ちょっとHぃショートショート

双樹\u3000一

AND THEN 20 影使い

ご無沙汰していて済みません

とすっかり馴染みになってしまった応接に通されて奥さまに挨拶した

いえいえ 私が煩く柳さんに会いたいと言ったから
ご迷惑じゃなかったかしら

とんでもない
またお会い出来るのを楽しみにしていました

あら!お上手ね
じゃ そちらの方が…

あ 矢島七海と言います
この度は色々 骨折りを頂いて助けて頂いてありがとうございました

あら しっかりされている
で どう?柳くんは優しくしてくれる?

奥さまに聞かれて  七海は目を白黒させている

あ 奥さま 七海には詳しい説明をしていないんですよ

あら そうなの?
ごめんなさい 不躾になってしまって…

お前は先走るからだ

と今まで口を引き結んでいた理事長が悪い顔をして奥さまを揶揄した

いや 儂も若い頃は柳と同様の趣味をしていてな
ウチのはその頃からのパートナーだ

理事長は愛妻家だから ね

と俺が七海に説明すると理事長は苦い物でも飲まされたような顔をしたので奥さまは ほほほ と笑った

柳さんはいつも私の仇を取ってくれるの
ウチの人が黙ってやられているのは柳さんくらいなのよ

いえ 奥さま それは仰らないで下さい
理事長は後からしっかり貸しを取り立てる方なんで

ほほほ と可笑しそうに笑う奥様はその辺りの事情にも通じている

大学ではセクハラやらモラハラやら言われるんで聞かなんだが 柳はちゃんと可愛がってくれるのか?

と理事長が無垢付けに聞くので七海は真っ赤になって俯いた

…はい

報告では意思を無くした人形のような状態である となっていたからな
先日会った時にはまだ 柳に隠れて頼りない状態だったから 今日は随分 驚かされたんじゃ
立ち居振る舞いと言い お茶出しも堂に行っておった

家事は随分 上達しましたよ七海は
ふふ 来たばかりの時は

ああ 言わないで下さい!

ははは と皆で笑っていたら 珍しくテーブルに置いてあったタブレットが着信音とバイブで着信を主張した

ああ そうじゃ 今日 柳が矢島さんとウチへ来ると言ったら 美香がどうしても話したい と言うんでな

理事長がタブレットを取ってビデオ通話状態で俺の前に立てた

…ご主人様 お久しぶり

ああ 美香 変わらないね
まだ二十代のようだね

ご主人様のおかげよ
どう?お祖父様が無茶を言ってるって聞いたけど?

そう言ってくれるのは君と奥さまだけだよ

何を言うか!クソジジイ呼ばわりをする癖に!

冗談めかして理事長が声を出すが俺は笑って流す

まあ 君と同じ境遇の子だったしね
でも大丈夫だよ 強い子だし良い子だからね?

あら ベタ褒めね 妬けちゃうかも?

ふふ 何言ってるんだ
婚約者とはどう?上手く行ってる?

それこそ大丈夫よ
身体の相性もいいし野心家だし
女馴れした誠実な人よ あなたの指定通り
私の価値と私の身体の価値がちゃんと分かっている人
あなたと違う所は野心家なだけ

ははは と理事長は笑った

確かにな コイツは欲が無さすぎる

それに ね将来 私があなたの子供を産むかも知れないのも了承済みよ

おいおい…

あなたに感謝してるからだって
私と巡り会えたのも 私をこんな女にしてくれたのも

美香が美香だったからじゃないか
俺は手伝っただけだよ

ふふ と美香は美しく笑い

一緒に来ているって聞いたんだけど… 良い?

ちょっと待って

とタブレットの向きを変えて俺の横に七海が入るようにした

話していた君の前の俺のペットだ 美香
美香 今 俺のペットになっている七海だ

七海さん 美香です
あなたの苦しみがご主人様に包まれて癒える事を祈っているわ
どう?可愛がって貰っている?

はい! と挑戦的に七海が答える

ふふ と美香が笑う

大丈夫よ ご主人様を盗ったりしないわ
私はもう 満たされているからいいの
そのうち あなたも分かると思うわ
あなたはしっかりご主人様の傍に居てあげて
そして 愛されて
今はそれだけでいいと思うから
じゃあ ご主人様
さよなら

ああ 分かった
元気でな

なんじゃ 儂には何も無しで切りおった

と理事長は暗くなったタブレットに文句を言った

はいはい じゃ夕食にしましょうね
あ〜 私も五十年も若かったら内緒で柳さんに可愛がって頂くんだけど

理事長は肩を竦めて 美香に毛を逆立てていた七海は毒気を抜かれたような顔をした

コメント

  • あーのん

    ワロス

    0
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