が続いた
そこへ 滑り込んだのがこの作品展企画で
県知事含めて幹部連中おっさん揃いだから アートの装いはしてても女性ヌードには弱いんだから!
切実な代替え案が必要な時に 正当な理屈付けて 後 キトゥンズテイルスを通した私企業の広報も期待出来ますって言ったら パクリ食いついた!
作品展の企画自体は木島の案をベースにして 木島の案ではモデルに作品同様のラテクッスメイクをしてスポットライブのようなステージタイムを美術館中央ホールで行うと言う実現の覚束ないものだったが 俺はそこをモデル本人から型起こしした等身大フィギュアにラテクッスメイクを施し プリント同様 常設展示する事にした
企画自体をスッキリ通りやすいものにしたと言える が 作品展の名前に小さくだが 仮面屋とイラスト屋の名前もねじ込んだ
それで 仮面屋の造形作家アトリエにモデル1人づつに付き添う事になった訳だ
小さなTバック1枚でポーズを取って首から下をケースの中に入れられて発泡性の充填材で素早く型を取る手法
充填材が固まり切る迄に型枠を外して凹
面に処理をしなければならないので仮面屋に邪な考えが有っても暇は無いのだがうら若い乙女 特に梓が居る 保護者の責任としたものだろう
頭部をどうするか
多少 揉めたがモデルの匿名性の為に頭部の再現はやめさせた
代わりに仮面屋の提案で金属線で女性頭部のワイヤーフィギュアを作ろうと言うのでサンプル画像を何点か見せて貰い 1番 荒くワイヤーを編んで頭部を形作る制作法でいいんじゃないか と言う事で企画を纏めた
マスク自体は4点ともレプリカが既製品としとラインナップがある
梓以外の3人は自分を物体として見られモノ扱いされるのに慣れているので勢い 工房帰りにプレイを迫られるのまで 織り込み済みだ
梓まで少しハイになっていたのは驚きだったがまだ外出中におねだり出来るスキルは無かった
ゴールデンウィーク 地方の県美術館の企画展にしては センセイのスキャンダルで広報要らずで周知が徹底して 業界の気鋭のセンセイを憚って展示会企画自体を下げた作家も多かった中でセンセイの企画の後に割り込んだ奴は誰なんだ と下世話な注目も集めて集客はしてやったりの大盛況だった
中央ホールの4方向の天井から下げられた 大型シートプリント それぞれモデルR H     M    A の肖像と名付けられた壁際にプリントと同じポーズを取ったフィギュアが展示してある
時計回りに作品プリントがA全判サイズで展示してあり それぞれの花のストーリーが語られ 最後は花の装いを脱ぎ捨てて白い背中を晒して次の花の物語に繋いで行く
床面にはそれぞれの小花模様のシートが敷いてあり中央には衣装屋の協賛でいっぱいの生花の小花のフラワーアレンジメントの森があった
分かりやすい作品はアートの世界では低く安く見られるが 入場者は休みに何処に行こうか と話題に上る美術館に来た人ばかりで分かりやすいのが害になる事は無い ヌードと言うほどの露出は無く
作品集の他に急遽作ったポストカード以外にも エステ屋のアロマオイル レザークラフト屋の皮小物 フィットネスのウェアも少しずつ売れ なんとマスク屋のレプリカマスクにも注文が入った
その度にモデルの装着したモノではありません と言う断りをしなけれはならなかったが
会期中に一度 センセイの後援会を名乗るジジイから嫌がらせめいた電話がキトゥンズテイルスの番号に入ったが こちらが調べ上げてまだ公になっていない美術商との不法行為のさわりだけ 教えてやってセンセイがご存知か 確認してみろ と 切ってからは大人しい
展示会は成功した
木島も アートディレクターとしての岡も鼻高々だった
会期中 俺も2度 見に行った 怜子と梓 遥と誠 3人連れで
リアルに再現されたボディを初めて見て4人とも驚いていた
基本 flowersの撮影は1人づつだったから写真以外で自分自身を客観的に見れる機会は他にない
え〜 わたし こんなですか? と誠
自分の全身を立体的に見る機会なんて無いし な と 俺は囁いた
あっ と 気づいて誠は小声になった
いやらしくないですか?
アートだぞ モデルMとモデルR 身体つき 似てるだろ? 梓が引っ掛かる訳だ
今 それ 言いますか?ご主人様!
あら まこちゃんと怜子さんが入れ替わって梓ちゃん 騙した時の ですか? と 遥が笑った
怜子と来た梓はマジマジとモデルAのボディを見た
やはり Aは均整が取れてるから伸びやかさが違うな 梓
あの ご主人様 わたしは綺麗ですか? と 割と真面目な顔で聞いて来た
うん? 均整の取れた身体でスタイルはモデル並みだし 綺麗どころ揃いのウチのペットの中でも可愛い方だろ?
