ちょっとHぃショートショート

双樹\u3000一

溶けた女

同僚の佐和が実験中に溶けてしまった
薬品や化学実験の最中じゃない
言語論理学の最中だ
まあ 内容は魔法と言うか 呪文の論理構造の解析 抑揚と音色 ペースと言った 世間的には眉唾物と揶揄されるようなものだが 佐和が唱えるのを機材を調整して目を離した隙に溶けていた
名を呼んで スタジオに入ると床に佐和の白衣と服 下着がクタクタと山になり床は水でびしょ濡れだった
まだ僅かに佐和の面影が水溜まりの真ん中にある と思う間に消えた
パニックになった自分を俯瞰している自分が居て そいつが上から指示を出して研究室の熱帯魚の水槽の魚ごと 水を流し 佐和と思われる液体を出来る限り回収した
疲れた
呆けていると 佐和の声の空耳がした

樋山くん 樋山くん

硝子窓に口をつけて喋っているような声だ

佐和か

そう わたし どうなってるの

どうやら 水槽の硝子が震えている

おまえ 溶けたんだ
今 水槽の中に回収してる 大丈夫なのか

大丈夫もなにも 分からないわよ
痛く無いし でも動けない

手を水槽の液体に入れてみた
人肌よりもやや熱い

な 何してるの
嗚呼ああ

と 佐和が呻いた

すまん 痛かったか
大丈夫か
 
答えが無い

佐和 佐和

何したの 今

怒ったような声色の佐和

いや おまえの入ってる水槽に手を入れたんだ
痛かったか

気持ち良かった



気持ち良かったの

なんだと
呆れた
教授には佐和は資料調査に東北へ出張に出た事にし 自分は休みを貰った
ついでに佐和の白衣はロッカーに干して服と下着は佐和のトートバッグに突っ込んで持って帰る事とし 水槽は液体が溢れないようにナイロンシートで養生した上で 慎重に車でマンションの自室に運んだ
エレベーターの無い三階は地獄だ
やっとの思いで狭いリビングのテーブルに置いて シートを取る と 目を見張った
白い裸体が折り畳むように水槽いっぱいに入っている
と 思う間もなく溶けた

佐和 おい 佐和 大丈夫なのか

返事を待つが ない
確かに女の裸体があった
佐和か どうかは見た事が無いから分からないが女の裸体であったのは確かだ

佐和

気持ち良かった…

なんなんだ おまえ

震動がするたびに すっごく気持ち良くて なんかすっごく気持ち良くて…

分かった 喋るな
兎に角 快感が関係あるのか ないのか さっき 実体化してたぞ

実体化って 元に戻ったの

一瞬な おまえか どうかまで確認してない って おまえしか居ないんだからおまえだろうが

わたし 裸じゃないの ねえ 見た 見たの

うるさい そんな事より他の事 心配しろ
元に戻し方の手掛かりは 今のところ その気持ちいいしか無いんだぞ

…服も無いのに 戻るの やだ

分かった 服は乾かしとくから ごちゃごちゃ言うな
クラゲ以下のおまえに人権は な い

ひど 酷い

うるさい 明日 考古学教室の1番デカい洗浄トレイ 借りて来るから それまで大人しくしろ
金魚の餌 入れるぞ

翌日 相当怪しまれながら1500×1000×300のトレイを借りまた苦労して三階へ運び込んだ 
リビングの家具をキッチンへおしこんでリビングの真ん中にトレイを設置し慎重に水槽の液体を流し込む
また 気持ちいいやらなにやら 緊張感のない奴
試行錯誤の結果 サイフォンを沈めて立てて口にセロファン紙を貼ると 糸電話のような音だが意思の疎通がスムーズになった

じゃ やるぞ

痛くしないでね

ふざけるな 金魚女

片手を液体に漬ける
ぬるめのお風呂のよう

嗚呼 うう

と佐和が呻く
ゆっくり掻き回すと抵抗が強まり裸体のパーツが現れる
片手で掻き回しつつ もう一方の手で乳房や太腿を撫でる
もう佐和の方は会話にならないので放っておく
実体化が進み もうひと息と言うところまでは行くのに 手を緩めると液体に戻る
何となく解決の糸口は見えたが どうすべきか

人命救助 緊急措置

そう独り言ちて 自分も服を脱ぎ 佐和の中に両手を沈める
実体化が進んだところで割れると危ないから佐和の顔の横にあったサイフォンをテレビ台の中へ避ける
いい加減怠くなって来た腕で佐和の体を抱き上げ 座位にして太腿を割り 佐和の中に腰を沈める
佐和が抱きついて来て足を腰に絡ませたので ヨイショっと立ち上がり そのままの形で寝室のベッドに運んで 続きをやる
今度はこっちも大層 気持ちいいが 油断は禁物なんで佐和が登り詰めて気絶するまで繋がったまま色んな体位を試す
ベッドで溶けてしまったらもう回収のしようがないんで頑張った
絶頂が来た佐和がほとんど叫ぶように声を上げて弛緩する
大丈夫 溶けないようだ
気がついたらうるさそうなので 上掛けを掛けて畳んだ佐和の服を枕元に置き退散
ベランダでタバコを吸ってたら 窓をノックして佐和が居た

サンキュ 助かった また研究室で

と そそくさと部屋を出て行った

分かった またな

と 閉まったドアに声を掛ける

色っぽかったなあ 気持ち良かった

さて この100ccほどの佐和をどうしてやろうか と手に持ったサイフォンを揺らした
サイフォンからは小さな声で俺の名前を呼ぶ佐和と佐和の呻く声が交互にした

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