ちょっとHぃショートショート

双樹\u3000一

コルセット

駅に行く近道を夜の暗さに紛れて一本間違えた
戻ろうかとも思ったけれど表通りの明かりは見えているし後ろから付いて来る影もない
ヒールの音を立ててスマホを手にして足早に急いだ時にその店を見つけた
小さなショーウィンドウに黒いコルセットがライトを当てられて浮かび上がっている
硝子扉の横に小さな「ノワール」の看板
扉から見える店内は女性下着小物の専門店のようだ
黒のコルセット
柔らかそうな皮で丸いハーフカップとウエストに美しい留め具
カラン と小さくドアベルが鳴る
奥から いらっしゃい と女性の声
小柄で上品そうな初老の婦人が
どうぞ ゆっくり見て回ってくださいな
と 言ってまた 奥に戻った
一点物なのか 店内には同じ物はディスプレイされていない

あの

と 声を掛けると

はい

と 奥から姿を見せる

あのウィンドウに展示されてるのと同じタイプのコルセット 見せて貰えますか

サイズはどこを言っていいのか分からないからスリーサイズを言った

まあ と婦人は少し目を見張って

呼んだのかしらね

と ウィンドウのコルセットをケースから出して来た

一点物なので 貴女のサイズはちょうどこれで合いますわ
試着室はあそこで 試着用のシャツを着て頂きますけど フィットの時は声を掛けて下さいね

と 試着室へ導かれた
試着用のシャツもシルキーな肌触りの薄い素材で裸の上半身に吸い付くようにフィットした
黒革のコルセット
フロントが割れてハーフカップが後ろから手で包まれるように乳房を覆い精々乳首を隠す程の小さなカップなのに完全に乳房をホールドしている充足感がある
ウエストの留め具は軽く締まるくらいに留めて婦人に声を掛ける

はい いいわね 時々 小さいサイズを申告して無理に絞めようとして留め具を壊すお客様がいて

と 笑いながら跪いた
留め具を順に締めて行った と思ったらまた 最初の留め具から締めて行き最終的に3回 絞られた

はい これが貴女のウェスト

と 鏡に映る自分を見ると 砂時計のようにくびれたウェストなのに全く息苦しくも無い 幾分は呼吸が浅くなったように思うくらい

これは下に試着用のシャツ付けて貰ってるから完全な着心地の良さは分からないけど 肌に吸い付くって愛用してくれている人は言うのよ

充分 今でもフィットしてますけど まだこれ以上ですか

フィットと言うのとは違うみたいよ
まあ コルセットだから肌に合うと言うか自分の体みたいになるようよ
本当はコレとセットでガーターベルトがこことここの前後に付いて シープのTバックとシープのストッキングが付くの
セットだと これくらいになるけどストッキングはサイズが合わないと ねえ

と 結構なお値段を聞いたけれど もう試着用のシャツを脱いで直接 肌に付けたくてしようがない

セットでお願いします 支払いはカードで

婦人はストッキングが合わなければコルセット単品でいい と言ったけれど その後で 貴女は呼ばれたようだから と呟いていた
もどかしく コルセットを脱いでシャツを脱ぎ 再びコルセットを合わせる
シャツを着ていた時と違い カップに乳房を後ろから掴まれる感じがする
ウェストは締められる毎に甘く重く腰に快感が走り立って居られなくなり椅子に座らせて貰おうとするがいつの間にか下着を脱がされてシープ皮のTバックを穿かされている
包まれる面積の小さな下着が下腹の翳りを隠すだけなのにそこを掌で触られているようだ
極薄皮のストッキングを片足ずつ穿かされていく

まあ やっぱりぴったり
呼んだのねえ

と 呟きながらガーターベルトの留め具でストッキングを留めた婦人は立って店の奥から黒いつば広の帽子を持って来て私に被せ顔が隠れるようにセットした
私は余りの快感にガクガクと体を震わせて座っているだけだったけれど婦人に手を取られると震えはピタッと止まった
けれどまだ深い快感は続いていて自分の意思は消し飛んでいた
婦人は私の手を引いて黒革の高いヒールを履かせて 今まで気づかなかった広いショーウィンドウのブラインドを上げて 通りから見える所に私をディスプレイした
右手で帽子のつばを下げ左手は腰に軽く当てて脚を広く開いて立つマネキン
それが私

魔女に捕まった私は人目に晒されて賞賛のため息をつかれる度により深い快感をコルセットから与えられて 役目を果たしているのだ

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