ちょっとHぃショートショート

双樹\u3000一

イタリア人画家キリコの描いた有名な絵「ヘクトルとアンドロマケ」
同名の彫刻作品もあるが これはそのオマージュとでも言うものだろう
細身の銀の鎧と硝子の鎧のシルエットの二体の抱き合う彫刻
ナイトミュージアムの前庭を散策する
遊歩道に設置された灯かりに屋外彫刻が浮かび上がる
静かな遊歩道にヒールの音が響くのが気が引けるほどだ 
あっちにも現代彫刻の展示が と思う間もなく意識が遠ざかった

気がつくと真っ暗な上 身体が動かない
何かジェルのようなものが身体の表面を覆った上にピッタリした狭いものに押し込まれているように感じる
身動きは出来ないが僅かな筋肉の動きに肌がジェルを感じる
恐怖が全身を震わせると 突然 目の前が晴れ耳も耳栓を抜かれたように周りを感じる
さっきの夜の遊歩道の前庭
目の前には銀の鎧の彫刻が立っている
見ると 遊歩道を若い二人連れが来る
助けを呼ぼうとして頑張るが声も身動きも出ない

あ 見て 綺麗

うわ 色っぽい

と こちらを見ているようだ 何が
と 目だけを動かして見るが この彫刻の向こうは整備された林と花壇で夜は閉鎖中の筈 と ギクッと視線が止まった
前の銀の彫刻の鏡面に歪んで映る女の裸
まさかまさかまさか
確かめようは無いが銀の鎧の前には自分しか居ない

生きてるみたいね

硝子の鎧の中に水中花みたいに女性裸像を封じ込めるって見た事 ないな

話しながら お互いにスマホで写真を撮り合っている

見ないで 撮らないで お願い 助けて

離れ際に男がお尻を触って行った
連れの女に軽く打たれている
感触が有る 今 触られた感触がお尻に残っている
どう言う事
何人か入場者達が足を止めて鑑賞して行く
見られている
わたしの裸が見られて行く 
ナイトミュージアム終了間際の入場者が1人 まじまじと見つめた挙げ句 乳房と太腿を執拗に撫でて行った

感じてしまう
こんな異常な状況なのに 感じてしまう
月夜が前庭を明るく照らして影に裸身のシルエットが浮かび上がる

朝が来たら みんなに見られる わたしの裸が見られて撮られてしまう 

異常な興奮が身体を震わせて朝陽が銀の鎧を照らして目を眩ませると 意識が遠ざかって行った
 
自分の部屋で普通の朝に目覚める
ベッドの上で服も着ずに
夢にしては生々しい興奮が身体に残っている
自分の裸を野外の前庭に晒して赤の他人に見られて撮られて…
何かが変わってしまった自分が居た

逡巡と興奮
気持ちに整理についたのはナイトミュージアム最終日前日
1人で人気の無い遊歩道を鎧の像まで歩く
鎧の像は二体とも銀の鏡面の姿だったが自分には囚われている裸の男女の気配が色濃く感じられた
女のお尻から太腿をそっと撫でた
鳥肌を立てて身体を震わせる女を感じる事が出来た

狡い

踵を返して本館へ入る
塑像と彫刻フロアにそれはあった
「生けるオフィーリアの棺」と題された作品
オフィーリアが身を投げた川を象徴するように花々が流れを作った上に横たわる女の裸身を棺の形をした硝子のキューブが封じている
黒のベールをした女の顔は見えず黒い長い髪が広がっている

見つけた

と 言いながら棺の上から女の乳房を触った
女の乳首が痛いくらい尖るのを感じる
もう片方もそっと撫でる

明日から わたしが入るから
あなたは今夜だけ ね
あとは ずっとわたしの番
だから…

人の気配がしてくるまで ずっと乳房を撫で続けてあげた

コメント

コメントを書く

「その他」の人気作品

書籍化作品