ちょっとHぃショートショート

双樹\u3000一

恋3 影使い

課題に期末試験 レザースーツの縫製作業と忙しくしていると 柳くんに会いに行く時間が取れなかった
期末試験明けの2月にクラブハウスの方へ歩く柳くんを見かけたがこの間の美人と2人だった
同じサークルの先輩だろうと近づこうとすると2人は別れて柳くんは残り 女性はクラブハウスに入って行った
女性を見送った柳くんは時間を潰すように柱の影のベンチに座ってスマホを弄っている
僕は踵を返してその場を離れた
何が僕の胸を苦しくするのか分からなかった
2人は恐らく付き合っている
皆に知られないようにして
高校でも良く見かけた雰囲気だ
だけど 何故 僕がそれを気にするのか
と 考えた時 僕は自分が柳くんが好きな事に思い至った
友達として?いや 僕はあまり そうした関係に気持ちを入れた事がない
誰と誰が仲がいい とか誰の方が自分と仲がいいとかを気にするほど 友達に比重を置いて日常を過ごした事は無かった
そうか、僕はあの時 恋に落ちたのか
地下カフェでスケッチブックが落ちたあの時に
それは叶う事の無い苦しさだった
2月
敢えてサークル棟には近寄らなかったが偶にキャンパスで見かける柳くんは恋をしている男の顔をしていなかった

奇妙な高揚
奇妙な絶望

僕が感じた柳くんの表情だった
何が柳くんをくるしめているのか
僕は自分の苦しみと同質のモノを感じた
恋の高揚感と喪失に対する恐怖
僕のは分かりやすい
柳くんに気持ちを知られる訳に行かないからだ
でも 柳くんは付き合っているなら…
3月
柳くんの恐怖と狂気
僕は顔を伏せてすれ違う
柳くんが気づいたふうはなかった
卒業式に卒業して行く4回生を送る輪の中に柳くんは居た
見え透いた笑顔を貼り付けて
やっぱり柳くんの相手はあの女性で卒業と共に別れが来たのだろうか?
でも それにしては柳くんの表出する喪失感は大き過ぎた
好きな相手の失恋がこれほどのダメージとして僕を傷つけるのはどうした訳だろうか
4月
ガイダンスに柳くんを見かけ無かった
当然 学部が違うから会場に居たものの気が付かなかったかも知れない
でも 後日 ガイダンス資料を取りに来るよう掲示された者の中に柳くんらしき名前があった

柳 陽司

と言うのが彼の名前らしかった

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