ちょっとHぃショートショート

双樹\u3000一

人外

人が人で無くなる時の感覚をご存知だろうか
とは言え 俺が感じている感覚が分かるようならアンタは人間じゃ無い
満月の光を浴びた俺が狼となる感覚を知っているならアンタもご同業 狼男って事になるからな
同族が何処に居るのか分からない
親はどうやら 同族では無いので先祖返りか他の要因なのか
血に目覚めた16歳の俺が強姦魔か傷害犯にならなかったのはよほど当時の俺がヘナチョコだったおかげだろう
今は2メートルを超える体長の狼に完全変体しないで人の皮の下に押さえ込む事も出来る
満月期には超人レベル 新月期には自分の実力 その間をアップダウンする身としてはスポーツや格闘家を目指す訳にも行かなくて せめて格差を縮めようと若い時からフィットネス通いで体格の良いサラリーマンが出来上がった
今日も残業して遅くなったが満月が近く血が騒ぐんで会社帰りにフィットネスクラブに寄る
地域性か昼間は賑わうクラブだがナイトタイムはプールはほぼ貸切
今日もプールは照明の光度が半減しているから他の会員は使っていないようだ
夜目が効くので問題は無い
プールサイドに入って行くとスッと水面を切るものがある
何 と見ると音も立てずに小型のイルカが水面を飛び上がり飛沫も立てずに水中に消えた
唖然として見ている目の前で捻りを入れたり連続ジャンプをしたりするイルカ
しかも音をほとんど立てないキレの良さ
あれは真似が出来ないかも知れない
と 見ているとプールの波立ちが収まって 向こうのプールサイドへスッと水面を出た白い女の裸身が歩き出す
プールの角でどうやらフィットネスウェアを拾った女と目が合った
コーチングスタッフの娘だった

やあ と手を挙げる

娘の凝視とストップモーションが解けて ダッシュで俺の元に駆けて来る

どこから見てたんですか

と 食いつかんばかりの勢いだが全裸だ
目を逸らせながら 顎を掻く

取り敢えず 服 着ようか 俺も着替えるから

俺の見ている前で娘は手早くウェアを身につけて 更衣室へ俺を押し込むと

絶対 居て下さい
着替えて待ってますから プールエリアの入り口で

と 言い捨て走って去った

ああ 後も目まぐるしかったな
受付の同僚に お疲れ様でーす と愛想笑いをして俺には鬼のような顔で外へ促し いつの間に呼んだかタクシーに俺を押し込み 自宅らしいマンションに連れ込まれた

言いふらしても誰も信じませんよ だから脅しても無駄ですからね 斉藤さん

と だいぶ落ち着いて攻め口を変えて来たようだ 
まあ テンションは高いままだが

なんの事かな 白川さん

と 覚えていた名前を言った 
先に名前を言ったのはそっちだからお互いさまだ

何の事って 職場のプールで職員が裸で泳いでたって事ですよ

あ そう来たか
頭はいい子みたいだ

それは言いふらしたら俺の品位が下がる上に覗き見男痴漢男の異名を頂いてしまいそうだな

白川さんは思っている方向へ話が進まないので キョトンとして不審気に俺を見た

斉藤さん 変わってますね
驚いてないんですか

ああ やっと俺の事 見てくれた
ほら 見て

と 右腕を出す
満月期だから変わらないように抑えてる方だし 簡単にデカい狼の前脚になる

まあ ぶっちゃけ変な噂話して 自分に注目されたく無いのよ

ホンモノですか 初めて見た

だろうね 俺も初めて見たよ…

イルカ女なんて言わないで下さいよ 絶対

剣幕がまた巻き上がったから 分かった分かった と 手で押さえた

まあ お互い 弱味を握り合ったんだから良しとしないか
俺 満月近い時はあんまり異性の傍に居ない方がいいんだ

何故ですか

と白川さん 意地悪そうな顔で笑った

まあ そっちはどうだか知らないけど 俺は血が沸るんだよ
ぶっちゃけ 自分が通ってるフィットネスクラブの職員の家へ押し入った強姦魔になりたく無い訳

わたし 魅力なかったですか 結構絞って自信あったんですけど
わたしも月に影響されて体が火照るんですよ

どちらとも無くシャツを脱ぎ服を脱ぎ貪るようにお互いを犯した
俺は熱く相手は冷んやりしたスベスベの肌
まだ 硬いような乳房と尻を掴み捏ね伸ばす
平たい引き締まった腹を掴み腰を引き寄せ脚を高く上げさせて

朝まで続く饗宴だった
どちらがどちらのご馳走だったかは 分からない

俺たちはその後 当然ながら付き合っている
お互いが手放せ無いパートナーだし あいつは俺の知らない事も知っていた

え 狼にしかなれないの

と あいつは意外そうに言って ベッドで下半身をイルカの尾に変えた

最初にイルカで見られてるからだけど ホントは人魚に変身したのよ わたし
で 色々 試して全身イルカにもなれるようになったの

泳ぐのが好きだから他は試して無いけど意思次第じゃないかなあ

その後 俺たちは色々試しあって
俺もイルカやシャチ シェパードや虎や何かにもなれた
あいつはシェパードにはなれたが 余り四つ足には興味はないらしい

満月の夜の海でイルカとシャチになり 満月の林の中をシェパードで疾走して好きな場所で気ままに愛し合う

今のところ なんの不満もない
ただ感覚が鋭敏になって遠くに居る同族の異性の存在が感知され 俺の気が逸れる度にイルカの尾でぶたれたり 狼の尾に噛みつかれたり
あいつも俺から離れる積もりは無さそうだ

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