メグルユメ

トラフィックライトレイディ

11.湖に沈む秘宝

 このチョウチンアンコウ、本当の名をレイクミミックという。名前の通り、ミミックの一種だ。10m近い体長と、その先端に在る宝箱が特徴的な魔物だ。討伐記録が少ないため、まことしやかに囁かれている噂話がある。宝箱の中身についてだ。1mほどもある宝箱は、ただの見せかけではなく、中身が詰まっているというもの。一説には大量の金か。また別の一説では伝説や神話に登場するような武具が封印されていると言われている。

 しかし、レイクミミックが戦う場所が水中ということもあり、倒すと回収不可能になるのがほとんどだ。
 回収できた者は少なく、その状況を離せる人も少なくなってきている。もう大半が故人なのだ。そしてインタビューに答えてくれた人は決まってこう言う。

「答えたくない」

 話せば夢がなくなるからだそうだ。宝箱の中にはロマンと夢が詰まっている。






 7人は無視するかどうか考える。

 宝箱の中身が何かは気になる。しかし、向かうから攻撃が来ないのならば、戦う意味もない。スルーも可能だろう。
 コストイラは戦いたそうにそわそわしているが、こちらは戦う気はない。変に先走らないでくれよ?

「あの宝箱の中身って見えないの?」

 アストロに言われて気付いた。そういえばアレンには特殊な眼がある。もしかしたら中を見れるかもしれない。

「ちょっと試してみますね」

 アレンは目に魔力を込め、宝箱を見つめる。ボヤッと文字が現れてくる。中身は見えない。アレンは正直にアストロに伝えると、心底呆れられた。事実なのに、事実なのに!

「で? どォすんだよ。ありゃどう見てもレイクミミック。宝箱にはロマンと夢が詰まってる。中は見てみたいが、争いは確実。どォするよ」

 コストイラが戦いたそうな眼でこちらを見ている。え? 僕? 嫌ですよ。死にたくないですもん。そりゃ戦ってみたい気は分かりますけど、生き急いではないので。

 アレンが困った顔をしているとアストロが助け舟を出す。本人はそんなつもりはないのだろうが。

「どうやって戦うつもりなの? 方針」
「ほら、何かこう。あれだよ。魔術ブッパでいけないの?」
「酔うわ」

 ざっくりとしか考えてなかったコストイラはアストロにハッキリと怒られる。

「それに宝箱の金属部品の一部に月天石が使われていますね」
「月天石ってあれだろ。レイドに使われている」
「はい。この石は魔術攻撃の威力軽減ができるので、見積もりの2倍は魔力を使うかと」
「倒れるわ」

 魔力酔いの状態でも無理すれば使えるが、それをしすぎると失神し、最悪の場合、死に至る。今はそこまでの無茶をする必要がない。今回は見送ろう。そう思った時、宝箱が沈んでいった。

「凄ェお宝がありそうな気がしたんだけどな」
「その凄ェはどっちにかかってんの?」
「どっちも」

 コストイラは少し不貞腐れるが、チームの方針には従ってくれる。

「さて、もう沈んでしまったんだ。これ以上未練があってもどうにもできんだろ。出口を目指そう」

 アシドは水でいっぱいになった水筒を待ちながら言ってくる。汲んだんだ。あれ、いつ汲んだんだ?

「………ちゃっかりしてんなァ」

 同じ内容を思ったのか、コストイラが呟く。

「出口を目指すのは賛成だが、その出口がどこにあるのか分かってるのか?」
「分かってる分かってる、な! シキ」
「?」

 唐突に話を振られたシキはジト目を向ける。実は僕はジト目が好きなので、僕にも向けてほしい。

「あっち」

 シキは出口と思しき方角へ指をさす。

「風が吹いてる」
「マジ? オレは感じ取れなかったな」
「あ、あれ? さ、さ、さっき分かってるって?」
「よし、行こう」

 アシドは墓穴を掘ったが、エンドローゼの指摘が終わる前に歩き始めてしまう。

「後で一回締めましょう」

 アストロはエンドローゼの肩を組み、物騒なことを囁くが、当のエンドローゼはブンブン首を振っている。お気に召さなかったようだ。
 遺跡の外に出ると、湿原が広がっていた。しかも、どこか霧がかっている。どこか薄暗く、不気味な雰囲気を放っていた。

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