学校一の嫌われ者が学校一の美少女を拾ったら

みどりぃ

20 大会後の一幕

「あー、疲れたぁ」
「お疲れ様っ!すごかったね大上くん、あんなにバレーが出来たんだ!」

 まさかなのかやっぱりなのか、春人の予言通り、猪山んとことは決勝戦であたる事になっちまった。思わずてヒいたよね。
 とにかく猪山んとこに勝つには最後まで勝ち進まないといけないもんだから最後までコートに立つ必要があり、つまりはすっごく疲れた。一戦目で当たれば良かったのに。

 終わって着替えていると、かわいい男子ならぬ河合が目を輝かせて誉めてくる。
 小型犬種の子犬かよ。頭とか撫でたら怒るかな。

「強引にぶっ叩いてるだっての、俺は球技とかは苦手だし。……それより河合、お前こそ上手かったな。さては練習とかしたろ」
「え、うん。だって勝ちたかったからさ」
「春……志々伎くんに言われてか?無理する必要なんてなかったのに」
「違うよ!ボクから言い出して、田中くん達も一緒に練習したんだっ」

 語尾に音符でもつけそうな声音は、確かに嘘ではないようだ。
となるとまぁ、俺のせいか。

「悪い、俺のせいで変にプレッシャーかけちまったか。別に俺の退学くらい気にしなくて良かったのに」
「いやいや普通するからね!?あ、でも違うよ?これは単なる恩返しだし、やりたかっからやっただけで負担なんかじゃないから!」

 両手を体の前でグッと握る河合。え、なにこれあざとっ。
 しかし他のやつらまで巻き込んだとなっては、さすがに『必要なかったのに』では失礼か。

「あー、河合。んで、田中、赤嶺、神崎。……今回はおかげで助かった、ありがとう」
「うんっ!」
「そんな、気にしないで」
「うむ、良い経験となった」
「ぼ、ぼくも楽しかったから」

 おぉ……なんて良いヤツらだ。こりゃ借りが出来てしまったかな。
実際、こいつらのおかげもあって目標は完全に達成出来た。俺と春人だけじゃ厳しい部分もあったから本当に助けられている。

 団体競技なんだから、いかに個人技があっても半数以上がやる気が無けりゃ勝てるワケないしな。
ゴリ押しで無理して勝ち進んだとしても、決勝までとなると体力が保たなかったろうし。

「ま、あれだ。なんか困った事があれば相談でもしてくれ。出来る範囲で力になる」
「えっ、あ、ありがとう……」
「ふむ、大上の助けか。それは面白そうだ」
「ぼ、ぼくは別にそんな……」

 困惑やら関心やらの反応があるが、まぁ伝えたい事は伝えた。
 と思いきや、目の前の河合がなにやら真剣に悩んでいる。

「……どしたよ、眉間に皺寄ってんぞ。あ、言っとくけど身長伸ばせとかは無理だぞ?」
「そんな事言わないよっ!……いや、出来れば身長は欲しいけど…」

 ぼそりと言った言葉、全員に聞かれてるからな。後ろから微笑ましく見られてるぞ。

「いや、恩返しなのに借りとしてもらっていいのかなって……でも、それならお願いしたいこともあるし…」
「恩返しは必要ないっつったろ」

 まだそんな事にこだわってたのかよ。
いや、おかげで練習までしてくれて結果助けられたワケだし、今更俺が言うのも違うのかも知れないけどさ。

「あー、うー……うん。よし、分かった!そうするよ!ありがとっ!」

 子犬スマイルをキメる河合。こいつが女子だったら下手したら宇佐や夏希に迫る人気だったかも知れないな……いやそれどんな男子生徒?

