かずは2 影使い

すまないな
電話で説明したようにウチの事務員がどうしても樋口に会いたいって言うんでな

いいわよ　お客様だもの
でも　約束通り

ああ　誠　頼む

キヨちゃん　この人今からバイトに入ってくれるから　お願いね？
誠さん　宜しくね？

はい　分かってます

かなめちゃんは唖然とした顔で2人を見送り　わたしとご主人様は笑いを堪えた

こっちの人がかなめさんね
じゃあ　こっちが

はい　梓です
斉木さんとお仕事させて貰いました

斉木　元気にしてる？
連絡は頻繁にくれるけど　寄り付いてくれないのよ　あの子

元気ですよ
村井さんが２人で押し掛けてくるなって言うくらい

あらあら　じゃあ　あなたもなかなかなものね

と　綺麗に笑うこの人はどこか怜子さんに似ている

まだ旅行の時の事を引きずってるって事は無いんだろうな？

と　ご主人様が聞くとかずはさんは片方の眉を上げるような表情をしたけれどご主人様が笑って首を振ると肩をすくめて

そうかも？
あれから待ってたけど何も言ってくれないし
約束通り　柳くんに振られた時は慰めてくれたけど

かなめちゃんが身を乗り出して

あの　あの　社長って若い時って女好きの悪い男だったんですか？

相変わらずのかなめちゃん振りだ

ちょっと目を見張ったかずはさんはお客さん達が振り向くくらい　笑った

あ〜　可笑しい
女好きじゃあ無かったわよ？かなめさん
でも　悪い男だったかな？
かなめさんはお幾つ？

二十二です

あの頃のわたしと同じ歳ね
もう少し大人になれば分かるかなぁ

お客様　歓談はお静かにお願いしますね？

と　誠が店のクラシカルなメイド服を着て珈琲を四つ　わたし達の間に置いた

あら　わたしの予備の服が丁度合うわね
良かった

かずはさんって　今もだいぶ身体虐めてるでしょ？
わたしはモデルのお仕事で絞ってるのに　コレってプロポーションも凄い

ありがとう
まあ　暇を見てジムに行ってるし

あ　いらっしゃいませ　

と　振り向いた誠さんは入り口のドアにお客さんを迎えに行った

慣れてますね　誠さん

と　かなめちゃんが言って

ウチに来てくれないかな？

と　かずはさんが言った

引き抜きは困るぞ
ウチに来るまで飲食の短期バイトでしのいでたらしいから慣れているんだろ

器用ですね　誠さん

と　かなめちゃんは他人事みたいに言う

あ　そうだ　この機会に訂正しとくが樋口の名前は　かずは　じゃない
カフェかずはのママ　って事だから　な？

ええ　そうなんですか？

そうよ　わたしは離婚して樋口に戻ったから　また樋口　愛　ね

何で　かずは　なんですか？

と　かなめちゃん

あ〜　それは柳くんが名付け親
わたしの苗字の樋口から文人の樋口一葉をもじって　いちよう　を　かずは　って付けてくれたのよ

は〜　オシャレですねぇ

ご主人様とかずはさんが見交わした視線をかなめちゃんは見落としたまま　頷いている

これで　樋口は娘が居るんだから怖いよなぁ

と　ご主人様が混ぜ返す

もう5歳よ　ウチの母が預かってくれるから助かってるけど大変

え〜　見えませんよ　全然

と　かなめちゃんが言う

多分　打ち合わせ済みのラインの学生時代の話や　他愛もないキトゥンズの話に花を咲かせて　時々　誠さんが席に来る

さあ　誠　ボチボチ　帰るぞ

と　ご主人様が言うと

あ　写真！
写真　撮って下さいよ！わたしと
梓　持って来てるよね？カメラ

はいはい　誠さんなら言うと思った
かずはママ　いいですか？

いいわよ　何処で撮ります？

ママも一緒にお願い！
店の前のドア横が雰囲気ありましたよ

はいはい

誠さんのパワーで4人並んで撮り　ご主人様と誠さん　ご主人様と両脇にメイド姿の誠さんとママ　スッと誠さんが抜けてご主人様とママのツーショット

梓　代わるよ

と　誠さんはカメラを代わってくれてご主人様とママと一緒に並んで撮ってくれた

あの　かずはママ

何？梓さん

誠さんが着替える間　席に戻った時にわたしはかずはさんに聞いた

モデルになって貰えませんか？

モデル？わたしが？

かずはさんはご主人様を見る

腕はいいぞ？
隣りで良く　賞を取った打ち上げ　やらせて貰うくらいは期待されてる新人だ

雰囲気がある人ってなかなかモデルさんの中にも居ないんです

柳くんが保証するなら確かなのね
わたしで良ければいいわよ？

あの　ヌードですけど…いいですか？

あ〜　なるほど
ヌードね
その時　娘も一緒に撮ってくれる？
記念に

いいですよ
作品には出来ないけど記念なら

ふふふ
柳くんと一緒の写真って初めて撮って貰ったからお礼にお返し　しないとね
撮影には　柳くん　立ち会ってくれるんでしょ？

樋口が良ければいいよ
斉木も呼ぶか？

そこまで踏み込まないで？

悪かった