ちょっとHぃショートショート
遺失物
女は焦っていた
地方からの出張の前乗りに浮かれて
ビジネスホテルのチェックインが
かなり遅くなっていた
おまけに地下街からの出口を間違えたらしく
スマホの位置情報はホテルから反対側に
居るようだった
ショートカットするには
ちょっとした緑地公園を横切るルート
しかないようだったが
出入り口は施錠されているだろう
諦めきれずに小さな通用門を覗くと
扉自体が無い構造のようで
出口も同じ構造である事に賭けて
暗い公園を小走りに歩いて行った
公園の半ば辺りまで来た所で
白い壁にぶつかった
5メートル程の高い壁で公園中央に
円形のサークルを作っているように
なだらかに湾曲していた
壁の下側に何かが並んでいるように
連なっている
次第に近づくとそれはオブジェのようで
壁の向こうに椅子があるように
宙に腰掛けたような形で脚のオブジェが
並んでいるのだ
壁の湾曲に沿ってずっと向こう側まで
壁を右か左に回り込むしか通り抜ける方法は
無さそうだ
脚は精緻な作りでそれぞれ違っており
ヒールを履いたものサンダル履きのもの
スニーカー私学生の履くような革靴
いずれも女の脚で太腿から座った形で
地に足を付けている
ずっと女の脚が続いている
公園の大きさにしては大き過ぎる構造物だ
偏執狂のようにこのオブジェを作った人間も
これを設置させた責任者も気味が悪い
そう思いながら目を上げると
どうやらオブジェは脚だけではなかった
ようで白い壁に裸体のレリーフがあった
脚に対応した上半身が壁から身体を
押し出そうとでもするように
裸の乳房を突き出している
いよいよ趣味の悪い と顔を顰めた女は
それぞれのレリーフの女たちの顔が
苦悶に歪んでいるのに気がついた
口を大きく開けたもの
口を窄めたもの
口を横に伸ばしたもの
口から舌ののぞくもの
繰り返し 繰り返し
女たちの口を辿るように
ヨロヨロ歩いて行って気がついてしまった
女たちは それぞれ
同じ言葉を繰り返している
た す け て
タ ス ケ て
た す け て
タ ス ケ て
た す け て
タ ス ケ て
怯えた女が駆け出そうとした時
グイッと腕を掴まれ 靴が片方脱げてしまった
朝 噴水広場の白いサークルベンチの側に
靴が片方 落ちているのに清掃員は気がついたが
もう片方は辺りには見当たらず
一応 管理事務所の遺失物とした保管した
ある夜 散々酔っ払って公園に迷い込んだサラリーマン二人が
女の脚ばかりの彫刻を見た と翌朝 職場で話したが誰も信じなかったし
その中の一つの脚は片方だけ裸足であった事など
彼らも見ていなかった
地方からの出張の前乗りに浮かれて
ビジネスホテルのチェックインが
かなり遅くなっていた
おまけに地下街からの出口を間違えたらしく
スマホの位置情報はホテルから反対側に
居るようだった
ショートカットするには
ちょっとした緑地公園を横切るルート
しかないようだったが
出入り口は施錠されているだろう
諦めきれずに小さな通用門を覗くと
扉自体が無い構造のようで
出口も同じ構造である事に賭けて
暗い公園を小走りに歩いて行った
公園の半ば辺りまで来た所で
白い壁にぶつかった
5メートル程の高い壁で公園中央に
円形のサークルを作っているように
なだらかに湾曲していた
壁の下側に何かが並んでいるように
連なっている
次第に近づくとそれはオブジェのようで
壁の向こうに椅子があるように
宙に腰掛けたような形で脚のオブジェが
並んでいるのだ
壁の湾曲に沿ってずっと向こう側まで
壁を右か左に回り込むしか通り抜ける方法は
無さそうだ
脚は精緻な作りでそれぞれ違っており
ヒールを履いたものサンダル履きのもの
スニーカー私学生の履くような革靴
いずれも女の脚で太腿から座った形で
地に足を付けている
ずっと女の脚が続いている
公園の大きさにしては大き過ぎる構造物だ
偏執狂のようにこのオブジェを作った人間も
これを設置させた責任者も気味が悪い
そう思いながら目を上げると
どうやらオブジェは脚だけではなかった
ようで白い壁に裸体のレリーフがあった
脚に対応した上半身が壁から身体を
押し出そうとでもするように
裸の乳房を突き出している
いよいよ趣味の悪い と顔を顰めた女は
それぞれのレリーフの女たちの顔が
苦悶に歪んでいるのに気がついた
口を大きく開けたもの
口を窄めたもの
口を横に伸ばしたもの
口から舌ののぞくもの
繰り返し 繰り返し
女たちの口を辿るように
ヨロヨロ歩いて行って気がついてしまった
女たちは それぞれ
同じ言葉を繰り返している
た す け て
タ ス ケ て
た す け て
タ ス ケ て
た す け て
タ ス ケ て
怯えた女が駆け出そうとした時
グイッと腕を掴まれ 靴が片方脱げてしまった
朝 噴水広場の白いサークルベンチの側に
靴が片方 落ちているのに清掃員は気がついたが
もう片方は辺りには見当たらず
一応 管理事務所の遺失物とした保管した
ある夜 散々酔っ払って公園に迷い込んだサラリーマン二人が
女の脚ばかりの彫刻を見た と翌朝 職場で話したが誰も信じなかったし
その中の一つの脚は片方だけ裸足であった事など
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