「とりあえず、俺に何かして欲しいんだろ?性転換か?」
「なんでそうなるのっ?!しないししたいとも思わないからねっ?!てか身長は無理で性転換は出来るの?!」
「もげばいいんだろ?」
「こっわぁ!怖いよ!男としてよくそれ言えたね!?」

 おっと、つい女版河合を見てみたさの発言が。新たな第三勢力を春人と一緒にプロデュースして夏希が混ぜろとか絡んでくるとこまで見えたわ。

「えっと、それじゃ……お、お願いがあるんだけど…」

 やめろもじもじすんな。無駄に可愛いから。
 ほら、後ろの神崎が見ちゃいけないもの見たみたいに目を手で隠してるし。指スカスカに空いてるけど。

「ぼっ、ボクとお、お友達になってくれないかなっ?」

 不安と期待が混じったような表情で、おまけに勢いで言っちゃったみたいな雰囲気。
 なんかもう一瞬告白でもされてんのかと思ったわ。

 しかし、お友達ねぇ。

「いや俺と友達になっても正直デメリットしかないぞ?嫌われ者だし、一緒に居るだけで何か言われてもおかしくないし」
「そんなの気にしないよっ!それに、その悪い噂だってボクが絶対なくしてやるんだから!」

 そう言ってくれても事実がベースにある以上、噂の払拭なんて不可能だろうし、そもそも無意味だろうに。
 なんせ単なる事実なのだから。
仮にどれだけ美談が添えられても、結果として残る事実は変わらない以上は忌避感は消えないだろ。

 とは言え、そこまで言われて拒否するのも違う、のか?借りもあるし、反故にするのは俺としてもポリシー的なもんに反する。

「まぁ……別にそれで良いってんなら良いけどな」
「えっ、えっ。ほ、ほんとっ?やったぁっ!」
「あぁ。ただ、条件だけ付けさせてくれないか?」

 マジ子犬。跳ねて喜ぶ河合には言いづらいけど、これは河合の安全策として必要だしな。

「条件はひとつ。学校内じゃ基本話しかけない。これで頼むわ」
「ええっ?!それじゃ意味なくないっ?」
「え?いやなんでだよ?別に学校内が全てじゃないだろ。学校の外だって学生の生活の内なんだからさ」

 まぁ確かに、学生は学校内の生活が全てと思ってるやつも多いよなぁ。一日の多くを学校で過ごすからそう思うのも仕方ないかも知れないけど。

 ただ、別に学校の外だって居場所や活動場所なんていくらでもあるし、そもそも社会というでかい枠で見れば学校なんて一部でしかない。
学校の中の生活ばかりに固執する必要なんか無い、と俺は思ってる。

 とは言え、それで納得するかは別のようで。

「ヤだっ!」
「子供かよ」
「子供じゃないっ!」
「拗ね方が典型的に子供だけど」
「違うもんっ!」
「マジかこいつ、もんって言っちゃったよ」

 これで狙ってないならマジで男臭さとは無縁な一生だろうな。あざとい女子にしか見えんわこれ。
 いや別に狙ってやってないって事くらい分かるけどね。素でこれってのが逆に怖いけど。

「諦めなよ、秋斗」
「おいおい?おいおいおい志々伎くぅん?」

 こいつサラッと混じってきた上に呼び捨てにしやがったよ。おい約束はどうしたコラ。

「今更だよ、もう誤魔化せないさ。それにここに居るメンバーは団結して球技大会を優勝した仲、つまりは身内みたいなものだろう?」
「屁理屈だろ」
「屁理屈だって理屈さ」

 悪びれもしない春人は、どうやらこれを機にマジで一部とはいえ約束の破棄を狙っているらしい。
 とは言え、悔しいけど確かに今更感は否めないけど。

 それで一瞬悩んでしまった瞬間を見逃さなかったのか、春人が笑うのが見えた。

「あのね、あれだけ決勝で目立ったんだ。チームメイトの僕や河合くんと仲良く話したところで違和感もないし、そもそも悪目立ちの部分も今更だよ」
「………………」

 まぁそうなんだよな……そりゃもう決勝は酷い空気だった。決勝戦であんな静かにボール叩き合うとかある?個人練習でもしてんのかと思ったレベルだよ。
ぶっちゃけ作戦自体は完璧に進んで、びびるくらい予定通りそのものだった。ただ、あそこまで空気が悪くなるとは思ってなかったけど。

