メグルユメ
6.穴だらけの砂地
砂地に行ったとき、水や食料の問題は付き物だが、それは事前準備の話だ。それが原因で亡くなるのは準備不足である本人の問題だ。無責任な言い方だが、自業自得である。
さらに注意が必要なのは活動時間だ。乾ききった砂地に湿度の概念はなく、昼の2時や3時に活動しようものなら馬なら斃れる。
現地には馬とよく似た駱駝というのがいる。駱駝は砂地の船らしい。その背のコブには貧困な旅に耐えられるように脂肪が蓄えられており、水も一度に100Lほど飲み、1週間は水なしで過ごすことができる。足の裏は馬と違い扁平で柔らかい砂の上を歩きやすいようになっている。
日中の暑さはたまらない。湿気が少ないため、噴き出す汗は直接蒸発してしまうのだ。ベタベタとした不快感はないものの、頭は常にフワッと拡散してしまう。
夜中の寒さも異常だ。0度近くまで下がる。震えの止まらぬ体は早めに休めてしまうに限る。
我々は砂地を舐めていた。
これだけでも数を減らしてしまうのに、一番の危険は別にあった。
これから砂地へ挑む者は気を付けてほしい。砂地で穴を、大きな穴を複数見つけたらすぐにでも逃げろ。
凶悪な魔物の縄張りだから。
アスタット著『砂漠横断記』より
コストイラの顎から汗が滴り落ちる。水分の抜け切った、乾燥した砂は水を吸収する作用が限りなくなっている。
現在、アレン達は一か所に固まっている。暑すぎて移動を諦めたのだ。コストイラが汗を拭う。
「普通直接蒸発するのに何で汗が落ちるのよ」
「分からん。頭がぼーっとして何も考えられねェ」
「同感」
アストロは適当に言葉を発し、自身の膝に顔を埋める。
「何でシキは平気なの?」
シキだけは涼しげな顔をして回りの監視をしている。暑さに強いのだろうか。
「平気じゃない、暑い」
強いわけではなかったようだ。
「レイドは?」
「我慢だ。ひたすらに我慢だ。河童に教えてもらったが、心頭滅却すれば火もまた涼しという言葉があるらしい。つまり、気持ちの問題だ」
レイドは仁王立ちをしており、一歩も動かない。
「おい、あれはデケェ洞窟内にもいたやつじゃねェのか?」
アシドが虚ろな目で報告してくる。虚ろの目という点が引っかかる。幻でも見ていなければいいのだが。アレン達もアシドの見た光景を見る。
いた。確かにロックドラゴンだ。3匹のロックドラゴンがこちらを補足する。あまり動きたくない時間帯だが、しょうがない。コストイラが立ち上がり、刀を抜く。尻に着いた砂を払う。
コストイラでさえ突貫しない。暑いのもそうだが、ところどころに空いている穴が気がかりなのだ。
「アレン、射ってくれ」
「了解です」
アレンは頭がぼーっとする中、狙いを定めて弓を射る。当然当たらない。ロックドラゴンは軽々と躱し、嘲笑うように鳴く。
『オオオ』
『ハァアア』
ロックドラゴンの鼻頭をレイドが楯で殴る。くの字に曲がるドラゴンの首に刀を入れる。そのまま刀を振り上げ、首を飛ばす。ロックドラゴンの噛みつきをわざと倒れることで躱す。アシドは靴裏をロックドラゴンの喉元に当て、巴投げのように足で投げる。ロックドラゴンは砂地に顔を突っ込む。シキはロックドラゴンの尾を掴み、足で頭を押さえる。アシドは強制的に弓なりにされたドラゴンの腹を突き刺す。最後の1匹となったロックドラゴンが怒りに任せ、突貫してくる。
その瞬間、ロックドラゴンが沈んだ。落とし穴のようになっていた場を踏み抜いたのだ。しかし、すぐに爆発的な速さで空に向かう。
赤茶けた体。手足の一切がない一本の体。砂地に住まう凶悪な魔物が動きだす。
バチュリ。
噛み千切られたロックドラゴンの上半身が降ってくる。
魔物は出てきたものと別の穴に入っていく。全体から見て、体長は約20mはある。ホーリードラゴンと同じだ。違いは地中か空中か。目に見えない分こちらの方が凶悪だ。
