ちょっとHぃショートショート

双樹\u3000一

ファミ9 影使い

2月月末
別れまで2週間を切った
卒業式でしおりは部屋を出る
戻っては来ない
奇妙な怒りが胸の中を焼いている
自分のモノを奪われる怒りか?
いや もっと根源的な怒り
自分の手や脚を捥がれて行く と言う理不尽に対する怒りだ
触れる者に対する殺意にも近い怒りが胸を焼く
美しいしおりの柔らかな身体を抱きながらある時は荒々しく壊してしまうくらいの勢いで犯し ある時は羽で触れるほどの軽さで身体中にキスをする
俺は狂っている と思う

しおりには何もかもバレている何気なさで日常を演じている

卒業式の朝 耐え切れずに先に部屋を出る
そうでもしないと しおりを部屋に閉じ込めてしまいそうだったからだ
昨夜 いや 朝方まで寝かせずに抱き続けた
そのまま 寝過ごしてくれたらいいのに と思いながら

それでもしおりは卒業式にパンツスーツに胸元にコサージュを付けて出席している
振袖袴が多い中 背筋を伸ばして立つしおりは美しかった
一度 目を合わせてニッコリと微笑んでくれた
笑い返せたか 自信が無い

式が終わって "ファミ先輩"を囲む輪の中に自分も居る
何を話し 何を笑ったか 分からない

そのまま 駅に行く と言うしおりを見送って 部屋に帰る
誰も居ない部屋に照明をつける
しおりのソファーベッドとファンシーケースが残っている
テーブルの上にメモ書きとチョーカーが置いてある

荷物は処分して下さい
幸せでした
また 巡り会えたら
     しおり

と あった

目を瞑らなくともありありと思い出せるしおり
指で宙を切ると 裸のしおりの現し身が立っている
昨日 抱いたしおり そのままの

だが目には何も映らない
俺と同じ目をしている
俺は現し身を抱きしめたまま眠り 何日も学校を休んだ

姉からメッセージが来た

悲しければ 泣け!
傷つけるのが自分であっても わたしは許さん!

姉らしい言葉に俺は笑い そして吠えるように泣いた
空っぽだと思っていた胸の中が温かくなり笑顔のしおりの姿を久しぶりに思い出した
現し身は消したつもりもないのに消えていた

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