 多分、いやほぼ間違いなく……俺がバレー部期待のエースに怪我させて、そこに容赦なくつけ込んで勝ったとか思ってるんだろうな。しかもほぼ事実だし。

「あ、そうそう!大上くんのスパイクすごかったね!一発目なんて猪山くんのブロックを吹き飛ばしてさ!」
「あー、あれなぁ……」
「あはは、河合くん、それあんまり他では言わない方が良いよ?」
「え?」

 言い淀んでしまった俺と、控えめな笑みを見せる春人に気付いて河合は首を傾げた。
 こいつ、単なる威力で俺がブロックを崩したと思ってそうだしな。

「なんで?」
「ほら、秋斗ってずっとフェイントしかしなかっただろう?」
「あ、うん。てっきりスパイクが苦手だと思ってたから、決勝の時は余計にビックリしたよ!」
「あー、うん。まさにそれを狙ったんだよ」

 ここから先は俺が言うべきだな。春人に言わせるワケにはいかない。
 俺はざっくりと今回の作戦を河合に教えた。すると何故かーー

「す、すごいよ!そこまで考えてたんだね!」

 ――河合は目を輝かせた。
こ、こいつ、ここまで言っても分かってないのか……純真すぎるだろ。
 後ろのやつら気付いたらしく、目を丸くしてるってのに。

「いや、そこは卑怯の間違いだろ?エースの油断を狙ったんだぞ」

 そう。エース猪山を狙ってやったことだ。
 
 正直、まともにやり合ったら多分ジリ貧で押し込まれてた可能性の方が高かった。
仮に最初からスパイクを隠さずにいても、点の取り合いになれば身体能力が総合的に優れる向こうが勝つと思う。

 だから、向こうの攻撃力と、あわよくばブロックを弱める必要があった。

 スポーツマンシップなんてものの欠片もない、卑怯で卑劣な作戦だ。正々堂々の精神からかけ離れてるし、普通なら嫌悪感しかないだろ。

 だが、それでも今回は負けるつもりは一切なかった。
 だからこそ春人による地獄のバレー三昧にも耐えたし、スポーツシップ無視の勝率だけを考えた作戦を練った。

 まぁ勝つ気を全面に出して河合達を気負わせたくなかったから言動には出さないようにしてたけど。

 ともあれ、これで俺の目的は達した。
 猪山による公開謝罪で宇佐の件は片付くだろうし、それで怒るいざこざの後片付けや余波みたいなもんがあったとしても春人ならきっと上手く収めてくれるはずだ。

 そして高山先生へのセクハラ教師である屯田も、これでぐうの音も出ないだろ。
向こうの意見を通しに通した勝負で負けたワケだし、おまけにセクハラしてる映像だけじゃなくて賭けをする時の会話の録音もある。

 あとは俺への卑怯な手段を批判する声が残るだけだ。
つまり普段と変わらない、いつも通りの生活。

 俺としては完璧。だけど、巻き込んでチームメイトだったこいつらに飛び火はしないようにしないとな。
 だから、ここでドン引きさせてこいつらも批判する側に回ってもらうのがベスト。だからこそのネタバラシなのだが。

「あぁ、なるほどね〜。あれってわざと狙ってたんだねっ」

 しかし、返ってきた反応は軽いもの。いや軽すぎるだろ、意味分かってんのかよこいつ。

「あ、何その顔っ!さては意味が分かってないと思ってるよね!ちゃんと分かってるから!」
「嘘つけぇ」
「やっぱり疑ってたの?!ひどいよ!」

 お、まさかこいつカマかけたか。そんな事出来たのか。

「狙ってやった、だっけ。その方がすごくない?」
「……だとしても卑怯なのは変わらないだろ」
「いやバレーって、そもそもスパイクを打って、ブロックするスポーツだよね。その中で怪我しちゃうことも普通にあるんじゃない?」
「は?いや、まぁそりゃ、極論としちゃそうかも知れないけど……」

 だからといってそれを狙うのはどうかと思うぞ、我ながら。

「それとも、骨折でもさせるつもりだった?」
「いや、あくまで試合中に手が痺れればくらいのつもりだったけど。骨折る程のパワーは俺にない」
「だよね!そもそもボクだって練習中に突き指とかしちゃったし、そんなもんだと思うな。つまり今回のは……そう!不運な事故っ!」