怜子は美人顔だし 遥は艶っぽい 誠はコケティッシュだしな
梓もウチに来て表情が豊かになって余計に綺麗になったんじゃないか?
ご主人様 それは真面目に言ってます?
真面目もなにも 若狭が君をモデルに!って執拗に迫ってるの 知ってるだろ?アイツの審美眼は今回の展示会の成功で分かるように本物だ
出来たら顔出しで撮りたいんだろうがな
…ここまでキトゥンズテイルスが頻繁に活動するようなら経営主体を他所にやって貰った方がいいかも知れないなぁ
ご主人様?
いや 当然 その場合は新しくキトゥンを募集するか 企画ごとにオーディションで選定する方法になるだろうけど 俺たちのプレイの為のお遊びが俺たちを振り回し始めているからなぁ
他のプロジェクトメンバーも君たちが好きで損得抜きで付き合ってくれてるんだけど 話が大きくなり過ぎると仕事に影響が出る
集客や売り上げアップに繋がっているから 今はいいけど ウチの都合で振り回すようなら 駄目になるだろうしな
と 言う規模を縮小する話をしていたと言うのに 木島から仮面屋が再現した4体のフィギュアも現代アート作品として県立美術館に収蔵したい旨の打診が来た
勿論 買い上げだ
余程 センセイの企画展に予算を掛けてて余ったとしか言いようが無い
仮面屋の名前が初めて造形作家として陽の光が当たった
うわぁ 誰が展示会の後 どれを引き取るか でバトルがあった後なのに〜っ!!
…ご主人様 マジな話ですか?
マジマジ 大マジ 大の大人が籤引きを引く順番をどう決めるかでまで揉めた揉めた…
結構 誠が素で引いた顔をしていた
まさか ご主人様まで混じって無いですよね?わたし達がいるのに?
…混じっては居ない と言うか 今のおまえの理屈で始めから弾かれたんだ 実物が居るだろ と
まさか ご主人様も欲しかった訳では?
これは 梓が呆れたように突っ込んだ
う〜ん 裏オークションサイトで出品されれば と言うイフ価格が最低でもモデルAが500万 モデルR H     M   が400万からだ 最低で だぞ?
手作り品で 型が一回で駄目になるから一品モノで今回 アート認定されたんだ
…県立美術館の買い入れ申し入れ価格が纏めて200万だ これでも 破格なんだがな お役所にしたら
怖い怖い ご主人様 わたし達を型枠に入れて量産しそうな目をしてる!
鯛焼きじゃあ あるまいし さすがにそんな事は考えてないよ しかしこれでキトゥンズテイルス探しがまた 喧しくなるなぁ
いや 待てよ 影を使ったら量産は可能か?
ご主人様!私利私欲で使ったら身の破滅とか 言いませんでした?
おっと 危なかった
その通り 欲に目が眩んだな と やっと笑いが出た
仮面屋の造形作家としてのお祝いにいつもの狭いバーラウンジに集まっての 祝いの一席を岡をせっついてやらせた
ウチからは誠と梓のふたり 看護師たちは仕事の関係で欠席
梓は早々に美和と若狭に拉致られて隅の方で3人固まって楽しそうだ
岡は誠にちょっかいをかけたそうに寄って来たが誠を俺により一層 密着させただけで終わった
遅れて来た木島にプロジェクトメンバーを紹介したが何人かは顔見知りだった
まあ 大学OBがらみの立ち上げだからアルアルだ
俺にしがみついてる誠を見て目を丸くしたが
ウチの事務員だ 今回の件で業務外でこき使ったんだ
と言う紹介に メンバーはニヤッと笑った
木島は腑に落ちない顔で誠に 小声で
変なこと されてない? と 聞いていた
あの 社長の奥さん 姉の先輩なんです 姉の紹介で事務所に雇って貰って
今日は奥さんからのお目付役です
これには 回りもドッと笑った ついでに美和たちの所の梓も事務員で経理だと紹介したら
柳クンところは顔で取るの? と 言いやがったんで
ほら 梓 君は客観的に見て美人なんだ と指摘しておいた
だいぶマシにはなったが自己評価の低さが自信の無さと自我の確立に悪い影響を与えている
誠ベッタリ 俺ベッタリなのも 飛び立つ自信の無さだ
酒が回って木島は仮面屋やイラスト屋と現代美術論を講じ合い出したので放置
誠連れて美和たちの所へ席を変えた
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