ちょっとHぃショートショート
甕の中
悪くない と女が言った
TシャツGパンに白衣を羽織った化粧っ気のない女
わたしだ 何故か私がいる と思った
頭がふわふわして考えが纏まらない
青銅の大甕
最後の記憶は足場から大甕を覗き込んだところだ
2.55mもある青銅の大甕は館がイギリスの貴族が個人的に経営していた小さな博物館から購入したものだ
百年以上前に地中海で発掘されたギリシャ期以前の大甕で時代的に製造が不可能な巨大さと厚みにも関わらず研究されておらずオーパーツ的な扱いのまま 先年 所有していた博物館が何やら大不祥事とやらで閉鎖されオークションにかけられた
由来が定かで無く贋物扱いで安く手に入れられた と主任が教えてくれた
表面のレリーフは葡萄の蔓で装飾され 五頭身ほどに描かれた 充分写実的な人々が葡萄を狩り酒を作り羊を焼き宴会する様子が甕を取り巻いていた
これらの紋様と甕の内容物の分析からバッカス神 或いはその前身となる神を祀るものとされていた
一点 等身大の余りにもリアルな乙女のレリーフを除いて
甕の中央に横座り両手を上げるように鎖で繋がれた様子はどう見ても人身御供か神への捧げものだ
似つかわしく無い と言うのは誰もが思う事で 製造法を除いても異質なものだった
資料室の検査部に持ち込まれ 分析前にスキャニングや細部の撮影の為 足場を組んだ
昼休みに入ったので最後に鍵を掛けるべく 点検して足場から中を覗き込んだ時に後ろから誰かに押されて…
悪くない と女はもう一度言った
聞いてるんだろ と続けた
外つ国のようだが構わない 楽しめればいいだけだからな
何を言ってるの あなた 誰 と言うつもりが言葉は出ず 甕がグラスハープのように ワーンと鳴った
なかなかいいじゃないか と女は笑った
お前の準備が整うまでこの身体は借り受ける こちらも準備が必要だからな
今夜の満月から次の満月の夜まで 楽しみに待って居るがいい
言うだけ言うと女は手を伸ばして乙女の乳房をそっと撫でた
頭の芯が真っ白に快感が突き抜けて 意識が飛んで行った
それからは地獄だった 天国とでも言うのか
検査の為 甕の細部を調査中に乙女のレリーフに触れる度にグラスハープのような共鳴音が鳴る事に気づいた同僚が様々に設定を変えて甕の各部を摩擦した
乙女像部分にだけ起きる現象だと分かってからは 集中して乙女は磨かれた
女の愛撫のような触れ方でさえ性行為で得られる何倍もの快感だったのだ
わたしは果て 果て 果て
果てしなく哭いた
わたしの姿をした女は資料室の終業後 何処からとも無く湧き わたしを愛撫した
気がつけば 化粧っ気のないまま 肌は抜けるように白くぬめぬめと吸いつくようだった
唇は紅もリップもささぬのに紅く ピンクの舌でくるりと女は舐めた
だいぶ 仕上がって来たな と女は独り言ちた
こちらも 上々だ と女はわたしのものであった両の乳房を両手で掬い上げた
下着も着けていないのに 何倍もサイズアップしている乳房は女の手の平で揺れていた
明日が満月だ
また この時間に来るぞ
と 女は消えた
一日が九時五時の快楽に過ぎ 消えた
気がつけば 暗闇の中に居た
身体がある と飛び起きるように身を起こした
裸のようだった
両腕で自分を抱きしめると いつもは無い抵抗があり豊満な乳房が腕を押し返している
夢では無かったのか
茫然と身体を撫でれば引き締まったウエストと柔らかにボリュームのある自分の太腿がある
出来たか と頭の上から声が降る
訳の分からないまま太い腕に掴まれて暗闇から引き揚げられる
青銅の大甕の中に居たようだった
筋肉の膨れ上がった赤髪の2mを越す白人の男がわたしの両手首を右手一本で掴み 見下ろしていた
誰なの とわたしは叫んだつもりが 掠れ声が漸く漏れただけだった
神だ と男は言った
少なくともお前たちが神と崇めたものだ
まあ 私がお前たちに与えられるのは私が貪る快楽の残滓 或いは余波とでも言うものに過ぎないがな
見ろ と男はわたしをぶら下げた腕を回して 甕の上から下を見せた
何かが床を蠢いている
白いなにか 裸の人間だ人間たちだ
同僚たちだ 受付嬢だ 事務職員たち 上司たちもいる
数少ない女たちが二人三人の男たちに貪り喰われるように犯されている
掴まれた両腕のまま 足掻こうとしたわたしはそのまま横抱きにされ 楽器のように愛撫された
自分の肉の身体を撫でられたのは 甕から出されて初めてだった
ただの愛撫が性行為で得られる快感の何十倍もの甘い熱さでわたしを仰け反らせた
それでも 次を待って身体を開く自分がいた
神の快楽だ と男が言った
おまえは器だ この為にチューニングした器だ
受け入れる精神を準備する為 甕に移し
肉の身体の方は俺が毎晩 男をあてがって育て上げたよ
準備不足の乙女はすぐに壊れて満腹にならない
向こうでは少し無茶をし過ぎて危うく暗い倉庫に仕舞い込まれるところだったからな
神の快楽だ ともう一度 男は言った
お前は上手く行ったから百日はお互い 楽しめるだろう
その後はあの中から壊れなかった女を拾って育てるとしよう
甕が ワーンと哭き
何十人もの快楽の呻き声が高く低く響く中 わたしは座位のまま貫かれ今こそ神の快楽の炎の中に投げ込まれ哭き続けた
百日が百年にも千年にも感じられる快感の叫びの中で永遠に