 いやいやいや、それはさすがにどうよ。油断を狙ったって俺言っちゃってんのに。
 ただ、こいつの言葉はどうやら春人の琴線には触れてしまったらしい。

「あは、あはははっ!いいね河合くん、それでいこう!いやぁ、今回の猪山くんは実に不幸な事故だったね」
「そうだね!かわいそうだけど、でも勝負だから仕方ないよっ!それで手加減するのも失礼だと思うんだよね!」
「あは、あははははっ!うん、僕もそう思うよ、あはははっ!」

 めっちゃくちゃ笑ってるぅ。
 完全に春人のやつ、河合のこと気に入ったなこれ。

 しかも田中達もつられたのか楽しげに笑い出した。
 おいどうすんだこれ。何で和やかな雰囲気になっちゃってんの?

「ちょっとあなた達、いつまで話しているのかしら。そろそろ表彰の時間よ」

 そこにノックと共に高山先生の声が扉越しに教室に響いた。
 ちなみに他のメンバーは敗退した順に着替えていってたし、最後まで残った俺ら以外に着替えているやつは居ない。
 猪山のとこのメンバーは全員部活生だからそのまま体操服で行くしな。

「はい、すぐ行きます!」
「ごめんなさーい」

 口々に言いながら教室を出ていく。
 っておい待て、マジで不運の事故でこの話終わらせる気か?さすがにそれは当人の俺でもどうかと思うぞ……
 あと河合が学校でも話すとか言い出さないようにしないと。

 とりあえず春人を抑えないと。アイツが本腰入れたら、明日には学校内での事実は春人の言った通りに改変されてしまう。

 そんなことを思って後を追おうとして、高山先生の横を通り過ぎようとした時。

「………」
「んん?あれ、どうかしたっすか先生?」

 先生にそっと袖を掴まれた。
 振り返ると、先生は無言で少し顔を伏せている。

 あー……これは猪山に怪我させた事を叱られるやつか?
そりゃ怒るよなぁ。けどこのタイミングで良かったかも知れないな。表彰式が控えてるからそこまで長時間は説教もされないだろうし。

 チラリと前方を見ると、先に行ってる春人と目が合う。
 そして軽く頷くと、心配そうに振り返っている河合や他のメンバーを促して先に行き始めた。あいつの洞察力、こういう時マジで便利だな。

「……大上くん」
「はい、何すか?」

 春人達が見えなくなるタイミングで、高山先生がそっと口を開いた。
 もしかして高山先生もそれを待ってたのかも知れない。
人前で怒らないようにするのも叱る時の方法だったりするし、この人ならそこまで考えてくれそうだ。

「まずは……球技大会、優勝おめでとう。その、本当に頑張ったわね」
「ありがとうございます。まぁ他のメンバー達と先生のおかげっすけどね」
「……そ、そう。えっと、貴方が頑張る理由は……根古屋さんに話したのかしら?」
「いや話してはないっすけど……まぁ夏希が言うなら間違ってないと思いますよ」
「っ!そ、そうなのね」

 夏希と春人には高山先生にセクハラする屯田を追い詰めるのと、おまけで猪山に宇佐のイジメを公開謝罪させる事は伝えてるしな。

「でも、その……私としては、どう言えば分からないのだけれど……」

 あ、本題か。まぁ褒めるだけならメンバー全員にまとめて言うだろうし。

「まぁそうかもっすね。自分でもどうかと思いましたし」
「あっ、いやそのっ……う、嬉しかったわ……いえ、喜ぶのも教師としてどうかとは思うわよね」

 喜ぶ……?あぁ、屯田のセクハラが終わる事がか。戸惑ってるのは卑怯な勝ち方をしたからですよね、すんません。

「いや良いんじゃないすか?教師だって一人の人間っすし、そういう事もあるっすよ」
「そう、なのかしら、ね……」

 いやめちゃくちゃ歯切れ悪いな、絶対納得してないやつじゃん。まぁ高山先生らしいけど。
 この人は教師としての立場に真摯だし、結果はともあれ俺の卑怯な手段という過程に対して喜ぶのもどうかと思うのも仕方ないだろうし。

 いやでも、このままいけば納得してもらえたらお咎めなしでは?
 正直、俺だって怒られたいワケではない。むしろ勘弁して欲しい。となれば、やる事はひとつ。先生を肯定しまくること!

