ちょっとHぃショートショート

双樹\u3000一

奪われた女

ミューゼズ と言うのが彼女たちをまとめて呼ぶ時の呼称だったけれど彼女たちが名乗っている訳では無かった
女流アーティスト と言うと今は性差別になるのだろうけど 写真 アブストラクト 具象絵画 彫刻  ブロンズ作家 人形作家 様々なジャンルで女性裸像をモチーフに作品を発表しているアーティストだ
作品展を合同で開く事も多く 常に各ジャンルで注目作を発表している事でまとめて紹介される事が多い
私が ミューズなんて畏れ多い
と 画家の多田エリカは言った
美に奉仕する と言うなら分かりますが美を支配するなんて事はありませんわ
と 余裕のある微笑みは何を言われても揺るがない自信の現れだろう
彼女たちのモチーフとなったモデルたちは 誰もが有名となり売れた
臈たけた美貌も中年期にさしかかった女優 まとめ売りされ泣かず飛ばずのアイドル 勘違いして中途半端なタレントにしがみついていた素人出の女
作家たちにヌードモデルを打診され 失うものの無い大胆さで裸身を晒した彼女らは作品と同じような底光りするような美しさを得て返り咲き 注目を浴びた
元々 彼女たちが持っていた美しさですよ
と ブロンズ作家の加藤まなみはインタビューで語った
私はそこを見る眼と作品に昇華する技量を持っていただけです
無名有名を問わず 素人玄人も無関係にモデル志願をする女は後を絶たなかったが選考基準は謎で街角で声を掛けられたり事務所を通したりのアプローチはそれぞれだった

楽にして と多田エリカは声を掛けて
アトリエの大きな窓の側のベッド程の大きさのカウチを示しながら言った
清潔な真っ白なシーツが無造作にかけられている
あ まだ 脱がなくていいから
今日はポーズを決める為に色々 動きながら デッサンしていくから
と 離れた位置に椅子を移しながら 夏 海子に言った
売れないタレントの海子はデビュー直後はグラビアを飾ったがその他大勢に埋もれた1人だった
だから 事務所からヌードモデルの仕事が入った と言われた時はとうとう来るべき時が来たか と腹を括ったくらいだ
お情けで最後に中堅カメラマンに撮って貰った少年誌のセミヌードはナンの反響もなく 後は青年誌のエグいヌードかモザイク入りのネットムービーか と思ってたところだ
あ それと と 多田エリカが言った
ホントニアタシデイインデスカ とか言わないでね 気分 下がるから
事務所には言ってあるけど 今日から2週間 指定日に5日通って貰ってデザイン決まったらひと月 作業にかかるから 宜しくね
言うだけ言うと 海子をカウチに寝ころばせたりうつ伏せにしたり腰掛けさせたり言葉や身振りでポーズを変えさせてその日は何点かのデッサンを描いて終わった
次の指定日では 座ってポーズを色々変えて 最終的にカウチに浅く腰掛け両腕を背凭れに掛け脚は拡げてポーズをとった
大体 こんな感じかなぁ と多田エリカは独言のように言った
ありがとう 今日はこれでいいです
次回から 服 脱いでポーズして貰うから とまだデッサンに手を入れながら ヒラヒラ手を振った

ああ はい 海子です 今 終わりました
ええ でも次回からヌードらしいです
と 事務所に報告を入れて 次の仕事もないので友達の勤めてるスナックへ行った

夏子 多田エリカさんのモデルしてんだって と サワー出してくれならがらユミに聞かれる
その他大勢から離脱した元モデル仲間だ
あああ ついに海子もスターダムかあ
と 冷やかし半分やっかみ半分 笑いながら言った
ミューゼズの1人の銀細工のレリーフ見た事あるけど凄かったよ
なんかホント 目の前に裸の女神が居るみたいなリアル
海子のも発表されたら見に行くね とそこは本心から言ってくれて海子も素直にありがとうと言えた

さすがに素っ裸は緊張した
でも そこは素人モデルも扱い慣れたアーティストだけに終了間際には少しうとうとした
見る と 多田エリカが服を着た海子に言った
いいんですか と回り込みながら見た
仕上がるまで見せない作家もいるけど私のは具象と抽象の混血だからね
と 見せて貰ったデッサンは腰掛けた姿勢の女が脚を拡げ首をのけ反らせ手足は混沌に呑まれたように消えていた
え エロい と口走って自分の口を押さえた
あ 分かる 嬉しいなあ
気にする様子もなくエリカは笑った
作品じゃバックはイマジネーションに従って色んな素材も使っていくから 身体の肉感やエロティックな感じは際立っていくわよ
じゃ あと2回 詰めて行くから 夜遊びしないで体調 気をつけてね
見透かされたように言われて 作り笑いで頭を下げた