TシャツGパンに白衣を羽織った化粧っ気のない女
わたしだ 何故か私がいる と思った
頭がふわふわして考えが纏まらない
青銅の大甕
最後の記憶は足場から大甕を覗き込んだところだ
2.55mもある青銅の大甕は館がイギリスの貴族が個人的に経営していた小さな博物館から購入したものだ
百年以上前に地中海で発掘されたギリシャ期以前の大甕で時代的に製造が不可能な巨大さと厚みにも関わらず研究されておらずオーパーツ的な扱いのまま 先年 所有していた博物館が何やら大不祥事とやらで閉鎖されオークションにかけられた
由来が定かで無く贋物扱いで安く手に入れられた と主任が教えてくれた
表面のレリーフは葡萄の蔓で装飾され 五頭身ほどに描かれた 充分写実的な人々が葡萄を狩り酒を作り羊を焼き宴会する様子が甕を取り巻いていた
これらの紋様と甕の内容物の分析からバッカス神 或いはその前身となる神を祀るものとされていた
一点 等身大の余りにもリアルな乙女のレリーフを除いて
甕の中央に横座り両手を上げるように鎖で繋がれた様子はどう見ても人身御供か神への捧げものだ
似つかわしく無い と言うのは誰もが思う事で 製造法を除いても異質なものだった
資料室の検査部に持ち込まれ 分析前にスキャニングや細部の撮影の為 足場を組んだ
昼休みに入ったので最後に鍵を掛けるべく 点検して足場から中を覗き込んだ時に後ろから誰かに押されて…
悪くない と女はもう一度言った
聞いてるんだろ と続けた
外つ国のようだが構わない 楽しめればいいだけだからな
何を言ってるの あなた 誰 と言うつもりが言葉は出ず 甕がグラスハープのように ワーンと鳴った
なかなかいいじゃないか と女は笑った
お前の準備が整うまでこの身体は借り受ける こちらも準備が必要だからな
今夜の満月から次の満月の夜まで 楽しみに待って居るがいい
言うだけ言うと女は手を伸ばして乙女の乳房をそっと撫でた
頭の芯が真っ白に快感が突き抜けて 意識が飛んで行った
それからは地獄だった 天国とでも言うのか
検査の為 甕の細部を調査中に乙女のレリーフに触れる度にグラスハープのような共鳴音が鳴る事に気づいた同僚が様々に設定を変えて甕の各部を摩擦した
乙女像部分にだけ起きる現象だと分かってからは 集中して乙女は磨かれた
女の愛撫のような触れ方でさえ性行為で得られる何倍もの快感だったのだ
わたしは果て 果て 果て
果てしなく哭いた
わたしの姿をした女は資料室の終業後 何処からとも無く湧き わたしを愛撫した
気がつけば 化粧っ気のないまま 肌は抜けるように白くぬめぬめと吸いつくようだった
唇は紅もリップもささぬのに紅く ピンクの舌でくるりと女は舐めた
だいぶ 仕上がって来たな と女は独り言ちた
こちらも 上々だ と女はわたしのものであった両の乳房を両手で掬い上げた
下着も着けていないのに 何倍もサイズアップしている乳房は女の手の平で揺れていた
明日が満月だ
また この時間に来るぞ
と 女は消えた
一日が九時五時の快楽に過ぎ 消えた
気がつけば 暗闇の中に居た
身体がある と飛び起きるように身を起こした
裸のようだった
両腕で自分を抱きしめると いつもは無い抵抗があり豊満な乳房が腕を押し返している
夢では無かったのか
茫然と身体を撫でれば引き締まったウエストと柔らかにボリュームのある自分の太腿がある
出来たか と頭の上から声が降る
訳の分からないまま太い腕に掴まれて暗闇から引き揚げられる
青銅の大甕の中に居たようだった
筋肉の膨れ上がった赤髪の2mを越す白人の男がわたしの両手首を右手一本で掴み 見下ろしていた
誰なの とわたしは叫んだつもりが 掠れ声が漸く漏れただけだった
神だ と男は言った
少なくともお前たちが神と崇めたものだ
まあ 私がお前たちに与えられるのは私が貪る快楽の残滓 或いは余波とでも言うものに過ぎないがな
見ろ と男はわたしをぶら下げた腕を回して 甕の上から下を見せた
何かが床を蠢いている
白いなにか 裸の人間だ人間たちだ
同僚たちだ 受付嬢だ 事務職員たち 上司たちもいる
数少ない女たちが二人三人の男たちに貪り喰われるように犯されている
掴まれた両腕のまま 足掻こうとしたわたしはそのまま横抱きにされ 楽器のように愛撫された
自分の肉の身体を撫でられたのは 甕から出されて初めてだった
ただの愛撫が性行為で得られる快感の何十倍もの甘い熱さでわたしを仰け反らせた
それでも 次を待って身体を開く自分がいた
神の快楽だ と男が言った
おまえは器だ この為にチューニングした器だ
受け入れる精神を準備する為 甕に移し
肉の身体の方は俺が毎晩 男をあてがって育て上げたよ
準備不足の乙女はすぐに壊れて満腹にならない
向こうでは少し無茶をし過ぎて危うく暗い倉庫に仕舞い込まれるところだったからな
神の快楽だ ともう一度 男は言った
お前は上手く行ったから百日はお互い 楽しめるだろう
その後はあの中から壊れなかった女を拾って育てるとしよう
甕が ワーンと哭き
何十人もの快楽の呻き声が高く低く響く中 わたしは座位のまま貫かれ今こそ神の快楽の炎の中に投げ込まれ哭き続けた
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