「そっすよ。教師としての先生は尊敬してますけど、一人と人間としてなら別に良いんじゃないすか?そんくらい気にしないっすよ。少なくとも俺は」
「そっ!……そ、そうなの……?」
「うっす。だから今回のは素直に喜んどいてくれると助かります」

 いけそうじゃねこれ?
っしゃきたこれ!高山先生には絶対怒られると思ってたから余計に嬉しいな。
でも何で顔赤いの?まぁいいか。

「でも、大上くんとしては、その……こんな私は、ど、どうなのかしら……?」
「え?あぁ、正直好ましいっすね。さっき言ったっすけど、普段の先生は尊敬してますけど、そういう一面があるとやっぱ正直言って肩の力が抜けますし、俺は嬉しいっす」

 怒られると思った肩の力が抜けて、説教なしで大喜びだ。

「そ、そう…!……なら、よ、良かった、のかしら」
「うす、少なくとも俺としては良かったっす」
「……そ、そう…」

 来たぜ勝訴ぉ!無罪放免確定!
なんかやり切った感すげぇわ、もう表彰式サボって直帰しようかな!
でも何で顔真っ赤なの?まぁいいか。
 
そんな内心爆上がりのテンションの俺の前で、袖を掴んでいた高山先生がそっと顔を上げた。

 どこか伺うように、彼女らしからぬ自信なさげに上げられる顔は、最近何故か綺麗な女性と関わる機会が増えた俺でも一瞬、思考が止まった。

 普段は微かに吊り上がる、キリっとした瞳は弱々しく目尻が垂れて潤んでる。頬は目に見えて赤くいし、髪の隙間からのぞく耳まで真っ赤。
そのつもりはないであろう上目遣いは、堂々とした先生らしからぬ弱々しさと女性らしさを手加減なく強調してる。

 そもそも先生は、文句なしの綺麗な美人。
その分かわいさの要素は少ないととる人もいるだろうけど、それも態度や表情で補って余りある今の先生の仕草。

 つまり、めっっちゃ可愛い。ついでになんか若干エロい。

 とか好き勝手考えてたけど、この感じからして俺は思い違いをしてたみたいだな。
 先生、歯切れ悪かったりもじもじ弱々しかったり赤くなったりーー風邪じゃね?

「あの、大丈夫っすか先生」
「ぁ……………」

 軽く先生の肩を叩く。すると我に返ったのか、ハッとしたように微かに目を瞠った。
 それを見て心配になるも、それと同時に危機感を覚える。

危機感?決まってる、ここにいるのはヤバい。理性的に。
もし本能に負けでもしたら学校、ひいては社会的死……先生が魅力的すぎて死ぬ!大人の魅力ってガチの凶器じゃねぇか!

「ま、まぁ猪山狙いの卑怯な作戦で勝ったのはどうかと思うかも知れないっすけど、一応先生に借り返す為って事で見逃してください!あと、風邪ならちゃんと病院行ってくださいね。心配なんで」
「え………?」
「と、とにかく。屯田の件の後始末も任せてください。ちゃんと方向性は高山先生の方針に従うんで。とりあえずそこらへんは後日聞くんで、とりあえず表彰式行かねえと」

 んじゃ、と片手を上げて鮮やかな戦線離脱。
 っふぅぅ〜〜っ……!!あ、あぶねー……危うく惚れるとこだった。
ギャップで先生相手に惚れるとかちょろすぎてウケるわ。……いや笑えないけど。
 
 なんかサボる流れでもないし、表彰式行くか。赤嶺あたりに表彰台登らせたら良い感じに面白そうかもな。話し方がなんか大物風だし、見た目もインパクトあるし。
 そんな事を思いつつ。面倒なはずの人前に向かうのにどこか脚が軽い理由を、俺は気付かないフリして歩いた。

「え、あ…………………そ、そっち……?」

 後ろで先生の声がしたような気がするが、今は三十六計逃げるに如かずだ。


コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品