ちょっとHぃショートショート

双樹\u3000一

蟷螂

冬とは言え ポンチョのような外套を纏った女は目を引いた
顔と手先 足先しか出ていないすっぽりとした上着
厚いのか薄いのか良く分からないが身体の線は出ない 
何故 気になるのか分からないまま 目で追っていると物陰にしゃがみ込んでいる男の向こう側に回り込んでしゃがんだようだ
と 男が立ち上がり歩き去ってゆく
女の姿は無い
男の影を見ても女はいない
大きめのビジネスバッグ 小さめのトランクサイズのカバンを持つ男が歩いて行く
狐につままれたような気分だったが その時はそれだけだった

あの男だ と薄暗い
サロンバーの隅の席を見た
観葉植物が半ば以上を隠す席だがこの間の女はいない
テーブルの下には黒いカバンを置いてある
と 男がテーブルの影でカバンを開けて大きな袋を取り出した
と思ったら 女がいた
そのまま自然に連れ添って店を出て行く
慌てて後を追った

おい と 声を掛けた
後先は考えていない

おい

男は振り向き 胡散臭げに見た

なに と男は言った

女だ 見たぞ と後は相手に考えさせる

男は目を細めて見て
ついて来い と言った

近場のマンションの一室
で 何を見たって

その女だ 何処から出した

女 これがか

男は女の外套を捲った
何にも無い
いや肘先からの両手と膝先からの両脚がマリオネットの人形のように外套にくっ付いている
しかし 人形では無い
女は笑い瞬きをしこの瞬間にも生きている

マリオネットケープだ マジックアイテムと言ったら信じるか
で 残りは此処だ
と 黒いカバンを開けると 首と手足の無い女の裸体が身を捩らせている
男は 乳房を乱暴に掴み揉みしだいた
女にケープを被せれば体も此処に入る
女は人形になって体は思いのままさ
男はカバンから体を乱暴にベッドへ放ってカバンを差し出した
カバンにはケープがもう1枚 入っている
先週 カバンにケープがもう1枚 現れた まあ こんな事もあろうか と思ってた

何故 くれる

何故って口封じに殺す訳にもいかんし オマエにケープを被せても後 持て余すだろう
そして 女を持ち運ぶ時はこう 


ケープを乱暴に畳むと頭や手足はどうなったのか折り畳まれた小さな布になった

カバンも何だっていいんだ ケープを入れとけば それが対のカバンになるし オマエが左手で開けなきゃ空のカバンだ
よう 共犯者 まあ楽しめ

カバンを渡されて茫っとした頭に知り合いの女たちの顔を思い浮かべながら部屋を出た

マンションの部屋
ベッドに座って頭を抱える男
傍らに小刻みに震える女の身体だけ

いつ 解放してくれる

頭を抱えたまま 男は言った
ケープの布が人間大に持ち上がって床に落ちる
女が笑いながら裸体のまま立っている

あら 貴方も随分 この身体で楽しんだでしょ
笑いながら 女は言う
魔女のケープを使って
今の男も直ぐ女を捕まえて女の身体を楽しみそうだから ひと月もすればまた魔女の誕生ね
私たちは生きて行くにも仲間を増やすにも男の精が必要なのよ
貴方も この身体を楽しめばいいじゃない
他人に抱かせるようなまどろこしい事 しないでも

おまえたちは魔女じゃない
蟷螂だ
バラバラにされるのもおまえたちじゃない
俺たち男だ おまえたちを犯したつもりで俺たちは喰われていくんだ

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