本番の最初はデッカいキャンバスに下絵を描いて行く
バックの部分は何も描かず海子の裸が形を盛り上げて行く
パテのような素材でレリーフのようなヌードが作られて行く
海子の50%増しのサイズ
大きな裸の女がキャンバスに首をのけ反らせる
バックは異様だった
様々に断裁された女もののバックやハイヒール 下着 服 マネキンの腕や脚 アクセ
床に寝かされたキャンバスに配置しては接着剤に黒の塗料を混ぜたスプレーを吹き付けて固着されていく
最初の3週間くらいで海子のモチーフ部分は終了していたが同じポーズを取らされたまま バックの作業を詰めて行った
異様な迫力が画面から迫って来た
裸の女が本当に混沌の中へ呑まれて行くようなリアルさだ
私が呑まれていく と思った

今度で 最終仕上げだからね と帰りに声がかかった
あ はい 次回で仕上がるそうです
ええ 凄い絵ですよ どんなって それは作品発表されてから見て下さいよ
と さすがにエロい絵だとは 言いにくい

雑然としていたアトリエがスッキリと整理されてカウチと立てられたキャンバスと多田エリカの椅子だけが窓からの光に明るい
今日まで ご苦労様
最後まで宜しくね
と ポーズをとるように身振りをした
いつものカウチに腕を回すと腕を押さえられた
エッと思う間もなく冷たい感触が手首を止めた
首を回すと加藤まなみともう2人 ミューゼズの特集で顔を知ってるアーティストが居た
その間に足首にも冷たい感触がして動かせなくなった
向き直って何事か聞こうとする唇が口付けられて塞がれ甘い物が喉を降って意識が無くなった

矢鱈と気持ちが良かった
駄目だめダメ と 叫んで目が覚めた
両乳首にも股間にも女たちが吸い付き舐め上げている
お尻の穴からも何かが入れられて熱いものがお腹に上がってくる
ガクガクと身体が震えて力が抜ける
今度の子も なかなかいいじゃない と声がする
んー ちょっと線が甘いけどねー
この間の貴女のモデルの子の方が好みよ
あれは テイストが違うじゃない
でも あの子は肉の身体の方も欲しかったわあ
わかる あるよね そんな時

耳元で聞こえる会話には反応出来ず のけ反らされた首から口付けが離れた隙に
首を戻したら力が入らず 今度は俯いてしまう
乳房を弄っていた2人も股間を弄っていた女も離れ 離れ際に何かチューブを引き抜いていく
お尻に差し込まれていたもののようだ
床一面に何か細かい模様が描かれている
大きな曼荼羅のようなパターン

雌羊の血液もあんまり度々 同じ所から仕入れるのも目立つわねぇ
作品の素材って言うのも苦しいし
まあ なんか考えましょ
共同で牧場所有するのも 手ね
そのうち ね

裸の女たちが話しながらパターンを完成させて サークルの外回りに香を配置して 身体に血を浴びてお互いを犯し始めた
6人の女がお互いに相手を替えながら貪るように乳房を女陰を尻を奪い合い与え合い 途切れない喘ぎをあげ続ける
いつか海子はカウチに縛られた自分が奇妙な円陣の中央に置かれて首を項垂れているのを見下ろしていた
気がつくと女たちは皆 着替えて海子の手足の束縛を解き服を与えていた
服を着た海子はバックからスマホを取り出して 事務所に仕事が上がった報告を入れ 振り返りもせずに出て行った
また 一つ手に入れたわ と多田エリカは言った
最初の奴が変わった奴で良かったよね と加藤まなみは言った
魂くらい 死んでから幾らでもあげる積もりだったけど 後世に残る作品と引き換えに身体を寄越せ には参ったよね
じゃ 若いモデルの身体じゃ どうって交渉したらオッケーで ついでに残ったモデルの魂まで作品に付与してくれて さ
ま 魂 無くても私の作品は最高だけどね
あとの奴らも身体がいいって言ってくれたから まだまだやれるし
モデルは自分たちで探して来るから手間要らず
女たちは高らかな笑い声を残して アトリエを出て行った
そうして キャンバスの中で
大きな海子は犯され続けていた

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