最優の騎士王アスタットさえ恐れた砂の怪物、サンドウォームが目を覚ました。
さらに注意が必要なのは活動時間だ。乾ききった砂地に湿度の概念はなく、昼の2時や3時に活動しようものなら馬なら斃れる。
現地には馬とよく似た駱駝というのがいる。駱駝は砂地の船らしい。その背のコブには貧困な旅に耐えられるように脂肪が蓄えられており、水も一度に100Lほど飲み、1週間は水なしで過ごすことができる。足の裏は馬と違い扁平で柔らかい砂の上を歩きやすいようになっている。
日中の暑さはたまらない。湿気が少ないため、噴き出す汗は直接蒸発してしまうのだ。ベタベタとした不快感はないものの、頭は常にフワッと拡散してしまう。
夜中の寒さも異常だ。0度近くまで下がる。震えの止まらぬ体は早めに休めてしまうに限る。
我々は砂地を舐めていた。
これだけでも数を減らしてしまうのに、一番の危険は別にあった。
これから砂地へ挑む者は気を付けてほしい。砂地で穴を、大きな穴を複数見つけたらすぐにでも逃げろ。
凶悪な魔物の縄張りだから。
アスタット著『砂漠横断記』より
コストイラの顎から汗が滴り落ちる。水分の抜け切った、乾燥した砂は水を吸収する作用が限りなくなっている。
現在、アレン達は一か所に固まっている。暑すぎて移動を諦めたのだ。コストイラが汗を拭う。
「普通直接蒸発するのに何で汗が落ちるのよ」
「分からん。頭がぼーっとして何も考えられねェ」
「同感」
アストロは適当に言葉を発し、自身の膝に顔を埋める。
「何でシキは平気なの?」
シキだけは涼しげな顔をして回りの監視をしている。暑さに強いのだろうか。
「平気じゃない、暑い」
強いわけではなかったようだ。
「レイドは?」
「我慢だ。ひたすらに我慢だ。河童に教えてもらったが、心頭滅却すれば火もまた涼しという言葉があるらしい。つまり、気持ちの問題だ」
レイドは仁王立ちをしており、一歩も動かない。
「おい、あれはデケェ洞窟内にもいたやつじゃねェのか?」
アシドが虚ろな目で報告してくる。虚ろの目という点が引っかかる。幻でも見ていなければいいのだが。アレン達もアシドの見た光景を見る。
いた。確かにロックドラゴンだ。3匹のロックドラゴンがこちらを補足する。あまり動きたくない時間帯だが、しょうがない。コストイラが立ち上がり、刀を抜く。尻に着いた砂を払う。
コストイラでさえ突貫しない。暑いのもそうだが、ところどころに空いている穴が気がかりなのだ。
「アレン、射ってくれ」
「了解です」
アレンは頭がぼーっとする中、狙いを定めて弓を射る。当然当たらない。ロックドラゴンは軽々と躱し、嘲笑うように鳴く。
『オオオ』
『ハァアア』
ロックドラゴンの鼻頭をレイドが楯で殴る。くの字に曲がるドラゴンの首に刀を入れる。そのまま刀を振り上げ、首を飛ばす。ロックドラゴンの噛みつきをわざと倒れることで躱す。アシドは靴裏をロックドラゴンの喉元に当て、巴投げのように足で投げる。ロックドラゴンは砂地に顔を突っ込む。シキはロックドラゴンの尾を掴み、足で頭を押さえる。アシドは強制的に弓なりにされたドラゴンの腹を突き刺す。最後の1匹となったロックドラゴンが怒りに任せ、突貫してくる。
その瞬間、ロックドラゴンが沈んだ。落とし穴のようになっていた場を踏み抜いたのだ。しかし、すぐに爆発的な速さで空に向かう。
赤茶けた体。手足の一切がない一本の体。砂地に住まう凶悪な魔物が動きだす。
バチュリ。
噛み千切られたロックドラゴンの上半身が降ってくる。
魔物は出てきたものと別の穴に入っていく。全体から見て、体長は約20mはある。ホーリードラゴンと同じだ。違いは地中か空中か。目に見えない分こちらの方が凶悪だ。
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